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俺のドラムは少女のギターに救われた  作者: べるりーふ
第28章
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逸脱、非日常の幕開け

 今日が本来のハロウィンという日なのだが、生憎部活に縛られている奴らには記念すべき日を祝う時間も与えられていない。

 別に昨日までの時間が楽しくなかったわけではないし、日付が変わったタイミングに立ち会うことは出来た。


 大切な人との思い出がまた1つ増え、俺にとっても音琶にとっても忘れられない日々が続くことへの希望になった。

 決して戻らない時間でも、思い出せばあの時の出来事が浮かび上がり、それだけで幸せになれる。


 積み上げた思い出は、まだまだ高い所まで行けるはず。そう信じていた。


 ・・・・・・・・・


 10月31日


「年内最後のライブのお知らせです。日時は12月13日の土曜、ライブハウスSYLPHIDにて行います。この前お世話になったライブハウスだから勝手は分かっているはずだし、何よりスタッフに失礼の無いように」


 昨日が天国なら今日は地獄か。歪んだサークルを変えようとしてここまで来たわけだが、これまでしてきたことがしっかり結果に結びついているとは思えない。

 だが、まだ間に合うはずだ。部長から告知されたライブでそれなりの点数を稼ぐことが出来れば、きっと俺や音琶、そして琴実が高い地位に就ける可能性があるのだから。

 どうせまたライブに向けて特に意味の無い役職が与えられるのだろうけど、今回はどのような準備を考えているのだろうか。


「今回のライブは、ライブハウスに一般客を入れる形式のライブだから、体育館の時のように簡単に集客はできない。だから、ポスター係の他に、チケット係を設けようと思っている」


 部長の言葉に俺の耳が反応する。流石に2回連続でポスター係をすると前回よりも良いモノを作らないといけないし、間違いなくハードルは上がる。

 チケット係というものがどういったものなのかは詳しい説明が無い限りわからないが、照明やPAといった常時固定の係を任せられるよりは新しいものに積極的に取り組んだ方が点数は稼げそうだ。ならばこの係に音琶を誘って......、


「ライブハウスでライブをする、ということは当然ノルマが必要になる。達成する為には開催費を超える収入を得ないといけないからな。開催費はチケット代+部費で払うことになっているが、最低でも50人は欲しい。今の部員の人数を考えると、部員1人につき3枚は売って貰わないといけない。勿論、1人で50人誘うことも可能だ」


 サークルとは無関係の人が今の説明をしていたらどれだけライブの大切さが伝わったことだろうか。そもそも前期の間は一度もライブハウスでライブしていないだろ。

 あれだけ高い部費払わせておいてほとんどが飲み代で消えているし、それに加えて居酒屋の清掃費やら何やらでライブにまともに使ったことがないしで話にならん。

 何が開催費はチケット代+部費だ。部長であるお前や幹部の野郎共が飲み会を強要しなければチケット代とかノルマのことを特に気にせず活動できていると思わないか?

 機材が揃っている環境下に居る癖にまともに活用しないで飲んだくれているクズ共のライブ? そんなものに掛ける金なんて一銭もないと思うのだが。

 まさか1年掛けて部費を全て使い果たし、次の年にはリセットされてる、なんてことないよな?


「因みに、ほぼ毎年ノルマは達成出来てないので、みんな積極的に誘ってください。係や出演バンドについては来週の部会までに考えておいてください」


 最後にそう言い、部会はお開きとなった。

 何というか、音琶からの話を聞く日が来る前に、もう一波乱起きてしまうことに戸惑いを隠せなかった。


 まあいい、どうせこのサークルを根本的な所から全て変えてやるのだから。今は辛抱の時期......、という余裕を考えることすらもう限界だった。


 俺はまだ行ける、そう自信を持って思うには少し自分に置かれた状況を見直しておくべきと痛感した。

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