大きく変わってしまう未来
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夏音が戻ってくるまでの時間はとても長く感じられた。
最近、あんまり上手く行ってないし、ちょっとしたことですぐにカッとなっちゃったりもしたけれど、それでも私は夏音のことは大好きだし、思い詰めちゃって1人で抱えている夏音を見るのは辛い。
ついさっきだって、本当は私と一緒に部室に行きたかったに違いない。だけど、私を危険な目に遭わせたくないからって言い張って、結局1人で行っちゃった。
1人で待っている間、私は夏音のことが心配で心配で仕方なかったんだよ。何事もなく戻ってきてくれることを願っていたけど、その願いは叶うのかな......?
そう思っているのも束の間、玄関の扉が開いて、待っていた人が姿を現した。
だけど......、
「夏音......?」
戻ってきた夏音の足取りは覚束なくて、目は虚ろ。口から血の痕が付いていて、今にも倒れてしまいそうな弱々しい姿をしていた。
「ど、どうしたの!? 先輩達に呼ばれた後、何かあったの!?」
覇気を感じない夏音の姿を見るだけで涙が出てしまいそうになる。まるであの時のことを思い出させるかのようだったし、私の大切な人が傷つく姿なんてもう二度と見たくない。
怖い、どうしてこんなことになったのかを知るのが怖い。手が震えて、夏音をそっと支えてあげようと思っても上手く動かない。
「音琶......、すまん」
ようやく口を開き、掠れた声を出す夏音。目の焦点が全然合ってなくて、どこか遠くの方を見ているように感じられた。
「俺もお前も......、もうあの場所には行けねえ......。あいつら、もう部室に来んなって......」
とっても大事なことを言っているってことは伝わるけど、今はまず落ち着かせることが最優先だよね? 怪我だってしているし、まずは横になって安静にしないと......!
「わ、わかったから! 今はまず休まないと! それとも病院行った方がいい!?」
「別にこれくらい、大したことねえよ......。金がもったいねえし」
自分がこんなになっているのにお金の心配するなんてどんだけバカなのさ! もっと自分を大事にしてって前から言ってるじゃん! どうして夏音はいつもこうなの!? 何でも1人で抱えようとしないでよ!
言いたいことは沢山あったけど、責めることは出来なかった。夏音が言った通りにした方がいいと思ったから。頑固な夏音は何が何でも大丈夫だって言い張る人だってこと、私がよく知っているから。
「もう、ばか! 落ち着いたらちゃんと話聞かせてよね!」
予定が何も無い退屈なはずの日曜日は、夏音に来た何通ものLINEによって、私達の今後が大きく変わってしまう、そんな日曜日に変わり果てていた。




