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俺のドラムは少女のギターに救われた  作者: べるりーふ
第35章
515/572

投稿、名前を添えて

 ◈◈◈


 6月1日


 私、池田結羽歌は、同じクラスの立川千弦ちゃんと、サークルのTwitter係になった。

 今日は午後からバイトがあるけど、午前の間に千弦ちゃんと部室に集まって、7月4日のライブに向けてどんな文章で宣伝しようか話し合うことになっている。

 千弦ちゃんとは、日高君の一件があっても特に蟠りはなかったし、言い合いになるようなこともなかった。それに私は日高君にしっかり振られることが出来たんだし、もう何も気にすること無くサークル活動に時間を掛けられる。

 それに、私には大切な人との大きな約束があるんだし、宣伝に力を入れるだけじゃなくて、ベースの方も本番まで最高の形で仕上げないといけないんだ......!


「結羽歌お待たせ~」

「あ、お疲れ様......!」


 部室でノートパソコンを立ち上げ、学内Wi-Fiを繋げていたら、千弦ちゃんが入ってきた。壁に掛けてあるパイプ椅子を持ってきて、私の隣に腰掛ける。


「まさか結羽歌と一緒にバンド組めるだけじゃなくて、係まで一緒になっちゃうなんてね~!」

「私も......、千弦ちゃんとなら、上手くやっていけそうかな」


 今まで音同はTwitterアカウントも作ってなかったみたいで、初めての試みとして大きな責任を感じていた。一応私もTwitterの個人アカウントは持っているけど、音琶ちゃんみたいにツイートはあんまりしないし、せいぜい誰かのタイムラインを眺めて、気に入った投稿に''いいね''を付けるくらいでしか使っていない......。

 そんな私が、自分の文章でツイートして、サークルを宣伝していくことになったんだ......。難しいかもしれないけど頑張らなきゃ......。


「お、アカウント作れたね。そしたらライブのことでもツイートしとく?」

「えっと......」


 アカウントを作ったばかりなのに、いきなりライブのことをツイートしても、見てくれる人は付いていけないはず......。


「まずは自己紹介から始めるのが、基本かな......?」

「ふむふむ......」


 千弦ちゃんが腕を組みながら画面を見つめている。このアカウントはプライベートでやっているものじゃなくて、サークルという団体でやっているものになるから、唐突過ぎるような投稿は絶対にしちゃダメ......。

 140文字で音同の魅力を伝えるには、どんな風に書けばいいんだろう......。


「千弦ちゃん、何か良い文章、あるかな......?」

「そうだね~......」


 少し考えてから、千弦ちゃんはキーボードに手を伸ばし、素早い動作で指先を動かした。


「最初の挨拶みたいなのだけど、こんなのとかどう?」

「えっと......」


 画面に顔を近づけて、文章を黙読する。


 『初めまして、鳴成大学の音楽同好会というサークル、通称''音同''です!』


「これで半分くらいだけど......」

「いいとは......、思う。でも、『!』は全角じゃなくて、半角にした方が文字数稼げるから......」

「あ! そうだね、結羽歌でかした!」

「そんな、褒められる様な事じゃ......」


 もう、千弦ちゃんは些細なことでも喜んでくれるんだから......。


「ねえねえ、もう半分は結羽歌が書いてよ!」

「わ、私ぃっ......!?」

「うんうん! 私と結羽歌で、半分半分の自己紹介っ!」

「そ、そうだね......。どんなのがいいかな......」


 頭を回転させて、今まであったことやこれから起こりそうなことを文章にしようと考える。

 そして......、


 『初めまして、鳴成大学のバンドサークル・音楽同好会、通称[音同]です!

  ライブ情報、ちょっとした日常を投稿していきます!


  結羽歌、千弦』


 一通り書き終えて、千弦ちゃんの感想を待つ。


「こんな感じで、いいかな......? 千弦ちゃんの文章にも、ちょっと修正入れたんだけど......」


 千弦ちゃんは小さな声で文章を読み上げている。そして......、


「うんっ! いいと思うよ! 特に最後の名前書いてる所とかが良い!」

「そ、そうかな......?」

「誰が書いているのかも分かるし、顔も覚えられやすくなると思う!」

「これからその......、練習の時の写真とか、この前みたいに遊びに行った時のこととかも、投稿出来たらな......なんて思ったんだ」

「うんうん、ライブだけじゃなくて日常風景とかも大事だし、仲良いサークルだってことをアピールしないとだもんね!」


 今からするツイートだけじゃなくて、これからする予定のことまで話し合って、団体でのTwitterの使い方に少しでも慣れていきたい。


「そしたら、投稿するよ......!」

「うん! 行っちゃって!」


 マウスで矢印を''ツイートする''のマークまで持っていって、クリックする。

 音楽同好会の最初のツイートが、全世界に送り出された。


 ・・・・・・・・・


 その日の夜、打ち上げには参加しないで部屋に帰り、シャワーを浴びた後スマホを見たら、ある人物からLINEが来ていた。



 池田実羽歌:お姉ちゃんTwitterみたよ! 絶対ライブの動画送ってよね!



 実羽歌の無邪気な文面を見るのは久しぶりな気がするかな......。

 

 大切な人との大きな約束、ちゃんと果たさないと......! 

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