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俺のドラムは少女のギターに救われた  作者: べるりーふ
第37章
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暴走、高揚する気持ちが

「うぅ......、もうお嫁に行けない......」


 PA卓横のパイプ椅子に座りながら、琴実がわざとらしく嘘泣きをしている。下着を見られたことがショックだったのはわかるけど、流石に演技が入りすぎているような......。

 そんな調子だと、演奏上手く行かないよ? 負けたくない相手がいるんなら、尚更だね。


「まずは全体で音出して下さい! 気になる点があったら演奏止めても大丈夫なので、その時は合図出して教えて下さい!」


 PA代理の響先輩の合図とともに、私達はリハでやる曲のサビ部分を演奏していく。サビ部分は全体の音が入るからリハで調整するには最適だし、誰の音が聴き辛いか、誰の音が聞こえすぎているかがよくわかる。

 自分の音って、意外と他の人と違う聞こえ方することあるから、メンバーの意見って大事なんだよね......。


 因みに私達は本番で4曲披露することになっている。持ち時間は30分だから、万が一押しちゃったら1曲減らそうって話し合っているけど、折角みんな頑張って練習したんだから、全曲やり遂げたい。

 曲の時間を平均すると4分弱ってとこだから、MC挟んでも上手く行けば時間は余ると思うけど、機材トラブルが起きたら元も子もない。

 ここは私達のこれまでの経験が活かされるってことだよ......!


「行きます!」


 マイクを通して千弦が合図を出し、夏音がスティックを4回叩く。それに続いて私も結羽歌も、日高君も、自分達の音を繫いでいく。

 まだお客さんはいないけど、私達が大きな舞台でそれぞれの音を出していって、本番に向けてどのように奏でていこうか、どうやって見ている人の心を動かしていこうか、考えるだけで楽しかった。

 久しぶりのライブ、久しぶりの音楽の世界、夏音と一緒に創り上げていく、最高のバンドへの道......。


 まだ本番でもないのに、私の気持ちは高揚していた。リハの段階でこんなに高ぶっているんだから、運命の時間になったら私は一体どうなっているんだろう......。


 夏音が鳴らすドラムの音に合わせて、私もリードを繋げていく。サビの部分は簡単なコードが続くけど、2サビ終わりの間奏部分は、今回やる曲全部にギターソロが入る。そこは私最大の見せ場だし、メンバー全員との掛け合いも重要だ。

 思わず興奮しちゃって、今がリハだってことを忘れないように気をつけないと!


 と、その時、響先輩からストップの合図が見えたから、私は演奏を止めた。同時にメンバー全員の音が消えて、体育館は静寂に包まれる。


「音琶のリード、暴走してるんでもう一回同じとこやり直しで」


 どうやらストップの合図を出したのは夏音のようで......。私、どこかで独り相撲になってたみたい......。


「き、貴重な意見ありがとうございます......」


 コーラス用のマイクを通しながら返事をした。そんな私に夏音は......、


「落ち着いて演奏しろよ。リードはお前にかかってるんだからな」

「......」


 私の考えていること、夏音は全部わかっちゃったのかな......? ううん、わかっていないわけがない。私の感情は演奏に出やすいんだし、私が今日という日をどれだけ楽しみにしていたか、夏音はよく理解しているはず......。

 リハの時点で気持ちが高鳴って、自分の世界に入り浸っていたんだ......。


「ごめん、次は考えて演奏するね」

「練習の時を思い出せ。お前はいつも全員のこと考えていただろ?」

「うん。今までのやり方で、頑張るよ」


 少し気持ちを落ち着かせないとね。そうしないと、私が原因でバンドの結託が水の泡になっちゃう......。


 やる気は充分、バンドに駆ける想いは誰よりも強い。

 それなら、自分の気持ち以上に、みんなの音を大事にしていかないといけないんだもんね!

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