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俺のドラムは少女のギターに救われた  作者: べるりーふ
第32章
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新参、バッキングとボーカル

 4月27日


 明後日からゴールデンウィークが始まる。今年は最大5連休があるし、折角サークルも変えたのだから、部員同士でどこかへ出かけてもいいのではないかと思っているのだが、休日を手にする前にある程度は片付けておかなければならない出来事が起こっていた。


「何がどうなったらこうなったのか......と言いたいな」

「うん......」


 結羽歌と立川には部室に来てもらう前に簡単な事情は説明してあるし、昨日の日高のことだって忘れていない。授業が終わり、部室で黄昏れる俺と音琶。そして、ホワイトボード前で何か話し合っている日高、結羽歌、そして立川のお三方。

 とんでもない三角関係がすぐ目の前に映っているのだが、今のところ揉め合っている様子は窺えない。だが、いざバンドについて話し合うことになれば、良くない方向に転んでも不思議ではない。


「ねえ、日高君は結羽歌の気持ちとか、気づいてないんだよね?」

「あれは気づいてねえな。あいつバカだから」

「うーん......。千弦は何となく察しているようには見えるけど、そこが問題だよね......」

「正直なところ、バンド内恋愛とやらでメンバー仲が拗れるのだけは勘弁だな」


 結羽歌が軽音部を辞めた理由の一つは、日高だ。琴実にプレッシャーを掛けられたり、そもそもサークルのやり方に付いていけなかったのもあるが、普段仲良く接している人同士で三角関係になるだなんて、結羽歌からしたら複雑以外の何物でもない。

 琴実曰く、告白すら出来ずに諦めたという話も聞いた。まあ今告ったところで100%振られるけど、言いたいことが言えないままだと気持ちの整理が出来ないのだろう。振られることで吹っ切れて、別の恋を探すきっかけにもなるかもしれない。

 一度は学校にまで行けなくなりかけていた。それでもベースに駆ける想いがあるというのなら、早いとこ蹴りを付けるべきだとは思うけどな。


 ......不器用で頑固な結羽歌のことだし、そうそう上手くいくとは思えないが、片思いで散った一人の男のことなんかよりも、自分が掲げた目標に目を向けて欲しいものだ。


 ・・・・・・・・・


「それで、だ。日高の現段階の実力はどれくらいなんだよ」

「あー、えっとだな......」


 一応日高には響先輩から借りたというギターを見てもらうことになった。いかにも使い古した安めのFenderで、恐らくこれは響先輩がギターを始めたばかりの頃のものだろう。

 所々傷があるのはそれだけ練習してきた証拠だし、あの人がいかに地道に頑張ってきたかが伝わってくる。そんな思い入れの深そうなギターを日高に貸したみたいだが、果たして日高の実力の程は......、


「.........」

「.........」


 聞いてみたはいいものの、ワンパターンのコード進行がブレまくっているわネックを抑える左手の指に力が入りすぎてるわでいかにも弾き辛そうだった。

 何て言うか、必死なのは伝わってくるが、初心者の中でも稀に見るタイプの崩壊具合だった。


 まあ、ギターに触れて1ヶ月どころか2週間も経ってないだろうし、ゴールデンウィークを使って上手いとこ練習しておけば、簡単な曲のバッキングくらいなら出来なくはないはずだ。いや、出来て貰わないと困るけども。後は先輩や音琶に練習頼りまくるしかないか。


「えっと、日高君はリードじゃなくて大丈夫。やっぱり初心者には荷が重すぎるよね~」


 音琶が笑いを堪えながら言ってやがる。おいお前、さっきまで結羽歌のこと心配している様な感じだったのに、このままだと本当に立川がボーカルとしてバンドに入ることになるぞ。

 別に立川が入ることは反対じゃねえけど、バンド間の人間関係を複雑にはしたくないから困ってんだよ俺は。


「あー、やっぱそうだよな。正直コード覚えるのですら一苦労なのに、リードなんてやってられないかな~」


 日高が乗ってしまった。まあいい、結羽歌と立川の反応が気になる所だが......。


「別に......、音琶ちゃんがリードで、日高君がバッキングでもいいんじゃないかな......」

「私もあんまギターとか詳しくないけどさ、あれはちょっと......その......、もっと頑張ろっか!」


 ......何だかんだで承諾か?

 立川に至ってはさっきの日高の演奏に対して引き気味になってるのだが......。


「それに! 私も去年軽音部に入れなかったからさ~。1年越しに、しかも仲良い人達とバンド組めるのは楽しみなんだよね~」

「千弦ちゃん......?」


 結論を出す前に話を進める立川に対し、結羽歌が目を丸くして質問する。


「えっと、どういうこと......?」

「どうも何も、私も日高達とバンドを組むってこと! ここは軽音部と違って、入部時期とかは特に決まってないんでしょ? だったら、折角のチャンスは逃さないよ~」

「......」


 喜ばしいはずなのに、バンドの形が出来上がっていく希望が見えたはずなのに、結羽歌の表情は晴れなかった。


「取りあえず、今週の部会は参加させてもらうから! 部長にはよろしく言っといて~」


 結羽歌の顔色には気づいていないのだろうか。いや、入部するのもバンドに入るのも立川の自由だ。結羽歌が何かを言わない限り、状況は変わらないし何も始まらない。

 誰が悪いとか言う話ではないが、どうもすっきりしない。近いうちにバンド名やら曲やら決めていくことになるが、果たして上手く行くだろうか。


「......これからどうするかね」


 去年よりは確実に事が進んでいる。だが、人間関係というものは、深い所に行けば行くほど、崩壊の可能性を含んでいることが実感させられたのだ。

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