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俺のドラムは少女のギターに救われた  作者: べるりーふ
第32章
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傷跡、隠れていた場所

 高島琴実:5月3日が1番集まれそうなので、ドライブはその日にします! 車は結羽歌と静司先輩、よろしくお願いします! 今回参加出来ない人も、また次の機会に何か企画します。


 1番人が集まれる日は3日、ということになった。

 今更バイトは断れないし、今回は見送りか......。残念だが仕方無い。


「予定、合わなかったね......」

「まあ、次があるだろ」

「そうだったら、いいんだけど......」


 音琶にとって、一つの好機を逃すことは多大な損失になる。次があっても、その時に音琶の身体がどうなっているかもわからないし、何も知らない奴らが楽しんでいることを想像するのは、少し辛い。


「なあ音琶」

「ん? どうしたの?」

「病院行く前に、一度確かめておきたいことがあってだな」

「えっ?」


 音琶に注意を向けさせ、視線を合わせる。

 どうせ音琶のことだから俺に心配掛けないために、良くない結果が出たら誤魔化すだろう。それに、病名を伏せられているにしても、今までどのような治療を受けてきたかは分かっているのだから、自分の病気についてある程度の知識があっても不思議ではない。


 ついさっき思い出した、音琶の身体で唯一色が違う部分......。

 それを確かめるために、純真無垢な少女をベッドに押し倒した。


「......!? え、何......? ちょっと、どうしたの!?」

「音琶、すまん」


 想定外の俺の行動に驚き、大きく目を見開く音琶。乱暴に扱うつもりは無いが、流石の音琶も身構えてしまったようだ。

 申し訳ないことをしてはいるが、手っ取り早く真実を知るにはこれが最適だと思ったのだ。だから、容赦なく行かせてもらう。


「......!?!?!?」


 音琶の上着を胸の上まで上げていき、ブラのホックを外す。端から見ても充分大きいが、支えるものを失うと想像以上のものがある、ということを改めて実感させられる。

 緊張しているのか、臍周りが上下に動いていて何とも嫌らしい。


「な......、夏音? まだ夜になってないのに、どうしたの!? いきなりしたくなっちゃったの?」

「そうじゃねえよ、少し確かめたいことがあるだけだ」

「そ、そうなんだ......」


 脱がされた瞬間は動揺していたが、すぐに落ち着いたようだ。俺の前では裸を見せることに抵抗が無い音琶のことだ、気になっている箇所を見せることを恐れてはいないようにも見える。


「えっと、何を確かめたいの?」

「......」


 右手で音琶の大きな胸を持ち上げ、下乳の隙間の部分を露わにした。

 そこにあったのは......、


「......やっぱりか」

「な、何が......?」


 やはり記憶違いではなかったようだ。そこにはうっすらと横に赤みを帯びた線が刻まれていた。

 だから、迷わず問う。この線が一体何なのかを。



「お前、心臓が悪いんだろ?」



 この線は間違いなく手術痕だ。いつ受けたのかまでは考察出来ないが、音琶の病気は心臓から来るもので、この痕は大きな胸によって運良く隠されていたのだ。


「どうして......」


 今の音琶の言葉の意味は何通りか考えられるから特に深追いはしない。だが、具体的な病名を知らなくても、どこが悪いのかについては自分の経験で察すことは容易だ。

 音琶は今まで何の疑いもなく俺に身体を見せつけてきた。きっと、この痕を見つけて欲しかったのだろう。『どうして』という言葉の続きは、『今まで、この傷について何も言ってくれなかったの?』かもしれないな。


「違和感は感じていた。だけど、勝手に現実逃避していただけ、かもしれないな」

「......」


 身体の状態次第では、今後も手術を受けることになるかもしれない。悪い方向に進んでしまったら、バンドの話はお蔵入りになってしまう可能性だってある。


「......怖い」


 数秒間黙っていた音琶だったが、小さくか細い声で言葉を発する。


「病院行くの......、本当は凄い怖い......」


 涙を浮かべながら、恐怖に怯える音琶だったが、俺は迷うこと無く彼女を抱きしめる。


「俺が居るから大丈夫だって言っただろ」


 なかなか落ち着かない様子の音琶。ならば俺自身が音琶の薬となって、元通りになるまで側に居てやる。

 これから先もっと大変になっていく。だけど、音琶を守るためなら、何だって出来るさ。

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