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俺のドラムは少女のギターに救われた  作者: べるりーふ
第32章
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ドライブ、企画者と先輩

 結局私は、結羽歌の車に乗ることになった。運は良かったのかしらね。


「私は.....っと! 結羽歌の車だね、よろしく~」


 割り箸を見つめながらこっちに向かってきたのは利華先輩だった。音同で唯一活動が出来ているバンド、LAST EMERGENCYのギターボーカル担当......。

 音同の先輩達との関係......、軽音部の時に響先輩と少し言葉を交わした程度だし、後輩の私が先輩に怖じ気づいてどうする、ここは音同で軽音部なんかとは全然違うのだから。


「よ、よろしくお願いします......!」


 緊張しながらも先輩に挨拶をする結羽歌。目線が下がっていて相変わらずだけど、これから長時間運転するんだから無理も無いかしらね。


「あー、利華先輩。一応結羽歌、まともに運転するの今日が初めてなので、その......」


 あ、やばいわね。次に出てくる言葉がなかなか出てこない......。去年軽音で脅されたこともあってか、先輩とどうやって話せば良いのか分かんなくなってきているわね......。

 普段は同期としか話していないのだし、年上の人に苦手意識を持つのは仕方無いかもしれないけど、企画者がこんなんじゃダメよ......。


「琴実も肩の力抜きなよ」

「えっ......?」


 言葉に戸惑っていると利華先輩の手が私の頭に置かれ、緊張の糸が解ける。


「ドライブ、企画してくれてありがとね。うちのサークル部員少ないからさ、休日にどこか行くなんてこと、なかなか無かったんだ」

「そ、そうだったんですね」

「もしかしたら今後、琴実はサークルの在り方を大きく変えてくれるかもね」

「......」


 サークルの在り方......って一体何なのかしらね。幽霊部員ばかりで満足のいく活動はそんなに出来ていない。

 だけど、今年は部員が増えて、バンドだって一つ結成された。音楽以外にも打ち込めることがこのサークルにあるのなら......。


「べ、別にそういうのを狙って企画したわけじゃないんですから......! 今回はただ......」


 素直に『頑張ります』って言わなきゃいけない場面なのに、恥ずかしくなってしまった。私はいつもこうなのよ、言いたいことをはっきり言えなくて、時間が経ってから後悔する......。


「ふふっ、詳しい話はまた車の中で、結羽歌も入れて3人でガールズトークしようね」

「は......、はい......」

「そう言えば席どうする? 私か琴実のどっちか助手席に乗った方がいいよね?」

「えっと......」

「琴実が選んでもいいけど、もし迷ってる感じだったら、私が先に乗っちゃうけどいい?」

「い、いえ! 私結羽歌が少し心配なんで、助手席乗ります......!」

「そっか、結羽歌のサポート頼んだよ」


 そう良いながら後ろの扉を開け、席に乗り込む利華先輩。私も後に続き、助手席に乗る。


「あ、琴実ちゃん助手席なんだ。色々、よろしくね」

「ちゃんと安全運転するのよ。いや、あんたは逆に安全過ぎて危なっかしいくらいね」


 結羽歌とならこうしてまともに話せるのに、ね。後ろの利華先輩は、今の私と結羽歌の会話を聞いて、どう思ったかしらね......。同じ部員なのに距離を感じられて、さっきみたいに優しくしてくれなくなったり......なんて。


「大丈夫、法定速度も、交通ルールも、ちゃんと復習してきたから......」


 どうやら運転に関しては心配要らないみたいね。1番心配なのは、企画者である私が、ちゃんと部員を引っ張っていけるのか、よね。


「相変わらず真面目すぎるのよ、あんたは......」

「えっ? 琴実ちゃん、今なんか言った......?」

「別に、何も言ってないわよ」


 思っていたことが口に出ていたみたいね。そんなことしている内に車は発進して、どう転ぶかも分からないイベントが幕を開けた。

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