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俺のドラムは少女のギターに救われた  作者: べるりーふ
第35章
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顔出し、宣伝をどうするか

 6月5日


「部のTwitterも開設されたことだし、1ヶ月後の本番に向けて宣伝していこうと思ってる。それでだな、練習風景や部会の雰囲気とかもツイートした方が良いと感じたんだけど......」


 毎週恒例の部会、Twitterが開設されたことで活動の幅が拡がり、今後のサークルをどう売り込んでいくかが鍵となる。

 勿論今はライブの集客がメインだが、この先の活動を全世界に通達するためにはどうしたら良いかを考えるため、部会を利用して考えることとなった。


 今日は響先輩以外の上級生は研究室の用があるから、という理由で欠席している。先輩達の意見を聞いて後輩組は参考にする、というのが理想的だったが、居ない人達のことを考えても仕方が無い。むしろ先輩よりも後輩の意見が優遇されるというのなら、悪い話だとは思わない。


「あ! あとバンド名も今日中に決めときたいね。全3バンドの練習風景も、バンド名と一緒に載せたいから」


 バンド名、ね。先輩達はともかく、俺のバンドはまだ決めてすらいないし、琴実の方もどうなのかは分からない。

 このバンドが最高のバンドになるのかは定かではないが、どうせなら記憶に残る様な名前にしておきたいかもな。大切な人と奏でるのなら尚更だ。


「バンド名......ね。自分の演奏に夢中で考える余裕も無くなってたわね」


 響先輩の呼びかけに真っ先に反応したのが琴実だった。軽音部の時と違って誰かの練習風景を見る機会が減ったし、琴実が結羽歌との勝負の時からどれくらい上達したのかが分からない。

 同じバンドメンバーなら成長具合(特に日高)がわかりやすいのだが、暫く見ていなかった奴が急激に上手くなっていたら普通にびびる。結羽歌だったら軽く卒倒するんじゃないかね。


「はは、琴実はいつもベースに向ける目が怖いからね。バンド名のことなんかすっかり忘れてそうだよね」

「ま、まあ......。私だって真剣ですから......!」

「熱があっていいね」


 どうやら響先輩は琴実の意気込みに感心しているようだな。だとすると、最後に見た時よりも遥かに上手くなっていると捉えても良いだろう。


「それも大事なことだけど、まずは宣伝の仕方から話し合っていこうか」

「そ、そうですね......」


 勢いで思わず乗り出してしまった琴実は、我に返って少し罰が悪そうに頷きながら座り込む。

 次に部員一同は、部室の隅に立て掛けられていた長テーブルとパイプ椅子を並べて会議をする形を作っていった。


「恥ずかしいわよ......」


 長テーブルを移動させている間、琴実は顔を赤くしながら何かをぶつぶつ呟いていた。


 ・・・・・・・・・


「......それでだな、練習風景を撮る時はスタジオに一言添えた方が良いと思うのだが......」

「まあそうだよね。中には撮影禁止の場所だって無いことは無いから」

「後は部員の顔出しをどうするか、だ。俺はNGな」

「あ、そうなの......?」


 全国にサークルの活動を送り出すに当たって、プライバシーとやらを守る必要はある。いくら売り込むからと言って、どんなことでも投稿して良いというわけではない。

 俺も顔出しは......、なるべくしたくない。別に覆面バンドとかを目指しているわけではないが、SNSに自分の顔を載せる行為には抵抗がある。

 決して顔が悪いわけでは無いからな。音琶も言っていたが、俺は平均以上の顔を保てているし、笑うと比較的可愛い顔になると予測されている。だから、自分の顔にはちゃんと自信は持っている。


「だったらさ、夏音は後ろ向きで写して、他のパートが正面か斜めに写るようにしたら良いと思うよ?」

「カメラはメンバーとは別に必要、ってことか」

「夏音が顔写したくないんだから、仕方無いと思いますよ?」


 俺の意見に続き、音琶がフォローに入った。Twitterも真っ先にフォローしてくれたが、現実でもフォローしてくれるのが音琶の素晴らしい所だ。


「まあ、練習風景で夏音写す時は配慮するけど、全部が全部は無理だよ?」

「......どうしてですか?」

「だってほら、ライブが終わったら集合写真撮るし、そう言うのも載せたいんだけど......」

「......チッ」

「今舌打ちした?」

「してないです」


 本当はしたけどな、だって載せたくねえし。


「夏音の気持ちは分からないわけではないけどさ、折角ライブしたんなら俺はみんなで写真撮って思い出にしたいんだけどな」

「別にLINEのグループに載せるのなら問題無いですけど、Twitterだと規模が違うんで」

「うーん......」


 俺の意見に渋る響先輩。確かに分かるけど、SNSで良い思い出が無い以上、抵抗を感じずには居られない。当然軽音部の目にも留まるわけだし、あいつらのことだから悪用しても不思議ではない。

 偏見ばかりなのかもしれないが、最低限自分の身は守りたい。Twitterだって、プライベートなツイートは一切しない予定だしな。


「ま、まあ......。どうしても写るのが嫌だったら無理強いはしないけど......、本番までには結論出して欲しいかな」

「......」


 結構期間長いな。最後の最後まで粘ろうって算段か?


「......なあ滝上」


 その時、不意に日高が低い口調で俺を呼んだ。


「......何だよ」

「お前がどうしたいかは勝手だが、サークルの雰囲気が悪くなるようなことだけはするなよ」

「......は?」


 睨みつけている様にも見えたが、何かこいつにとって気に障るようなことを俺はしただろうか。

 いや、気づいていないだけかもしれないけど、あまり良い空気にはなってないことは確かだ。


 だけどな、少数派の意見が必ずしも間違っているとは言えねえんだよ。多数派の言葉が勝手にその場の空気を作り出しているから、反対意見を持っている奴は勝手に置いていかれるんだよ。

 反対意見を持つことは悪い事では無い。そいつにもそいつのしっかりとした考えがあるわけだし、適当な言葉を述べているわけでは決して無い。


「とにかく、周りはしっかり見てくれよ」

「......」


 この前からこいつは一体何なんだか。

 妙ではあるが、少し日高の様子も窺いながら物事を進めていくしか......なさそうだな。

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