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俺のドラムは少女のギターに救われた  作者: べるりーふ
第32章
476/572

詰寄、避けていた場所

 ***


 ゴールデンウィーク初日、学校もなく、バイトも無い、そんな退屈な日。

 特に予定も無く、ただ部屋でくつろいで過ごそうと思っていたが、休日の活用法をLINEで知らしめられることとなった。


 高島琴実:5月2日から6日のどこか使ってみんなでドライブでもしませんか? 結羽歌免許持ってるので、運転してくれるみたいですけど......。


 突如サークルのグループLINEに通知が届いた。

 まさか琴実からこんな話が出てくるとは思わなかったが、些細なことでもサークルの為になるように考えているってことで良いのだろうか。こういう誘いは本来先輩から吹っかけるべきだとは思わなくもないが、少しでも部員との親睦が深められるのなら是非参加したい所だ。


「なあ音琶、誘い乗るか?」

「うん、でも行けるとしたら......」


 今日が終われば次の休みは5月2日から6日の5日間、2日と3日はバイトを入れているし、6日は授業の前日だから特に何もせずゆっくりしていたい。

 それに4日は......、


「5日しか......、ないよね?」

「まあ、そうだな」


 5月4日......。その日は、音琶と病院に行く日......。

 場合によっては音琶の運命が決まりかねないわけで、結果によっては今後の予定が白紙になってもおかしくない。

 だけど、音琶には長く生きて欲しいし、もっと沢山の思い出を作っていきたい。


 何も知らないままよりは、何か少しでも知っておいた方が今後のためだと思うし、もしかしたらそれなりに良い結果が得られるかもしれない。


 今はまだ音琶は元気だし、出逢った頃と大きな変化は感じられない。

 だからこれはチャンスなのかもしれない。元気な内に病院に行った方が病状を抑制する手段は得やすいに決まっている。


「......怖いのか?」

「そりゃ......、怖いよ。だって、ずっと避けてたんだもん......」

「......」


 実際の所、音琶の病気については詳しく知らされていない。というより、音琶自身もよく分かっていない。

 余命の話は知らされているものの、病名告知はされていないと言う。音琶自身が告知を拒否したのが原因だ。

 自分の身体が普通の人と違うことを認めたくない。自分はただ、普通に生きていたい。だから病院を避け続け、痛みに耐えながら外の世界に出ていた。


 6日後、病院に行くことで自分の新たな情報が手に入る。それが地獄の始まりになるかもしれないが、音琶は受け入れた。

 今、音琶の身体はどうなっているのか。見た目からは想像も付かないような地獄絵図が展開されているのか、それとも落ち着いているのか......。


 そもそも音琶の病気は何なのか......。

 激しい運動が出来ない、意識混濁、精神安定剤、生まれつきの病気、年を重ねる毎に増えているかもしれない寿命......。


 ''生きたい''と思う強い意志......。


 癌も考察には入れていたが、恐らく違うだろう。だとすれば身体のどこかに腫瘍が出来ていて、転移を繰り返している......? 15歳までほとんど病院で過ごしていたのなら、何度か手術はしている......? 目立った傷跡は無かったような......。

 ......いや、普段は隠れているから分かりにくいが、1箇所だけうっすらと色が違う部分を見たことがある。どうやら巨乳が功を奏しているということか。


「夏音......?」

「......あ」


 床を見ながら考え事をしていると、音琶が顔を覗き込むようにして名前を呼んできた。


「今考えてたって仕様がないよ。結果が出てから2人で色々考えようよ」

「......そうだな」


 一瞬だけでも胸のことを考えていたが、音琶は気づいていない様子だった。

 だが、今の一瞬の考察によって、少しだけでも希望が見えてきたかもしれない。治らない病気に変わりはないとしても、考察が正しければ、そして治療が上手く行けば、まだ長く生きられる可能性は秘めている。


「ね、早く返信しようよ! 5日なら行けるって!」


 さっきまでの追い詰められた表情はどこへ行ったのか、すっかりいつも通りになった少女は、グループLINEの返信を催促していた。


 ......元気なのはいいけど、あまり無理するなよ。

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