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俺のドラムは少女のギターに救われた  作者: べるりーふ
第31章
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部会、人を集めた意味とは

 4月17日


 この時期はまだ新入生のサークル見学期間となっている。本来ならばガイダンス終わりに1年生が部室を訪れて先輩達と親睦を深めるイベントが発生するはずなのだが、音同の部会では......、


「時間になったから、部会を始めていきます」


 幽霊部員を除いては、集まるべき部員は全員居る。だが、新入生の姿など無かった。


 まあ、今の現状では1年生が音同に入ろうとしないのも無理は無い。一応宣伝用のポスターはサークル用の掲示板に貼られているし、見学出来る時間帯だって設定はしている。

 だが、その時間帯に部室が無人だったことがあったり、キャンパス内を廻ってビラを配ることもしていない。一応俺や音琶は用事が無い限りガイダンス終わりに部室に来ていたが、先輩達が何かをしている場面に遭遇したことはなかった。


 最初から諦めているのか、それとも単にやる気が無いのか。

 ......認めたくないが両者だろう。ポスターだけでは何を拠点に活動しているのかさえ掴めないサークルより、軽音部に入りたいと感じる方が自然だ。そんな1年生達も軽音部の得体の知れない活動内容に絶望していくんだろうけども。


「何か連絡事項がありましたら言って下さい。無かったら解散です」


 そしてわざわざ人を集めた意味が無くなっている。人を部室に集めておいて、連絡事項が一つも無かったら即解散。何か連絡があるから部会というものをするのではないだろうか、数秒で終わる部会なんて聞いたことがない。

 部長という役割を課せられた響先輩だが、どこか億劫そうに見えるし、『連絡事項くらいLINEで伝えればいいじゃん』とでも思っているのか? だとしても計画性が無いと言うか、第一に何がしたくて部会を始めているかが分からない。

 一応、新入生が入ることを想定しての部会ではあったが、歓迎会とやらは開催する予定だったのだろうか。


 そう思っていた時......、


「はい!」


 手を大きく掲げ、威勢の良い声を挙げた奴が居た。日高である。


「あ、どうぞ」


 若干驚いた様子の響先輩だったが、すぐに日高に発言権を渡した。当の日高は何を言い出すのだろうか。


「あのー、俺一応仮入部ってことになりますか? いまいちこのサークルの実態分かってないんですけど......」


 実際俺もまだ音同には1ヶ月しか触れていないのだし、ライブや学祭等のイベントや、長期休暇時のそれぞれの行動、部員同士の飲み会やサークルでの最低限のルールを詳しくは知らない。

 主観的に見てどのような雰囲気のサークルなのかは把握出来ているが、まだまともな活動を音同ではしていないから、今は期待より不安の方が大きい。


「えっと、確か君、月曜日に居たよね? この際だから自己紹介してもらおっか」

「は~い」


 いや判断遅せーよ。見慣れない顔があったらまず始めに部長から率先して自己紹介させるべきだろ。

 まあ、日高がそれで納得するなら特に口出しはしないけどさ。


「日高奏でーす! 滝上と結羽歌とは同じクラスで、音楽に関しては色々話聞いてるんで、これから色々頑張っていきたいと思ってます! あー、あと希望楽器はギターなんて、ギター経験者から教えて貰いたいですね! これからよろしくお願いします!」


 陽キャな日高らしい自己紹介に対して拍手が散らばった。こう言う奴がサークルを盛り上げてくれればいいのだが、音楽が上手ければ上手い奴ほど陰キャ度と変人度が高い(偏見)ので、雰囲気に慣れてくれるか心配でもある。

 まあ、軽音部の時みたいなことにはならないだろうから、まずは少しでもギターに触ってくれればいい。


「あ、ありがとうございます。夏音達と同じってことは2年?」

「はい~、一年生じゃなくて、なんかすいません」

「いやいや、このサークルに興味を持ってくれて俺は嬉しいよ。仮入部期間は部会参加後から1週間だから、その後にどうするかは日高君が決めてね」

「了解ですっ! まあ、先輩も固くならず、これからみんなで頑張っていきますよ!」


 もうこいつに仮入部期間は必要ないのではないだろうか。取りあえず響先輩は日高を音同のグループLINEに招待していた。


「何だかんだで良い方向に進むと思わない?」

「音琶......、それはいくら何でも早まりすぎだ」

「もう、夏音だって日高君が入ってくれたことが嬉しくて飛び跳ねたい気分なんでしょ?」

「どういう気分だよそれ」


 隣で音琶が変な事を囁いてきたが、相変わらずなようで安心した。

 変な掟もないことだし、取りあえず部員が積極的に集まれる時間さえ確保出来れば行動の範囲も拡がるだろう。

 それに俺はもう一年生ではない。多少の権限くらいは強化されているはずだし、響先輩に提案を促しても問題無いだろう。


「えっと、他に何か連絡はありますか?」


 日高との簡単なやり取りが終わり、次の議題を求める響先輩だったが、誰も手を挙げていなかったから解散となり、後は自由行動となった。

 家に帰るも良し、部室で雑談するも良し、飲み会に行くも良し、部会後は自由な時間が与えられていた。


 まあ、俺らには少々話し合わなければいけないことがあるのだけどな。


「琴実、ちょっといいか?」


 後ろに座っていたポニテ少女に声を掛ける。バンドを組むに当たって大事な話をするのだし、折角全員が集まっている時間が設けられたのだから、何もしないで帰るわけにもいかない。


「何よ」

「バンドの件で話しておかなければいけないことがある」

「......奇遇ね、私もあんたらに話したいことがあったのよ」


 音琶と最高のバンド組むために必要なメンバー......、軽い気持ちで選ぶわけにはいかない。

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