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俺のドラムは少女のギターに救われた  作者: べるりーふ
第32章
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一次会では終わらない

 それからは何回か席替えがあって、日高君と同じ車でドライブ出来たのは1回きりだったけど、他の誰との時間よりも楽しく感じることが出来た。

 空がオレンジ色になる頃には最初に集まった駐車場へと向かっていて、私が本音を伝える時が刻一刻と迫っていた。


 ドライブ中に告白なんかしたらメンタルが持つ自信ないし、運転手の役割を忘れてしまうんじゃないかって思ったから、全て終わった後に日高君を呼び出すことにした。

 予め琴実ちゃんには伝えているし、ただ見守ってくれればそれでいい、ってことも言った。だから、車を降りて、タイミングを掴んだら日高君に......。


「今日は集まってくれてありがとうございました......! また何か思いついたら連絡しようと思ってるので、楽しみにしてて下さい......!」


 やがて駐車場に辿り着き、車を降りたら参加者全員が輪になって集まり、琴実ちゃんの合図で解散になる。全員がそれぞれの方向に動き出しそうになった所を見計らい、日高君を呼び止めようとする。

 その時......、



「あ、えっと! 誰か私の家で二次会しませんか? 折角の連休なんだし、まだ遊び足りないなーって思って!」



 みんな帰る場所に向かおうとしていたけど、利華先輩の声によって事態は変わる。足は元の位置に戻り、利華先輩に注意が向けられて、参加したい人は次々に発言する。


「いいね!」

「まだ時間も早いし、このまま終わるのは勿体ないですもんね!」


 静司先輩と千弦ちゃんは乗り気みたいだった。私はどうしたらいいか分からず戸惑っていたけど、こういうときは一旦参加の意を伝えた方がいいのかな......?


「ちょっと、どうするのよ」

「そんなこと言われても......」


 突然の事態に困惑していると、琴実ちゃんが耳打ちしてきた。何か良い方法は......、


「あ! そしたら私、買い出し行ってきます! ほら千弦、あんたも!」

「へっ!? 私?」


 まるで思いついたかのように琴実ちゃんが言い出し、千弦ちゃんを巻き込もうとする。


「そうよ、ここは後輩が出るところでしょ?」

「それだったら、結羽歌や日高君も当てはまると思うけど?」

「結羽歌は車返さないといけないし、女子1人だと心配だから男手一つくらいあった方がいいのよ」

「は~い」


 あまりにも都合の良すぎる展開だったけど、また琴実ちゃんに助けられちゃったかな......。


「先輩達は先に行ってて下さい......! 欲しいものあったらLINE送ってくれれば買いに行きます!」

「お、琴実気が効くね~。そしたらうちらは先行ってるよ~」

「お願いしまーす」


 先輩2人と一度分かれ、私達2年生も買い出し組と車の返却組に分かれた。私があんな事情を抱えていなければ日高君は千弦ちゃんと買い出しに行ってたんだろうな......。


「ほら、上手いことやってやったんだから、頑張りなさいよね」

「うん......、ありがと......」


 再び耳打ちをしてくる琴実ちゃん。遂に状況が整って、私の覚悟が試される時がやってきた。

 日高君と二人きりになって、再び車に乗る。レンタカーショップはそこまで遠くないし、歩いても15分程度の距離......。

 車を返して、利華先輩の家に向かう間に言おう......!


「......なあ結羽歌。高島の奴、やけに焦ってなかったか?」


 車を走らせている途中、助手席で不意に日高君が言い出した。

 そりゃ......、唐突な出来事だったから、焦るのも無理はないよ......。でも、日高君に怪しまれちゃったら、この後の告白と辻褄が合っちゃいそうで、怖い。


「そ、そうかな......? 琴実ちゃんは、いつもあんな感じだと思うけど......」


 平静を装って返事をする。前を見ているから日高君の顔は見えない。


「......ま、気のせいだよな」


 少し間があったけど、日高君も納得したように返事をした。


 それから車を返して、無事に延長料金も払うことなく済んだ所で利華先輩の家へと向かう。


「にしても、久しぶりに車に乗った感じがして、楽しかったな」

「うん......。私も運転、緊張したけど、楽しかった......」

「また企画してくれよ。絶対に行くからさ」

「企画したのは、琴実ちゃんだよ......?」


 日高君と肩を並べて歩きながら、他愛のない話に花を咲かせる。


 ......あれ? なんで日高君は、私が企画かのように話して......、



「......なあ、結羽歌」



 不意に日高君が立ち止まり、真剣な顔になって私の目をじっと見つめてくる。

 あれ......? 一体何を......。



「俺に何か、言いたいこと、あったんじゃないのか?」



 ...............。

 一瞬、私の中の時間が停止する。突然、真面目な顔、真面目な声になった日高君の視線は、真っ直ぐに私の目を捉えていた。


「えっと......、えっと......!」


 頭の中がぐちゃぐちゃになって、心臓が破れそうになって、言おうとしていた言葉がなかなか出てこない。でも、日高君の質問は、私の発言を拒んでなんかいない。

 言いたいことがあるなら、はっきり言って欲しい。そんな意味を込めた質問に違いない。だから.....、



「あっ......あのね! 私......!」



 最後の力を振り絞るように、私は今まで溜めていた想いを、爆発させた。

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