表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺のドラムは少女のギターに救われた  作者: べるりーふ
第36章
549/572

幹部構成、見直しが必要

 6月27日


「へぇ~、あんたが部長ね~」


 土曜日のバイトで、また見知らぬバンドの主催ライブを担当し、PAやら照明やら、転換の手伝いをする日々.....。こっちのライブまで丁度1週間と迫っているが、金を稼ぐ使命は変わらず果たしている。というか、今後ライブハウスを使っていくことを考えると、個人的にも金を貯めておかないとサークルの未来に関わる。

 そんな中、打ち上げで琴実に昨日の話を打ち明けることになり、響先輩に言われたことや、向かいに座る音琶も参加しながら話が進んでいた。


 因みに琴実が今回の打ち上げに参加してたのは、今日のライブで弾き語りのバンドが出ていたからで、自分と照らし合わせて参考にしたいと思っているかららしい。

 響先輩も連れて行くべきでは? と思ったが、夏休みも帰省出来ないくらい研究に追われていると言っていたから、きっと今も汗水流して研究に勤しんでいるのだろう。


「......俺が部長になったら困るか?」

「そうね......、あんたみたいなぶっきらぼうが部長だと、来年入ってくる新入生が萎縮するに違いないわね」

「そう言うお前も、人のこと言えないんじゃないのか?」

「私は別に部長になるつもりはないから問題ないわよ」

「お前みたいな無駄にプライド高くて面倒な奴が先輩だったら、間違いなく後輩達は逃げていくな」

「そ、そんなことないわよ! あんたよりは面倒見良い自信あるわよ!」

「面倒見良い奴ってのは、目の前のことだけじゃなくて周りもしっかり見れている奴のことを指すと思うのだが」

「私見れているわよ! 特に結羽歌のことは......」


 だが、すぐに言葉を詰まらせ、やがて頬を紅潮させながら俯く琴実。一応、自分が不器用で一点にしか集中出来ないという自覚はあるらしい。


「もう、2人とも小さいことで言い争わないの!」

「音琶、これは至って重要な話合いであってだな......」

「見ているこっちからしたら随分レベル低い様に感じたんだけど?」

「うるせぇ......」


 向かいでは音琶が結羽歌と隣合わせで座っている。テーブルに置かれたプラカップにはオレンジジュースが入っているが、まだ口を付けた形跡はない。

 前まで音琶は打ち上げでそれなりの量の酒を飲んでいたが、今は全く飲まなくなってしまった。別に酒を飲んで欲しいからそう思っている、というわけではないが、複雑な気持ちにさせられるのも事実だ。


「まあでも......、他の幹部が誰になるのかも気になるよね!」

「......確かにな」


 今現在、音同の幹部事情は部長(響先輩)、副部長(留魅先輩)、会計(利華先輩)、議事録係(静司先輩)で成り立っている。前二つはともかく、後の二つは活動の定義が曖昧になりつつあって、会計に関しては幽霊部員の部費が集められていないという点、議事録係に関してはここ数年議事録を書いていないという点が問題になっている。

 元々活動内容や集まりが徹底していないサークルなのだから、部長副部長以外の役割が満たされていないのは想像出来たが、俺が部長になったら最低限、一人一人が平等に仕事を与えられるサークルにはしていきたい。


「どうせ音琶は副部長になるんでしょ? 羨ましいわよね、こんなにも仲の良いバカップル同士でのコンビなんて、頼もしい以外の何物でもないわよ」

「バカップルで悪かったな」

「バカップルじゃない。くれぐれも幹部内恋愛でトラブルにならないようにするのよ?」

「バンド内恋愛でもトラブルは起きてないから大丈夫だ」

「いや、私が見る限りだとトラブルだらけな気がするけど......」


 確かに音琶は副部長の立候補に名乗りは上げている。だが、実現するかどうかは不明だ。

 もし音琶が副部長になれなかった場合のことも想定して、誰が相応しいか考えないといけなくなるだろう。このタイミングだと夏休みが終わるまでは留魅先輩と組むことになるだろうけど、先輩達の事情を考慮すれば、いつ副部長を変えなければならなくなるかもわからない。


「ま、今までと全く同じ構成じゃなきゃダメ、ってわけでもないと思うから、夏音が部長になった時にでも私達2年生組で色々話し合ってみても良いんじゃない? 副部長が2人いるサークルだってあるみたいだし」

「......」


 確かに先輩達よりも2年生の方が圧倒的に人数は多い。幹部の構成を見直して、新しいやり方でサークルを始めて良い気もする。


「やり方は人それぞれだし、みんなの意見まとめて頑張っていきたいね!」


 音琶はそう良いながらオレンジジュースを飲み干し、すぐ側に置いてあった2リットルのペットボトルを手に取る。

 プラカップの中に流れているジュースの音が心地よく鳴り、八分目まで入ると音琶はボトルの蓋を閉めた。


「取りあえず、私は副部長に立候補します!」


 威勢良く右手を上げ、満足気な表情を浮かべる音琶。琴実はそんな音琶を見ながら、どこか遠くを見るような表情をしていた。


「ほんと、あんたは何でも積極的に頑張るわよね......」


 さっきよりも小さい声で呟いていたが、俺にはその言葉の真意が理解出来なかった。

 だが、これもまた音琶の身体に起こる異変から生まれる引き金に過ぎなかったのである。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ