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俺のドラムは少女のギターに救われた  作者: べるりーふ
第32章
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作戦、サークルを巻き込んで

 4月29日


 今日は水曜日だけど、ゴールデンウィークの初日だから学校はない。明日明後日にまた授業を受けて、それから5日間の休日を迎えることになる。


 昨日バーで話した結羽歌との作戦はこうだ。

 5月2日から6日のどこかを使って、ドライブに行く。メンバーは音同の部員が対象、一応体験入部期間は終わっている時期だし、部員の親睦を深めるためにも何かしらのイベントはあった方がいい。

 サークルの事情も踏まえての企画ならみんなも乗ってくると思うし、結羽歌が日高と二人きりになる場面を作れば告白は実行できるはず。


 運転は勿論結羽歌にしてもらうけど、何人参加してくれるかが問題よね。5人くらいなら1台で大丈夫だと思うけど......。それに日高が承諾してくれる保障もない。

 まずはグループLINEで話を振っておかないといけないわね。


「上手く、いくかな......?」

「みんなが乗り気ならきっと大丈夫よ」


 2人してスマホと睨めっこするように画面を直視し、どんな文章にするか考える。


 高島琴実:5月2日から6日のどこか使ってみんなでドライブでもしませんか? 結羽歌免許持ってるので、運転してくれるみたいですけど......。


 取りあえず適当な文章を打って、一応結羽歌にも送信して良いか尋ねる。画面を見た結羽歌は小さく頷いたから、迷わず送信ボタンを押した。


「あとは、これで日高が行くって言ってくれればいいんだけど」

「うん......。あの、琴実ちゃん......」

「何よ」

「いつも、ありがと......」


 やや俯き気味になりながら結羽歌がお礼を言ってきた。申し訳ないとでも思っているのかしらね、こんなの謝るまでのことじゃないわよ。

 私だって、結羽歌とドライブ行きたかったんだし......。


「礼には及ばないわよ。あんたは自分の役目をしっかり遂げなさいよね」

「うん......!」


 高校時代、私は、結羽歌が私以外の人と話している所をほとんど見ていない。

 そんな結羽歌が、新しい出会いを経て色々な人と繋がっている。

 そして、自分の本音を、我儘を、たった1人の男の子に向けてぶつけようと考えている。


 全く、いつからあんたはここまで強くなったのよ。その強さがあるからこそ、音琶と夏音はあんたをベーシストとして迎え入れたのよ。

 私にはその強さが足りてない。もっと強くならないと、結羽歌には勝てない......。


「あとは返信待つだけね」


 これで結羽歌の気持ちが落ち着いて、ベースに気持ちを傾けることが出来れば、完璧よ。


 ・・・・・・・・・


 最初の返信が来るまで10分も掛からなかった。


 滝上夏音:5日なら行ける

 上川音琶:私も5日で~!

 宮戸響:まさか後輩からこんな誘い受けるとはね。研究室もあるから、出来れば土日のどっちかがいいかな


 早速3人からレスが届いた。全員乗り気だけど、バカップルの2人と響先輩の予定からしたら全員参加は難しそうね......。

 あとは先輩3人と、日高。そして、日高の彼女の立川千弦......。残り5人......、いや、日高の返信に掛かっていると言っても良い。


「もし6人以上行ける感じだったら、車は2台必要よね。先輩達の誰かは免許持ってそうだけど、どうかしらね」

「多分......、誰か1人は絶対持ってると思うよ? ライブハウスまでの交通機関って、車が1番使いやすいから......」

「そう言えば、軽音部の時にそんな話あったわね」


 結羽歌の免許がどうとか言ってた時にそんな話出てたわね、去年の夏頃だったかしら?


 留魅:私も研究あるからな~......、今回は行けないかな~

 高岡利華:行きたい!

 船見静司:俺も土日がいいかな、車出せるよ。


 間もなく響先輩以外の先輩達からも返信が来た。留魅先輩は研究忙しいのかしらね、ゴールデンウィークに休めない研究室は出来るだけ行きたくないわね。

 そして......、


 立川千弦:結羽歌運転してくれんの!? めっちゃ行きたい! ってかいつでも大丈夫だよ~!



 日高奏:折角の連休だもんな、俺もいつでも大丈夫




「琴実ちゃん......!」


 日高からの返信が来た途端、結羽歌は身体を震わせて喜びを露わにしていた。


「......良かったわね」


 ......私は素直に喜べなかった。今更何をって話だけど、やっぱり大切な人が傷つく所を見たいとは思わない。

 でも、それが避けて通れない道なら、傷つくことも免れない。結羽歌がそれでいいと言うのなら、傷つくことで吹っ切れられるのなら、私はこれ以上口出ししない。


 だって、結羽歌は強いもの。傷つくことを避けて閉じこもるくらいなら、傷ついて気持ちを切り替えた方が良いって思ってるはずよ。


「私......、頑張るよ......!」


 覚悟を決めた表情で自分の気持ちに向き合おうとする姿は、逞しく見えた。私には到底持てない強い心......、正直あんたが羨ましいわよ。


 何はともあれ、事が上手く行くことを願うわよ。上手く行かせるために、私も全力で協力しないといけないわね。

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