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俺のドラムは少女のギターに救われた  作者: べるりーふ
第34章
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苦手意識、身体が覚えている

 5月16日


「オーナー、機材貸し出しの件どうなりました?」

「あぁ......、それなんだけど」


 バイトの土曜日、音同に入ってからシフトが組みやすくなったのは言うまでも無い。行事の数も少ないし、夜遅くまで飲み会をする、なんてことも無くなった。お陰で学業に励む時間が増え、去年とは比べものにならないくらい快適な日々を過ごせていた。


 過去を消すことは出来ないからこそ、今を活かすことに熱を注げば良い。焦っているわけではないが、慎重になりすぎては手にできるものが限られてしまう。

 だからこそ確認すべき点は迅速に対応しないといけないのだ。


「もうちょっと保留でいいかな......? メンバー間で連絡上手く行き渡ってないみたいでさ」

「......」


 無理なことを願っているのは承知しているが、せめて向こうも即決してくれないだろうか。答えは二択だけなのだし、ダメと言った所で反論する気などさらさらない。

 てかメンバー間の連絡なんてグループLINEで済ませられる話だと思うがね。バンドマンお得意の既読スルーとやらが見事に発動されているのだろうか。


「だからごめん! もうちょっと待ってて!」

「......わかりました」


 本当にもう少し待ってれば返事が来てくれるのだろうか。一抹の不安が頭の片隅に過ぎる感触を覚えた。


 ・・・・・・・・・


 5月19日


 保留を受けてから3日経過したが、特に進展は無し。このまま待っているだけでは何も始まらないし、別のことに焦点を置いて行動することを選んだ。


 メンバーが揃ってから初めてのスタジオ、軽音部とは違って部室で合わせられる環境が揃っていないので当然のことだが、こう言った時間にも金を使わなければいけなかった。

 金のことはさておき、まずはスタジオで合わせられる状態まで上がってこれたのは喜ばしいことだ。ここからは演奏の腕が試されることになるのだが、肝心の日高の方は......、


「うーん、まだまだ曲としては完成出来てないかな」

「ですよね......」

「まあ、いきなり合わせて上手く行くわけないですし......」


 部室で披露してくれた拙い演奏よりかはマシになっていた。響先輩に教わって腕を上げたのは充分に伝わっていた。

 だが、他のメンバーの実力を見る限りだと、もっともっと上がっていかないとバンドの形が成り立たない。立川は元々素質があったから除くとして、残りのメンバーは全員1年以上楽器に触れている奴らだ、半端な実力は持っていない。


 始めたばかりの頃の結羽歌もそんな感じだったよな、理不尽な先輩と琴実には負けたくない、みたいなこと言っていたような気がする。


「やっぱ俺、ダメか?」


 響先輩達の言葉を真剣に聞き入れ、どこがダメなのかを探る姿勢は立派なものだ。

 時間が無いのは分かっているが、日高の事情だってしっかり考えて言葉を選ばないといけない。何がダメでどこを直せばいいのか、ここははっきりと言った方が良いのかもしれない。


「初心者にしては良く出来てる。響先輩からどんなことを教わったのかは知らないが、苦手な部分を克服していこうという気持ちが演奏に現れているな」

「そうなのか......。これは良い方に捉えて大丈夫なのか?」

「どっちにも捉えられる。自分の得意不得意が分かっている分、譜面を覚えるのに時間は掛からないだろうな」

「......」

「だが、苦手部分を意識し過ぎて演奏に遅れが生じる。メロの変わり目になると右腕が重く感じたりしないか?」

「......! 確かに、意識していると身体の動きが悪くなっているような......!」


 自分の欠点を明らかにしていくだけでは意味が無い。身体の癖や指の動き、それらが全て上手く合わさることで制度の整った演奏が出来上がるのだ。

 音楽に触れて間もない日高がやるべきことは、身体の動きを滑らかにすることなのだ。


 ......何度かスタジオ練習を繰り返していけば、バンドの感覚も身についていくことだろう。

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