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俺のドラムは少女のギターに救われた  作者: べるりーふ
第34章
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参加率、少しだけの進歩

 5月23日


「......何こんな時間から酒飲んでんですか......。今何時だと......」

「うん、まだ11時にもなってないね」

「......」


 部会から一夜明け、ポスターやらビラやらで忙しくなりそうな予感がしていたのも束の間、どういうわけか近所の公園で焼き物が開催されていた。

 昨日の夜11時過ぎ、サークルのグループラインに突如響先輩から『明日肉焼くから食べたい人集まれー』という連絡が入った。一応ビラやポスターの文字入れに関しては特に問題も無く進み、あとは印刷して貼るやら配るやらすれば良い状況までは進んでいった。

 話合いが終わった直後に飯の誘いが入るだなんて思っても居なかったし、第一バイトがあるから俺は行くつもり無かったのだけど......、


『私肉食べたい! ねえ、午前中だけでも行こうよ!』


 食欲だけは誰にも負けないじゃじゃ馬娘がスマホを手に目を輝かせていたから仕方無く、あくまでも仕方無く参加することにしたのだ。別に先輩にたかろうとなんて考えて無いからな。

 何だかんだ部員は全員集まっているし、みんな休日を有意義に過ごそうとでも思っているのだろうか。まあ部員の参加率が高いのは良いことだし、今後の希望にも充分なり得る。


 取りあえず俺と音琶はバイトの時間になるまでは参加することにしたのだが、満腹の状態で出勤なんてことにはならないよう気をつけないといけないな。

 それはそうと、このサークルが朝早い時間から酒を飲むサークルだっただなんて、衝撃を隠せない。


「私もお酒飲みたかったな~」

「バンドマンはアホだから仕事前酒飲んでもノリと勢いさえあれば乗り切れる、とか考えてそうだよな」

「夏音、相変わらず偏見が凄いよ......?」

「それはどうも」

「褒めてないからっ!」


 紙皿の上に山盛りの肉を積んだ音琶は、割り箸を動かす手を止めようとしない。響先輩達4年生組は既にビールやシャンパンを開けているし、結羽歌や日高もクーラーから次々と肉野菜を取り出して網の上に乗せていっている。

 乗り切れていないのは俺だけのようだな......。サークルの進化を望んでいるというのに、こういう場が苦手なのは相変わらずのようで、一人勝手に疎外感を感じてしまって仕方が無い。


 ......適当に話でも振っておくか。


「響先輩、宣伝の件、これからどうしますか?」

「ん?」

「デザインも全て完成しましたし、あとは印刷するだけなので、もし良ければ明日にでもポスターくらいなら掲示板に貼ってきますよ」

「いいの? 助かるよ」


 ビール缶を片手に、響先輩は俺の話に何度も頷く。酒を飲んでも普段とあまり変わらない様に見えたから、謎の安心感が俺を包んでいた。


「ビラに関しては、個人LINEで話し合うか、グループで呼びかけして他の奴らにやらせても良いと思ってます」

「......そうだね、出来るだけみんな平等に動いてもらいたいしね」

「そしたら、明日にでもポスターのデータ送って下さい。学生課にも許可取ってそのまま貼りに行くので」

「わかったよ、ありがとうね」


 そう言ってビールを一口啜り、響先輩は箸を網の方へと動かしていった。


「それと、食料代は気にしなくて良いからね。全部先輩四人で出し合うから」

「あ、ありがとうございます」


 最後に響先輩から救済の言葉をもらい、俺も箸を動かそうとした時......、


「ちょっと響! 今あんた何て言った!?」


 奥の方で酒を飲んでいた留魅先輩が取り乱しながら響先輩に突っかかっていた。


「何って、四人でお金出し合うって言ったんだけど。何か変だった?」

「変も何も......、今初めて聞いたんだけど! そういうのはちゃんと事前に言わないとダメでしょ!?」

「ああ、悪い悪い」

「ちょっ......! 絶対悪いなんて思って無いよねそれ!」


 酔っているのか本性なのかは分からないが、金は大事だからな。こういう重大な話は事前にしっかり伝達しておくべきだよな。

 まあ言ってしまったのだから、今更『今の話はやっぱ無し』なんて言われても、それには従わないからな。

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