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俺のドラムは少女のギターに救われた  作者: べるりーふ
第29章
420/572

11/25、2人のベーシスト

 11月25日


 私の誕生日から丁度2週間が経った。19歳になって、特に何かが変わったということはないけど、今まで育ててくれたお父さんお母さんにも感謝しなきゃだし、支えてくれた実羽歌にだってありがとうの気持ちを忘れないようにしないといけない。

 そして、かけがえのない大切な友達にも......、


「やっぱ上手くなってるわよ。あれから私も個人的に練習メニュー考えてるんだけど、何重にも考え直しておかないとダメそうね」

「そんな......、私と琴実ちゃんとでは、弾き方とか全然違うし、好きな曲のパターンとかも......」

「どんな曲でも強弱のバランス整えられて、身体の使い方もしっかり出来ている人こそが上手いベーシストの例なのよ。結羽歌はそれが出来ている」

「こ、琴実ちゃんだって......! 私が出来ない技いっぱい出来てるし......!」

「はいはい、そんな強気にならないでいいのよ。今日は勝負の日じゃないんだから」


 2週間前、私の出勤日に琴実ちゃんがお客さんとして来てくれた。スタッフはお客様の演奏を盗み聞きしてはいけない、意図的に聞こうとしてはいけない、みたいな感じのルールが設けられているから、私は自分の作業を進めることしか出来なかったんだけど、帰り際に琴実ちゃんが......、


『今度はあんたが休みの日、ここで一緒に練習しない?』


 耳から離れることのない練習のお誘いの言葉、誕生日がきっかけで拡がる時間、どれもサークルを続けていたら叶えられなかったことかもしれないかな。

 だから、こうして琴実ちゃんと機材に囲まれた環境でベースを奏でられることが、何よりの幸せなんだよ。私と琴実ちゃん、2週間振りに同い年になったんだし......。


「そ、そしたら、私が普段から練習してる曲、琴実ちゃんにも弾けるようになってもらうよ?」

「望むところよ、あんたが練習してる曲なら私も練習したくなるからね」


 私と琴実ちゃんが練習している曲では難易度が全然違う。基本、私は初心者向けの曲をネットで探してはYouTubeの弾いてみた動画とかを見て練習している。駅前の楽器店に行ってベース教本や、お気に入りのバンドの楽譜を買ったりもしている。

 琴実ちゃんは自分のハードルを上げているのか、結構難しい曲に挑戦している印象が強いかな。同じ初心者だけど、何か新しいことを始めるとなると大きな夢を掲げる琴実ちゃんのことだから、誰にも負けたくないって意思が伝わってくる......。


「私が練習している曲、簡単なのばかりだよ......?」

「簡単な曲でも、いかに格好良く魅せれるかが大事じゃない」

「もう、琴実ちゃんはブレないね」

「何のことよ......」


 でも、いきなり難しい曲に挑戦するよりは、自分のペースに見合う曲を探すのも大事かもしれないね。たまに苦戦している様子が見えるから......。


「スタジオの練習、今日だけじゃなくて、これからもやっていこうね......!」

「当然よ。大体サークルが全てじゃないのよ、こうやって2人で競え合えるんだから、今の環境に何も不満なんてないんだから!」

「うん......!」


 自信が湧いてくる。私も琴実ちゃんも、今となってはどこのサークルに所属していないただの帰宅部だけど、2人ともやりたいことははっきりしている。

 まだまだ、まだまだあんな中途半端な所で終わりたくない、大事な約束も果たしたい。


「ここまで来たんだから、私とあんたでMk-Ⅱおそろにしないとダメね」

「そ、それは......、買えるのにあと何年掛かるかわかんないかな......」


 憧れるベースだけど、学生の内はお財布に優しいのしか買えないかな......?

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