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俺のドラムは少女のギターに救われた  作者: べるりーふ
第37章
552/572

集合、例え遅くなってでも

 ***


 7月4日


 私の人生は、決して幸せではなかった。

 でも、不幸だったとも思わない。


 生まれた時から運命は決まっていて、まともに外に出られず、柵みから抜けられたと思ったら、沢山の人に嫌われて自分の殻に籠もる毎日。

 希望を見つけられたと思いきや、大切な人を失ったことをきっかけに自暴自棄になって、もう二度と会えない人の足跡を辿ろうと励む日々を繰り返した。


 そんな最悪の日々の最終章に、希望の光が差した。本気で人を愛することを知った。本気で好きなモノを好きだと言うことができた。

 本気で生きたいと、思うことが出来るようになった。


 だから私は、今この瞬間を最終章で済ませない。

 私の人生は、私が生き抜くことでまだまだ続けていく。

 決めたことを諦めるなんて、絶対に許せないんだから。


 ・・・・・・・・・


「全員集まって......ないな」


 集合は午後12時。早めのお昼ご飯を済ませてから部室に向かい、ライブの準備を始めていこうとしていたのに......、


「居ないのは結羽歌と琴実......か。全くあいつらと来たら......」


 響先輩の集合の合図は幸先が悪くなってしまった。響先輩に続いて夏音が居ない2人の名前を呆れ顔で挙げていた。


「昨日、あの2人はだいぶ酔ってたからね。もしかしたらまだ寝てるかもしれないから、電話かけよっか。俺は結羽歌にかけるから、夏音は琴実にお願い」

「はい」


 苦笑いしながら響先輩は結羽歌に電話をかけていた。夏音は嫌そうな表情を浮かべていたけど、ゆったりとした動作で琴実にLINE電話をかける。

 にしてもライブ本番に遅刻か......。私も緊張であまり寝れなかったし、夏音が起こしてくれなかったら危なかったかも......。

 軽音部の時は、『遅刻厳禁』みたいなこと掟に書かれてたけど、もし本当に遅刻していたらどうなっていたんだろう......。打ち上げの時に度数高いお酒をストレート一気させられてたのかな......?


「あ、結羽歌? 起きて......うん? 琴実と一緒にいるの? うんうん......わかった、急いで部室来てね」


 変な掟がないサークルだから(当たり前だけどね)、先輩達も怖く見えないし、接しやすい。優しい先輩っていうのは、響先輩達みたいな人のことを言うだろうな......。

 私は、もし部員が遅刻したらどんな風に話しかけていたかな? さっきの響先輩みたいに出来たかな?


「全くあの2人は......。大事な日にあれだけ飲むから起きれないんだろうが......」


 響先輩とは対照的に、夏音は苛立ちを隠せてなくて腕を組みながら小言を言っている......。これだと部の雰囲気が悪くなるんじゃないかな? って一瞬だけ心配になったけど......、


「こらこら夏音、こういうことは誰にだってあるはずだから、責めちゃだめだよ。2人だって頑張って練習してたんだからさ」

「響先輩は優しすぎるんですよ。あいつらは少し緊張感が足りてないんで」

「夏音は相変わらずだね」


 部長と次期部長のやり取りは、まるで響先輩が夏音に部長になってサークルを纏めることの大切さを教えているかのように見えた。

 苛立ちはまだ隠せてない夏音だけど、あの2人が部室に着けばきっと気持ちを落ち着かせて作業に移っていくんじゃないかな。


 そして数分後、扉の向こうから慌ただしい足音が聞こえてきて、今日の主役の内の2人が姿を現した。


「すみません! 遅れました......!」

「ご、ごめんなさいっ......!」


 すっかり息が上がっている。今日が大事な日だって思っているから、全速力で走ってここまで来たんだよね。


「全く......気をつけろよ」


 夏音が2人の前に立ちながらそう言った。

 その表情に苛立ちはなくて、2人が部室に来たことに対して安心しているように見えた。

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