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俺のドラムは少女のギターに救われた  作者: べるりーふ
第34章
501/572

吉凶、試すか試さないか

 ***


 5月15日


 あれから6日も経つのに、一向にオーナーからの連絡が来ない。機材の説得に手こずっているのか、バンド側からの連絡が途絶えているのか......。まだ余裕はあるとは言え、少々焦りが募り始めていた。

 だが、連絡を待つだけでは何も始まらない。まだまだ決めないといけないことが音同にはあるのだから。


「実は、もう一つバンドを結成することになった。これで部員全員がライブに出れるようになったよ」


 事前に響先輩から知らされていたが、まさかこんなことになるとはという感情と、ようやく全員が参加出来るという喜びが俺の中で溢れそうになっていた。

 ざわつく部員を余所に、響先輩は続ける。


「折角だし、サークルのライブは全員がステージに立てるようにしたいからね。だから俺も、こうして新たにバンドを組むことになった」


 響先輩が組むのは、琴実との2人だけのバンドだ。アコギとベースだけという、やや異色で演奏出来る曲が限られるものだが、琴実の熱が伝わった結果、響先輩も可愛い後輩と組んでみるのも面白いと判断したようだ。


「それでだが、本番の1ヶ月前までにはポスターを完成させたい。勿論宣伝用のチケットも配布して欲しい所なんだけど、デザインの案を誰かに出して貰いたいって思っている」

「......」

「他にも決めたいことは沢山あるんだけど、優先するなら宣伝が先だと思ってね。デザイン完成まではバンド名も決めて欲しいから、そこんとこよろしく頼むよ」


 淡々と話を続けていく響先輩だが、その口調には迷いが無い。最初は躊躇いの気持ちが強かったようにも感じたが、俺や音琶、そして琴実達の言葉により、サークルへの姿勢が変化したように見えた。


「反対意見とか、もっとこうしたら良い、とかあったら、遠慮無く言って欲しい。ライブを成功させるためにも、部員一人一人の意見は大事だから」


 響先輩の言葉は、俺の気持ちと比例していた。あとは他の先輩達がどう思ってくれるかが重要なのだが.....。


「もしかしたら、音同も変われるかもしれないね」

「宣伝なら、折角だしTwitterのアカウント設立しようよ!」

「ポスターもチケットも、全員で案出し合いたいね!」


 ......どうやら、2年生含め先輩達もライブに対する意欲が高くなったようだ。

 心配はしていたが、部員の賛成を得ることに不可能は無かった。1週間、いやそれ以上にはなるが、頑張ってきた甲斐があったようだ。なら、あとは結果を残すだけ。


「それで一つ気になったことがあるんだけど、演奏の進捗状況はどんな感じ? 一応俺らの方は今まで通りスタジオで合わせているからいいけど、2年生組は大丈夫?」

「......」


 スタジオに関しては、日高の実力がまだ及んでいないのが現状だ。1週間の間で曲は決まったし、初心者でもやりやすいものを選んだつもりだが、このままの状態でスタジオを借りたら特に何も得られないまま時間だけが過ぎていくことになる。

 準備が整った状態で挑まないと、時間も金も無駄になってしまう。全員が万全にならないと、スタジオ練習は叶わないのだ。


「黙り込んだけど、本当に大丈夫?」

「......まあ、調整も大事なので......」


 響先輩の問いかけに答えたのは日高だった。

 やはり、こいつは自分の現状を危惧していたようだ。確かに最初の頃よりはマシにはなってきているが、合わせるまでの実力には至っていない。

 日高が納得行くまで、そしてバンドメンバーの同意が得られるまでは待機することになっていたのだ。


「まだ2ヶ月と思うか、もう2ヶ月と思うかは日高君次第だけど、少し焦った方がいいかもしれないね」

「はい......」


 初心者だから下手でも構わない、経験者に対して気を遣う必要は無い、とは言った。だが、『下手なままで構わない』とは言ってない。

 響先輩からギターを教わり、本番に備えるとは言っていた。だが、俺らは未だに日高のギターがどこまで進歩しているかを知らない。

 一度ダメ元で試すのもアリなのか? リスクを配慮して響先輩に同伴してもらえば、少しは課題も見えてくるかも......しれない。


 響先輩の言う通り、2ヶ月という時間が''もう''と思うのか''まだ''と思うのかは俺ら次第だ。

 少しでも余裕を持ちたいなら、''もう2ヶ月''と思った方がいいのかもしれない。


 せめて今週中、予定の合う日があれば、試してみるのも悪くは無いかもな。

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