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俺のドラムは少女のギターに救われた  作者: べるりーふ
第29章
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興味、音同への意思

 自分から率先して飲み会に参加したことなんて過去にあっただろうか。サークルの飲み会がまだ楽しいものなら良かったのだが、アルハラし放題の現状が覆ることなんてないから、グループLINEでの飲みの誘いは全て既読無視している。

 基本そういった類いの誘いは個人LINEではやらないから、誰が返信早いだとか参加意思があるだとかを分析して点数付けているんだろうな。最初の1ヶ月間、ある程度飲みの雰囲気を観察した結果、需要が何一つ得られないことがわかってからは部会後の飲み会もほとんど言葉を発していない。


 そんな俺が今、積極的に飲み会に参加している。奴らから見れば衝撃的な光景だろうな、だけどこういう場でしか話せないことは話しておかないといけない。

 それに、俺が話したい相手は軽音部に何の関係もない人なのだ。奴らが会話に入ってく隙間なんて、どこにもないのだからな。


「ね、ねえ......」


 上目遣いで何か言いたげな雰囲気を漂わせている音琶と目が合った。音琶から話しかけてくるだなんて、今までは当たり前だったのにどうしてか新鮮な気持ちになってしまう。

 たった2日間言葉を交わさなかっただけなのに、2人目を合わせて会話するのはかなり久しぶりに感じてしまう。


「どうした」


 少し怖がっているのだろうか、不安な表情は何を物語っているというのか。


「夏音が自分の意思で、打ち上げに参加するのって、なんか珍しいなって思ったからさ......」

「別に......、今回はそういう気分だっただけだ」

「サークルの人達も、参加するんだよ? それなのにどうして......」


 本当のことを言うべきなのだろうか、俺の心変わりを音琶が認めてくれるかは微妙だが、しっかりとした理由がある以上簡単な説明くらいはした方がいいかもな。


「話したい人がいるから。それだけだ」

「......」


 察した様な表情は窺えなかった。考える余裕もないくらいに混乱しているのだろう。だが、構うことなく用意は進んでいく。

 軽音部の面子が居ることを危ぶんで打ち上げ会場をライブハウス内にしたのかはわからないが、今は会場設営の準備中なのだ、あまり音琶との会話に時間を費やす余裕はない。

 まあいい、打ち上げ中も俺に着いていれば、何を考えているかくらいは察せるだろう。


 ・・・・・・・・・


 それぞれ思うことがあったであろうライブだが音琶の顔色は曇ったままで、晴れない表情が普段の音琶とかけ離れた印象を残していた。

 打ち上げが始まって乾杯した後、音琶は逃げるように離れて近くに居た演者と話をしていた。俺は部員からなるべく離れた場所を探し、何とかして響先輩の居る席に近づこうとしていた。

 生憎部員共は演者との会話に夢中だから、現時点で俺に絡んでくる心配は無い。善は急げだから早いとこ話し掛けないとな。

 と、その時......、



「おーっ! 君が噂の夏音君かな~?」



 響先輩に声を掛けようとした瞬間、横からやけにテンションの高い女の声が聞こえてきた。始まって30分も経ってないというのにもう酔っているのだろうか、そんな感じの喋り方だった。


「えっとあの......、何ですか突然」


 腰まで届くくらい長く、ややウェーブの掛かった金髪をたなびかせながら俺に言い寄る女性......別に知らない人ではないが、話したことは一度も無い。

 響先輩とバンドを組んでいる人だよな、髪色が派手だからよく覚えている。


「何も何もー、響の奴が夏音君のことよく話しているからさ、一度こうして面と向かって話してみたかったんだよー!」

「はあ......」

「そうそう! 名乗るの忘れてた! 私は上里留魅(かみさとるみ)、もう知ってると思うけど、響のバンドでベースやってまーす!」

「滝上夏音です、軽音部でドラムやってます」


 一応簡単な挨拶は済ませておく。またこうも、合わせるのが大変そうな人が現れたわけだが、目を見た感じだと悪い人ではなさそうだ。

 ......響先輩とバンドを組んでいる時点で、癖が強くて酒好きだったとしても他人に迷惑を掛けるような人にはならないだろう。変人であることに変わりはなさそうだが。


「ふんふん、それでさ、夏音君はずばり、今日の私達をどう思っておりますか!?」

「どうって言われましても......、まあ、印象には残りましたね」

「えぇ~、それだけー?」

「いや、まだ他にも色々思ったとこはありますけど」


 学年までは聞いてないけど、響先輩を呼び捨てにしているから年上だろうし一応敬語を使うことにしている。



「夏音君、さてはLoMのファンだったりするんじゃないの?」



 次の返事を考えていた時、上里先輩から不意打ちを受けた。響先輩にLoMのことを話したことがあったような気もするし、無かったような気もする。

 話していたのなら響先輩が教えたんだろうけど、話してなかったとしたらこの人は一体......?


「響先輩から聞いたんですか?」

「え、別に聞いてないけど?」

「......!」


 上里留魅......、ほとんど初対面だが、この人は想像以上に恐ろしい何かを持っているのかもしれない。

 音楽同好会というサークルがどんな場所で、どんな人が居るのかもまだ良く分かっていないが、軽音部とは別の意味で波乱の生活を送る可能性が秘められている......、そんな気がした。

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