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俺のドラムは少女のギターに救われた  作者: べるりーふ
第32章
478/572

ドライブ、少し危なっかしい

 +++


 5月3日


 ついに来てしまったわね、この日が。

 5月には程遠いほどの晴天、気温も平均より高く、ドライブには最適すぎるくらいよ。いや、結羽歌にとってはドライブより告白の方がメインなのかしらね......?


「ねえ結羽歌、本当にこれで満足なのよね?」

「えっと......」

「チキってやっぱ無理とか言うんじゃないわよ。告ることで吹っ切れられるんなら、最後までやり切りなさいよね」


 集合時間は10時。その前にレンタカーを借り、結羽歌の運転で大学の駐車場に向かう。私は助手席に座り、ぎこちない動きでハンドルを操作する彼女に問う。

 私も、高校時代に恋愛事情で苦い想いをした。だから結羽歌の気持ちはよく分かる。去年は一度気持ちを切り替えたかのように見えたけど、音同に入って同じ部員になってから......いや、ベース勝負の結果と、千弦の入部が重なって、複雑な感情が新たに芽生えてしまったのよね。

 成し遂げたいことが出来ないままだと、一度回復してもいつか必ず再発してしまう。辛いことを乗り越えるためには、時に失敗することも必要のようね。


「......大丈夫。もう、覚悟決めてるから......」


 前を見ているからはっきりと表情は読めないけど、即座に返答する当たり迷いはなさそうね。

 結羽歌の気持ちに気づけない奴をびっくりさせてやりなさい。告白のタイミングは全て結羽歌に任せるけど、結羽歌ならきっとやり遂げるに決まってるわよ。


 駐車場まで事故無く辿り着き、車を降りる。静司先輩も車を出してくれるって言ってたけど、もうこっちに来ているかしらね? まだ15分ほど時間あるし、別にちょっとくらい遅れたって構わないし、気長に待つのも悪くないわね。


 今日の参加者は全部で6人だから、車一台につき3人が乗ることになる。班分けは公平にくじ引きにしようと思っているけど、ちゃんと会話が成り立つといいわね。バンドマンって拘りが強いから、気の合わない人とはほとんど言葉が通じなかったりするし、車内が沈黙で溢れかえったりしないことを願うばかりよ。

 そう思っている内に、次々と部員が集合していく。日高は時間内に来たし、他の部員も数分の遅れはあったけど、ちゃんとここに来てくれた。


「......みんな集まったわね。そしたら、班分けするわよ」


 全員が集まったことが確認出来たら、端っこに番号が書いてある割り箸を用意する。ドライブを企画したのは私なんだから、これくらいの準備はしっかり出来てるのよ。


「......」


 結羽歌が割り箸を見つめながら真剣な表情をしている。あんたは運転する係なんだから、メンバーよりも自分の技術を心配しなさい。運転、割と危なっかしかったわよ。


「えっと、1番は静司先輩の車、2番は結羽歌の車に乗って下さい。全員乗ったら出発するんで!」


 昔からリーダーシップがある方だとは思わないけど、こうして一つの集団を仕切るのは楽しいわね。これも私にとっての成長過程になるのかしらね。

 何はともあれ、音同による一大イベントが始まったわけだけど......、最後まで全員が『楽しかった』と言えるような思い出にしたいわね。

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