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俺のドラムは少女のギターに救われた  作者: べるりーふ
第36章
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脱線、単位は大事

 音琶には事情を伝えて一緒に学食で夕食を済ませておくことになった。バンドメンバー全員が揃って食事なんて久しぶりな気もするが、響先輩の奢りでラーメン食べに行った時以来か?

 小テストは明日の2限だから、睡眠時間を確保するためにも早めに切り上げておきたい。いくら大学生だからと言って、朝方近くまで語り明かすのは身体に毒だ。


 部屋に着き、リビングのミニテーブルを5人で囲みながら教材を鞄から取り出す。ふと音琶が俺以外の3人に疑問を投げかけたが......、


「結局、夏音以外は単位ギリギリなの?」

「ま、まあそんなところかもな。後期には再履修あるし......」

「わ、私は......、一応追試乗り越えてるから、単位はまだ大丈夫......」


 どうやら日高は危ないらしい。お前去年はサークル活動してなかったんだから、4人の中で一番成績良くてもおかしくないんだからな。結羽歌は崖っぷちを常に歩いている状態か。

 そして立川は......、


「私も日高と遊びすぎてたから、ちょっとピンチかも~」


 何楽しそうに語ってんだよ。自分に置かれた状況をしっかり顧みた方がいいぞ。


「単位はどれくらい取ってんだよ」

「も~、そういう質問は女の子にするもんじゃないぞ?」

「......」


 必死で誤魔化してやがる。あざとく見せているのかもしれないが、俺からしたらただただ腹立つだけなのだが。正直に『私は単位が非常にピンチです、頭がとても悪いので助けて下さい』ってどうして言えないのだろうか。


「取りあえず、明日の範囲だけでも予習するぞ」


 時間が全然足りてないし、ほぼ一夜漬けに近い状態だから、明後日以降には今日勉強したことは綺麗さっぱり忘れてそうだな。

 まあ、この勉強会はあと何回か行われそうだし、先生役を任せられる準備は事前にしておくか。


 ・・・・・・・・・


 2時間経過


「えー! やっぱり最後は飛び跳ねて締めでしょ!?」

「飛び跳ねるよりも滝上のドラムロールから、みんなで楽器鳴らせば良い感じに終わると思うけどな?」

「それだったらボーカルはどうなるの? 私何か適当に声出せばいいってこと?」

「そもそも俺達がやる曲って、そんな難しいのじゃないから、目立ちすぎる演出したら逆効果じゃね?」

「そんなことないよ! 盛り上げに簡単も難しいもないんだよ!」


 案の定、勉強からバンド理論に脱線しやがった......。お前ら単位やばいんじゃなかったのか?


「わ、私は......、飛び跳ねてもいいと思う......よ? 簡単な曲だからやりやすいし、タイミングとかも掴みやすいから......」

「結羽歌......。意外と思い切りいいよね? ベース弾いてる時も人が変わったみたいになるし......」

「それは......! ベース弾くのが楽しいからで......」


 立川は結羽歌との付き合いは長いが、サークルでの付き合いは他の奴らよりもずっと短い。普段の結羽歌とサークルでの結羽歌のギャップに驚く日々を繰り返しているようだな。


 ......いやそうじゃなくてだな、何を目的としてこの部屋に集まっているのか、こいつらはすっかり忘れてしまっている。


「千弦ちゃんのボーカル、綺麗だから、私も綺麗なベースにしないとって思ってて......」

「もう、私の歌声ってそんなに綺麗? 音程合わせるので必死なんだよ?」

「千弦ちゃんはそう思ってるかもしれないけど......! 私は夢中になっちゃうくらい、好きだよ」

「結羽歌......」


 ダメだ、結羽歌と立川は互いを褒め合って本来の目的を完全に忘れてしまっている。日高も音琶とバンド論争にシフトチェンジしているし、勉強のことなんて蚊帳の外だ。

 全くどうしたらいいものなのか。


「......」


 そんな俺は、一人明日のテストに向けて取りこぼしている部分が無いかの確認に移っていた。自分の頭脳と成績を信じていれば今回も間違いなく満点に違いないのだが、万が一......いや億が一にも間違って覚えている場所があるかもしれないから、いくら優等生でも油断は出来ないのだ。


「なあ滝上、そんな黙々と勉強してないでさ、本番どうするか意見くらい言ってくれよ」

「......」


 ああもう末期だな。俺以外の3人は落単路線で確定か......。

 恐らく、ほぼ間違いなく俺は満点だから問題無いが、お前らの勉強への姿勢は留年への扉を開こうとしているとしか思えないからな。


「日高、その前にテストのこと忘れてないかだけ聞きたい」

「あっ......。まあバンドメンバーが全員で集まれているんだし......、ちょっとくらいはライブの話したっていいよな?」

「勉強が終わってからなら、な」

「はい......」


 敢えて威圧を剥き出しにして日高を睨みつけ、早く勉強に手を付けろというメッセージを伝えたところで、ようやく日高は事の重大さに気づいたようだ。


「単位は大事だろ?」

「......はい」

「ならしっかりしろ」

「......すまん」


 結羽歌と立川にも少し強めに言っておかないとな。単位を落としすぎてサークル辞める、なんてことには絶対したくない。


「後の2人も早く勉強再開しろ。バンドの話はまた後でだ」


 俺は自分のやるべき範囲を終わらせた。お前らも、出来る限りでいいからしっかりしてくれよ。

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