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俺のドラムは少女のギターに救われた  作者: べるりーふ
第37章
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伝達、準備の心得

「ごめんなさい......。次からは、気をつけます......」

「良いんだよ良いんだよ! 私だってしょっちゅう授業とか遅刻してたしさ」

「うぅ......」


 遅刻してしまったことを何度も部員達に謝る結羽歌。去年までの怖い先輩達を思い出しちゃったのかな、結羽歌の表情は怯えているように見えた。


「大丈夫だよ結羽歌。ほら、準備しないとライブ出来ないよ?」

「う、うん......」

「今日は頑張ろうね、練習した時のこと思い出せば、大丈夫だよ!」

「うん、頑張る......」


 私も頑張ってフォロー入れてみたけど、元気を取り戻す様子は見られなかった。そんな時、


「いつまでしょぼくれてるつもりだ? まさか本番でも落ち込んだまま、なんてことはないよな?」

「夏音君......」


 いつものぶっきらぼうな口調で夏音が結羽歌に声を掛けていた。夏音のことを何も知らない人が見たらただの怖い人だって思うかもしれないけど、ちゃんと結羽歌のことを気に掛けているのが私にはわかるし、夏音の奥深くにひっそりと隠れている優しい感情が向けられていた。


「このままだと、折角の才能が台無しになるぞ。とにかく切り替えて準備しろ、まずは琴実とベース機材運んでもらうからな」

「は、はいっ......!」


 威圧と優しさが混じった言葉に戸惑いながらも、結羽歌は琴実の元へと動いていった。

 琴実はと言うと、遅刻したことなんか忘れてしまったかのように着々と準備を進めていて、留魅先輩と何か話し合っている。

 私も早く、響先輩や利華先輩達と、ギターパートの準備進めていかないとね。


 ・・・・・・・・・


 部室に置かれている機材と、部員それぞれが持っている機材を車や台車を使いながら体育館へ運び出していって、順調に準備が進んでいった。

 お父さんから機材がいっぱい送られてきた時はびっくりしたけど、お陰で必要な機材は全部揃ったし、体育館に元からあった機材との併用も上手く行きそうだった。マルチまで貰えるなんて思ってなかったから、わざわざ体育館の設備を壮大に使う必要なくなったし、持ってる機材だけで音を出せるのは大きいかな。

 ましてやドラムセットまで用意出来ちゃったんだから、本当に頭が上がらないな......。


「えっと、マイクちゃんと入ってるかな? 配線絡まってない?」

「音琶、マイク爪で軽く引っ掻いてくれ」

「あ、うん!」

 

 PAの作業をしている夏音から指示を受けて、ギターアンプ前に置かれているマイクを爪で軽く引っ掻く。すると体育館のスピーカーから鈍い音が聞こえてきて、マイクがしっかり入っていることが確認された。

 因みに、音が入っているかの確認をする時は、マイクを叩いたり息を吹き替えたりするのはNG。そんなことしちゃったら、折角の大事な機材が壊れちゃうかもしれないからね。

 端子を抜くときも、一旦PAに確認を取って音量をゼロにしてもらわないと、マイクだけじゃなくてスピーカーやアンプにまで影響が出ちゃう。だから、準備をする時はちゃんとコミュニケーションを取らないとダメなんだよね......。


「大丈夫だ、マイクは全部問題無い」

「はーい!」


 夏音に向かって手を振り、こっちも大丈夫だと伝える。

 あとはアンプとエフェクターかな。これはバイトで何回もしていることだからすぐに出来るし、その次は直接ギターの音を出してノイズやハウりが無いか確認すれば、あとはリハまでやることなさそうだね!


 そう思ったんだけど、ベースとドラムはちょっと苦戦気味かな? うーん、先輩が付いてるから問題無いはずなんだけど、まだマイクの確認も出来ていないような......。


「やば、コード絡まりまくりじゃん。戻さないと断線しちゃうよ~」

「あれ、マルチの番号間違ったかな......?」

「番号違ってたらマイク鳴らないよ?」

「分かってるって」


 ベースの留魅先輩と、ドラムの静司先輩が戸惑っていた。ベースに関しては結羽歌が居るから問題はすぐに解決出来ると思うけど、ドラムに関しては1人でやってるから、夏音がサポートしない限り作業進まないんじゃ......。

 何気にドラムって、使うマイク一番多い楽器なんだよね......。それを1人でやるのは......ううん、夏音は1人で素早く出来てるんだし、全く不可能じゃないはず......。夏音はPAやらないといけないからヘルプに入れないし、ちょっとまずいんじゃ......?


「げっ、これ1回全部解かないとダメか!? 面倒だけど仕方無いか......」


 ふと、静司先輩はそう言いながらマイク側に差してあった端子を抜こうとした。


「あっ......! ちょっと待ったーーっっっっ!」

「......え?」


 私が止めようとしたのも束の間、静司先輩の手を掴む前に端子は既に抜かれてしまっていた。

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