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俺のドラムは少女のギターに救われた  作者: べるりーふ
第34章
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結託、絶望への本気


「え? 軽音部の人達がライブに来るかもしれない?」

「はい、この前の日曜に2年の奴と会ったので」


 部会の途中、ビラ配りの日程や練習状況の把握、本番での機材設置をどうするかについて話し合っていたが、ある程度区切りが良くなったところで部員全体に例の件を伝えることにした。

 敵対していると言っても過言ではない相手が来るということは、音同からしたら重大な出来事になりかねない。嫌がらせ目的で見に来るわけではないと思うが、あいつらのことだから何をしだすか分からないのが事実だ。折角ライブをするのなら周りの目なんか気にしないで楽しみたい所だが、ある程度の危険は知らせておかないと最悪の事態が起こったときの対処が出来なくなる。


「一応、気をつけて下さいってことを伝えただけです。俺の話はこれで終わりです」

「......」


 そう言って席に着こうとしたのだが、周りの空気が重い。軽音部の話題を出すのはまずかったか......?


「......あの人達が来るんなら、私達がやることは決まってるんじゃないの......?」


 だが、結羽歌によって沈黙は破られる。


「そうよ、ただ伝えて終わるんじゃなくて、私達が本番あいつらに何を見せつけるのか、ってことくらい明確にしなさいよね」


 琴実も結羽歌に続く。誰に会ったかも聞いていないのに、まるで会ったのが鳴香だってことを理解しているような素振りだった。


 まあいい。鳴香に会った後に音琶と1つの約束をしたのだ。あいつらに絶望を与えよう、ってな。

 だから、音琶とだけではなく、音同部員全員で、自分達の方が上だってことを軽音部の奴らに見せつけてやろう。

 今から俺が言うことは......、


「すいません、もう少しだけ話が残ってました」


 再び立ち上がり、内に秘めていた想いを音同部員の前で曝け出す。


「音同からしたら、大学内でのライブは今回が初めてになるみたいですけど、誰が見ていようが関係無い......なんてことはないですね」


 言葉を選び間違えたから一度言い直し、再開する。


「まあ、音同からしたら敵でしかない奴らが来るみたいなんで、そいつらが来ても気にしないでライブに臨んで欲しいです。あとは......」


 言わなければいけないことは山ほどある。だが、どうやって締めようか悩んでいる。

 やはり、音琶と交わしたアレを言うべきなのか?


「ねえ、夏音」


 不意に、隣に座っていた音琶が小さく囁いてきた。


「私が言ったこと、言っちゃいなよ」


 口元に手を当て、優しい声で言い掛けてくれる。

 鳴香と会った後、音琶の心情を問うたときに聞いた一言......。音琶が滅多に見せない黒い感情が、あんなにも心地よいものだとは思えなくて、安心感に包まれたあの出来事......。


「わかったよ、そっくりそのまま言ってやる」


 心の準備が整い、一度部員全員を見渡してから、俺は口を開いた。



「俺は観客が誰であろうが関係無い。嫌いな奴が見ているというのなら、そいつが絶望するくらいの憎らしい演奏を見せてやろう、そう思っている。許せないからこそ、音同の演奏で、あいつらを絶望させたい。音同より劣っていると思わせて、音楽に触れられなくなるくらいのトラウマを植え付けてやりたい。それが俺の......、俺と音琶の願いだ」



 言い切った。言い切ってやった。

 今の発言を他の奴らにどう思われようが関係無い。本気の演奏を見せつけることくらい、音琶の真実を知ってからから決めていたことだからな。


 一瞬の沈黙の後、最初に発言したのは響先輩だった。


「ふっ......、いかにも夏音らしい、ね」


 まるで吹き出すのを堪える様な口調だった。そして......、


「ここまで迷いがなくて、自分の本音を曝け出せる人って、なかなか居ないよ。だけどね......」

「......」

「俺も、ライブをやるからには軽音部の人達が絶望するような演奏を見せつけたいと思っているよ。夏音達の熱には勝てる気がしなくてね、いつの間にかその熱に呑まれている自分がいるよ」

「響先輩......」


 当初は音同の積極的な活動に否定的だった響先輩だったが、俺や音琶の説得、新入部員の雰囲気や意気込みに惹かれていたのであった。

 別に特別な力を発揮したわけではなく、ただやりたいことを口に出して行動していただけのことだ。そんなの俺の手柄になることはない。


「安心して、きっと思っていることはここにいるみんな同じだよ」


 そう言って、響先輩は周りに視線を送る。次の瞬間......、


「そうよ、私達だってあいつらに散々好き放題されたんだし、あんな飲んだくれよりも真面目に頑張っている私達の方が人間的には上なのよ! だから演奏面でも上に立たないとやってられないわよ」

「俺に関しては1日しか居なかったけど、たった1日で軽音部のヤバさを感じたから、ある意味被害者かもしれないな」

「私も......、あの人達にだけは、負けたくないよ......!」


 次々と音同を肯定する声が挙がっていた。誰もが皆、俺や音琶と同じ事を思っていたのだ。


「......どうやら音同は、今までに無いくらい結託出来ているみたいだね」


 静かに響先輩が呟き、続ける。


「このまま突き進んでいこう! 音同がこれからもずっと続いていくように、ね」


 何も知らない奴らからしたらただのテロリスト集団と思われるかもしれないが、幸い部員全員が同じ痛みを分け合えている。

 だからこそ、果たしたいことや叶えたい願いもはっきりしているし、互いにぶつかることも無く物事が進んでいる。


 最高のバンドへの道は......、本来と違う方向に行っていないことを願うばかりだ。

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