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俺のドラムは少女のギターに救われた  作者: べるりーふ
第34章
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貸出、ライブハウスにて


「えっ......? 今回もあの体育館でやるの......?」

「まあな、もう予約は済ませてきた」

「そうなんだ......」


 バス停で結羽歌と合流し、午前中の出来事を話した。XYLOに着いたらオーナーにも伝えるのだし、このタイミングで結羽歌に言うのも問題はないはずだ。


「やっぱり、私達が初めてライブした場所だもん。もう一度あそこで演奏したいな、って思っててね!」

「......」


 音琶も続けて結羽歌に意見を述べたが、結羽歌の表情は少し複雑なものになっていた。


「まあ、あんな広い場所を選んだ以上、より一層集客に力入れとかないといけないけどな」

「そう、だね......。上手くいくかな......?」

「結果が出る前から不安になっちゃダメだよ? みんなで頑張れば、きっと上手く行くよ!」

「うん......、私も、音琶ちゃん達の力になれるように、頑張るね」

「......」


 やはりハードルは高かったか......? 最初からいきなり高い壁に挑戦している、ということは承知だ。だけど、俺や音琶、勿論結羽歌も、半端な気持ちで音楽に臨んでなんかいない。

 無謀な話ではない、と信じている。最初から不安になったところで、良い結果はやってこないものなのだからな。


 ・・・・・・・・・


「何? 機材貸して欲しい!?」

「はい、7月に音同でライブすることになったんで」

「へえ......、ホントに夏音は何言い出すか分かんないよね......」

「何言ってるんですか、本気の人に対する返答とは思えませんけど」

「いやいや......、まさかあの音同が、って思うと流石にね」

「......」


 XYLOに着き、適当な時間帯を使ってオーナーに事の顛末を簡単に説明した。それに対する反応は、呆れと言うのか、驚愕というのか、何ともまあ、狐につままれたような顔になっていた。

 全く、そんなに音同が単独でライブをすることが意外なのかよ。本当に今まであのサークルは何をしてきたと言うのだか......。


「......それで、何借りたいの?」

「ギター用とベース用のマイク、シールド15本程、あとマルチボックスです」

「ドラムのマイクは?」

「俺の電子ドラム使うんで、実際の所アンプあれば大丈夫です」

「そのアンプはちゃんと確保出来るの?」

「個人的に持ってる人もいますし、最悪実家から取り寄せるくらいは出来ます」

「ミキサーとか照明はどうするの?」

「体育館の設備を使ってどうにかします」

「なるほどね......」


 腕を組みながら考え込むオーナー。大変な作業が予想されるから、上手く行くかどうかについて不安視しているのだろうか。

 取りあえず、ここはかなりの機材を確保しているのだし、全く借りられないなんてことにはならないはずだ。一例を除いてはだが......。


「ちょっと待ってて」


 そう言い残し、オーナーは奥の部屋へと消えていった。


 それから数分後、書類を片手にオーナーは再び姿を現し、俺にこう伝えた。


「夏音が指定した日なんだけど、土曜だから当然ライブがあるわけよ。一応演者の人達に事情は伝えるけどさ、ライブの内容次第では貸せないものも出てくるかもしれないから、そこんとこよろしくね。何か分かり次第私から連絡するから」

「......はい、わかりました」


 ......流石に全てが上手く行くとは限らないか。だけどこれくらい想定内だ、もし借りられない機材があれば、他のライブハウスに連絡すればいいだけの話だし、最悪貯金で機材を購入する、という奥の手を使うのも有りだ。

 何はともあれ、ライブを成功させるには出来る限りのことを最低限成し遂げないと、始めたいことも始まらない。

 壁にぶち当たったら、次は何を修正すればいいのか。想定外の事態も想定しておけば、最善策さえも現実のものに出来るはずだ。


「そろそろ作業に戻らないと。この話は後日LINEでもいいから、進捗の報告くらいはお願いね」

「もし相談とかがあったら、聞くかもしれないです」

「そこんとこは大丈夫、返信送れても怒っちゃダメだから」

「俺その程度のことでキレるような短気じゃないですから」

「はいはい」


 適当なやり取りをして作業に戻ろうとすると、最後にオーナーが小さく俺に呟いてきた。



「......世の中そんなに、甘くないよ」



 そんなことくらい、分かっての上で行動しているんだよ。

 世の中が甘くないことくらい、19年以上生きてきて嫌になるほど痛感してきたことだ。


 今更言われても、俺にはそんな言葉響かねえよ。

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