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俺のドラムは少女のギターに救われた  作者: べるりーふ
第33章
484/572

写真、載せてる数以上の思い出を

 ***


 5月4日


 午後から診察の予約は取ってある。音琶の病態を知る日に入ってしまったが、緊張したところで現実は変わらないだろう。

 俺は今でも音琶の最期が近づいていることを信じてない。まだまだ果たしていない約束があるのだから、叶うまでは絶対に音琶を死なせたりはしない。

 不可能だと誰かが言うかもしれないが、俺は不可能だと思ってないのだから、このまま正しいと思っている道を貫く。そう決めた。

 そのためにも、まずは音琶の状態を把握しておく必要がある。結果次第でどうするか、音琶の意思はどうなのか。全てを繋げてから次の行動へと進んでいく予定だ。


 だが、結果次第では、バンドメンバーに音琶の真実を伝えないといけないことになるかもしれない。

 いや、バンドメンバーだけでなく、サークル全体に......。いつかは知ってもらわないと、いけないことになるかも、な。


 一つの可能性が脳を過ぎったその時、音琶が呑気な声で俺に話しかけてきた。


「ねえ夏音~、昨日からLINEの通知が止まらないんだけど~」

「......それは俺も同じだろ」

「みんなが羨ましいよ~......」


 昨日は結羽歌達がドライブに出かけていたから、サークルのグループLINEが写真の送り合いになっていたわけだ。

 車内でカメラ目線になっている写真や飯の写真、中には隠し撮りとも取れる写真も入っていた。その全てがかけがえのない思い出に見えなくもなくて、行けなかったことを残念に思ってしまう自分が居た。

 音琶も相当行きたがっていたからな、次こそは必ず、絶対に、何が何でも行ってやりたい。


「......大丈夫だ、次に行く時は、俺もお前も絶対に一緒だ。結羽歌達が載せてる数以上の写真撮って、LINEのアルバム埋め尽くしてしまおうか」

「う、うん......!」


 音琶の表情には不安も残っている。だけど、希望を捨てているわけではない。


「......早いとこ受けちまって、これからどうするかしっかり話し合おうか」


 簡単な問いかけだったが、音琶は無言で頷くだけだった。

 無理も無い......よな。だが、俺だって似たような気持ちを抱いているのだ。


 俺とお前は一心同体。音琶にそう言った。

 数分の時間さえ惜しいくらいだ。だが、現実を避けることは出来ない。

 決めた事は、最後まで成し遂げないといけないのだ。


「俺が付いてる。だから、そんな暗い顔するな」


 俯きがちな音琶を優しく抱き寄せ、耳元で囁いた。

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