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俺のドラムは少女のギターに救われた  作者: べるりーふ
第34章
499/572

旋律、優しい音に惹かれて

 +++


 高島琴実、19歳。あと半年経てば20歳。

 音同で唯一バンドを組めていない、可哀相な部員......だってことを私以外の誰かが思ってくれれば、少しは楽になれるわね。

 残念だけど、私がバンドを組めていないことを気に掛けてくれる人なんていないはずよ。だって、どいつもこいつも自分の課題に精一杯で、他の誰かのことを考える余裕なんて無いのだから。


 そんな私も、いつか組めるかもしれないバンドを夢見て、今日も部室に訪れる。


「あれ、琴実?」

「響先輩......」


 バイトは夜からだし、それまでの間は暇で暇で仕方が無いのよ。ベースを持ち込みながら部室で寛いで時間を潰そうと思っていたのに、先客がいたようね。


「ベースの練習でも、しに来たの?」

「いえ、暇を持て余していたので......」

「そうなんだ」

「......」


 響先輩はどういった意図があって部室に来ているのかしらね。部長だから、部室の様子くらいは見ておかないといけない、くらいの気持ちがあるのかしらね。

 まあ、数十分くらいはベースに時間を使おうとは思っていたけどね。


 ふと、響先輩が隅に置かれたアコギを手にして、適当なフレーズを弾き出した。

 部室に行けば、誰かと出会える。その出会いが、瞬発的なものなのか、永続的なものなのか、状況によって変わっていくと思うけど、今の私は音楽の新たな出会いに遭遇しているのかもしれないわね。


「......」


 響先輩のアコギ演奏......。今まで真剣に聴いたことはなかったけど、優しい旋律が響き渡っていることは伝わってくる......。

 何なのかしらね、響先輩からしたらただの練習に過ぎないのかもしれないけど、聴けば聴くほど魅了されていくような......。


「あの、響先輩?」

「何?」

「もし良かったら、私のベースを今の曲と合わせても良いですか?」


 勢いで放った言葉だってことはわかっている。どんな形でもいいからバンドを組むこと望んでいたから、相手なんて誰でも良かった。何も考えていなかった。

 私は居場所が欲しかった。元々そんなものは得られていたはずなのに、勝手に孤独を感じていた。


「......合わせる分なら、問題無いよ」


 響先輩の返答は、私にとって納得の行くものだった。

 どうせ言うなら、合わせ終わった後で良いわよね。

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