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俺のドラムは少女のギターに救われた  作者: べるりーふ
第35章
521/572

≠、何もかも違うから

 響先輩と私では、何もかもが違うと思った。

 バンドを組むことになってから約1ヶ月、考え方も音楽への姿勢も、練習の頻度だって、全てが違っていた。


 私はとにかく沢山練習することで、弱点や苦手を見つけ出すスタイルを貫いている。最近そのやり方が本当に正しいのか怪しくなっているんだけど......。

 それに反して響先輩は、量より質を大事にしている感じで、短い時間内で曲の特徴を捉えて演奏に活かしている。

 一緒にスタジオ練習しているときに感じたことだし、何より......、


『琴実にはもう少し繊細さが必要だね』

『結羽歌を意識しているみたいだけど、一緒に組む人のことを考えないと上手くなれないよ?』

『ライブっていうのは、見られるためのものじゃなくて、見てもらうためのものだからね?』


 考え方が全く違うはずなのに、響先輩の指摘は的を得すぎていて、言い訳の余地も許してくれなかった。


 確かに私は演奏中、結羽歌を意識していた。たった1回負けたことが悔しくてたまらなくて、私の心は乱れていた。

 冷静さを失って焦りが見えているのは自分でも分かっていた。なのに、響先輩は躊躇うことなく私の欠点を口にしていた。


 私、響先輩にはあんまり意見出せていないのに......。これじゃ私、まるでバンドメンバーのこと見れてないみたいじゃない......。

 私だって、響先輩の欠点くらいは分かっているわよ。だけど、私ばかり言われているようじゃ、『出来ていない奴』が『出来ている人』に命令しているみたいで、後ろめたい気分になるのよ......。

 相手が先輩だからってのもあるけど、指摘するなら自分を極めてからじゃないと気が済まなくて......。


「それじゃ、そろそろバンド名決めようか」

「はっ......!」


 そうだった。今はバンド名を決める時間だったわね。

 私と響先輩、あとは5人組バンドの2つに分かれて席が作られている。早いとこ決めて帰ったら練習しないと、自分の演奏を動画に撮って響先輩に見てもらおうかしらね。


「さっき仕切ったから疲れちゃった?」

「いえ、そんなわけでは......」

「良い提案だったと思うよ。それに、自分から行動するって言ってくれたから助かった」

「えっ?」


 そんなに良かったの? 一部不機嫌になった人が居たのに?


「5人組バンドだと、Twitter係の2人がメンバーに入ってるからね。俺達に関してはその2人のどっちかに来てもらえば良いけどね」

「そんなの、考えれば分かることです」

「残念ながら、音同には考えても行動に移さない人が多すぎたんだよ。そのせいで部員間で意見の食い違いや揉め事が沢山起きてね。どれもこれも、頼りない部長のせいだったんだけど」

「......」


 頼りない部長......。それは間違いなく響先輩のことよね......?

 私達が入部する前の音同って、ホントにどんな感じだったのよ。幽霊部員の多さを考えると、軽音部とはまた違う波乱が巻き起こっていたことが想像出来るんだけど?


「暗い話はここまでにして、琴実は良い案ある?」

「あ、えっと......」


 そうね、バンド名......。

 唐突にさっきまで考えていたことを思い出す。


 響先輩と私では何もかもが違う。

 考え方も音楽への姿勢も、練習の頻度だって、全てが違っている。


 全てが違っている2人だからこそ、相応しいバンド名ってのが、あると感じた。

 そんな私が思いついたバンド名は......、



Not Equal(ノットイコール)......。なんて、どうですか?」



 全てが違うから、という理由で閃いた単純な言葉。それでも、人前で名乗っても問題の無いバンド名だとは思うわよ?

 何のセンスも無いけれど、これくらいの用語しか思い浮かばなかったんだし。


「......」


 響先輩、腕なんか組んで渋っている様にも見えるんだけど、大丈夫なのかしら......。


「そうだね。俺も琴実も、同じバンド組んでるのに、色んな所が違っているし、いいんじゃないかな?」

「......!」


 色々突っ込みたい所はあったけど、私の案がまたもや響先輩に認められたってことで良いのよね?

 折角決まったんだから、『やっぱ今のは無し!』なんてことにはしないわよ。


「そしたら......、決まりってことで!」

「OK、LINEのグループ名も変えておくからね」

「あ、お願いします......」


 合う合わない、センスの有無はともかく、無事にバンド名が決まったことだし、あとは本番に向けて練習と宣伝を上手くやっていきたいわね。

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