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俺のドラムは少女のギターに救われた  作者: べるりーふ
第36章
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美貌、演奏に活かすためには

 6月28日


「すごいすごい! Twitterだけじゃなくてインスタの方もバズってるよ! やっぱり宣伝の力って大事だね~」

「うん......! SNSはいっぱい活用した方がいいかなって思ったから......」


 日曜日、バンド練習の休憩中、結羽歌と立川がスマホに釘付けになりながら盛り上がっていた。

 宣伝効果は抜群らしく、Twitterだけでなく様々なSNSを使うことでサークルの知名度を上げる作戦を実行し、順調な結果が得られているらしい。

 最初が肝心と言うくらいだから、Twitterだけに縛られないで視野を広げるという判断は間違いではなさそうだ。


「にしても、音琶の人気は凄まじいねぇ~。羨ましくて私妬いちゃうかも」

「えっ!?」


 不意に立川があざとさ全開で喋り出す。それに音琶が反応し、一瞬戸惑ったような表情をしていたが......。


「どしたのさ千弦~。そんなに私輝いて見えてるの?」

「うん! リプ欄なんて音琶の話題で持ちきりだよ~。ほら見て!」

「うーんと......?」


 立川がスマホの画面を音琶に見せ、音琶は右手の人差し指を顎に当てながら例のリプを凝視する。


「『ツインテのこ可愛い! 本番楽しみです!』、『このこリードなのかな? どんな演奏するのか楽しみ!』、『ライブはツインテのこ目当てで見に行きます!』。うわ......、これ全部私のこと言ってるんだよね?」

「ツインテのこは音琶1人しかいないよ?」

「そうだね......。まさかこんなに注目浴びる日が来るなんて......」


 想像以上の人気者っぷりに音琶が萎縮してしまった。元々音琶は誰もが振り向くレベルの美貌の持ち主なのだし、性格さえもっと大人しければ大抵の男は落とせるだろう。

 そんな奴に彼氏がいる、ということを知った音琶のファンは一体どんな反応をするのか気になるな。間違いなく俺は観客共の殺意を感じながら演奏することになるのだろうな。


「おいおい、上川の奴相当人気あるみたいだぞ?」

「......みたいだな」

「ここは彼氏として、あいつのこと支えてあげるべきだぞ?」

「うるせぇ......。もう何回も支えてる」


 女子陣の会話を聞いていた日高がチューニングをしながら俺に耳打ちをしてくる。お前も本当に調子良いよな、俺のことよりも立川という自分の彼女を心配してはどうだ?


「でもさでもさ、千弦も結構人気あるっぽいよ? ほら、このリプだってさ......」

「どれどれ......、『ボーカルの子も可愛い! てかこのバンド女の子達のレベル高すぎない?』、か......」


 音琶の人気が飛び抜けているだけで、後の2人もそれなりに好意的なリプが来ているようだ。確かに結羽歌も立川もスペックは高いからな、性格は置いといて。

 だが、ここまでの反応が来ているからには、尚更一番大事なことを疎かにすることは出来ない。この宣伝は決してミスコンの宣伝ではないのだから。


「なあお前ら、盛り上がっている所悪いのだが......」


 容姿で高い評価を得られても、メインとなる部分の質が低ければ、ただの『可愛い女子がいるだけのバンド』として認識されてしまう。

 男2人がリプではどのような評価を受けているのかは知らないが、バンドの演奏というものは容姿の良し悪しとは決して比例しないのだ。


「そろそろ練習再開するぞ」


 敢えて言葉にはしない。決して羽目を外している様にあいつらを見ているわけではないが、このままSNSばかりに集中して浮かれ気分になられても困る。

 女子3人組には、美貌という武器が既に備わっている。ならば、その武器を演奏に活かし『可愛い女子がいて演奏が上手いバンド』を目指すように努力すればいい。


「はーい」

「あと1時間......、頑張ろう......!」

「リプの続きはスタジオ終わりにまた見よ~」


 このバンドは、今までのバンドとは違う。

 メンバーが結託出来ているし、演奏技術も練習を重ねる毎に向上している。


「3曲目の2サビ終わりからラスサビまでがさ......」

「私もまだ自信ないかも......」

「俺ももうちょっとだけ極めたいから、そこから練習してこっか」

「了解~」


 意見交換もぶつかること無く進めている。改善点や長所も自分達で分析しているからこそ、練習だってスムーズに進んでいる。


「そしたら、俺が合図出すから、そこから始めるか」


「「「は~い」」」


 最高のバンドの定義は今でもわからない。

 だが、前よりも答えは近くにあるかもしれないと思えるようにはなっていた。

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