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俺のドラムは少女のギターに救われた  作者: べるりーふ
第27章
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ハロウィン、お菓子を配る


「えっと、それで、琴実ちゃん」

「どうしたのよ」

「さっきから気になってたんだけど、その鞄の中、何入ってるの......?」


 琴実ちゃんが肩にかけている鞄の中はパンパンに膨れあがっていて、今日という日のために何か大事なものを用意している風にも見えた。

 私達は再び外に出て、街ゆく人達の中へと入っていく。相変わらずクオリティの高い仮装に身を包んでいる人が多い、もし私があのままの仮装で入っていたら、明らかに浮いていたよね......。


「ああこれ? よくぞ聞いてくれたわね!」

「え、えぇっ!?」

「見て驚きなさい! この中身は......」


 まるで宝箱を開けるかのように鞄に手を掛け、その中身が露わになる。えっと、これは......。


「お、お菓子......?」

「そうよ、実はこっそり買いだめしてたんだから!」

「えっと、飴にチョコ、クッキーもあるね。どれも美味しそう......」

「手作りする時間無かったのがちょっと残念だけど、ハロウィンと言ったらやっぱりお菓子よね!」


 確かに手作りのお菓子を誰かと交換出来たりしたら楽しいと思うけど、琴実ちゃん忙しいもんね......。でも、そもそも琴実ちゃんはあんまり料理得意な方ではなかったような......。


「お菓子くれないといたずらするぞー! って言ってみたいしね」

「もう......、琴実ちゃん子供みたい......」

「子供なのよ、私も結羽歌も」

「そ、そうかもしれないけど......」

「いちいち気にしてたら疲れちゃうわよ、折角なんだから楽しまないと」

「う......うん! そしたら、提案なんだけど......」


 ・・・・・・・・・


 ネットを駆使して、鳴成市ハロウィンパーティで子供の集まりやすい場所を調べていった。平日だけど、大都市ともなれば子供も遅めの時間まで出歩いているみたいで、お菓子を求めて保護者とともに集まっている場所があるみたいだった。

 商店街に行けばお菓子の配布会をしているみたいだから、私達もそこに行って子供達にお菓子あげてみたいかな。

 勿論、配布会のスタッフさん達の迷惑にならないようにしなきゃいけないけど、商店街は広いから、場所をちゃんと選べば大丈夫だよね......?


「へえ、結構人集まってるのね」

「あ、あれ......?」


 イベントの関係者でもない私達が通りすがりの子供達にお菓子を配るに当たって、最低限のマナーは守らないといけないと思ったんだけど、明らかにスタッフでも何でもない人が色んな人にお菓子を配っていた。

 よくよく見てみると、ここは仮装している人なら誰でもお菓子を配って良いエリアってことになっていた。持っていれば種類は問わなくて、スタッフに署名さえすれば指定の範囲内で活動できるみたいだった。

 後で知ったんだけど、これは鳴成市の伝統的なイベントだったみたい。市内で管理しているみたいだし、折角だから私も署名して参加しちゃおうかな。


「こんなイベントもあるのね、私達がやろうとしてたことに直球ど真ん中じゃない!」

「琴実ちゃん、鞄の中のお菓子、半分貰うからね」


 イベントを管理しているスタッフさんに参加の意を示して、琴実ちゃんと一緒に署名した。これで私達は正式なメンバーになったから、道行く人達にお菓子を配っていくことになるんだけど、なんて言えばいいのかな......?


「トリックオアトリート!」


 琴実ちゃんは楽しそうに子供達にお菓子を配っている。このままだとあっという間にお菓子が無くなっちゃいそうな勢いだった。

 私も頑張って配らないと......! まだ子供が居る時間なんだし、琴実ちゃんには負けられないよね......?


「と......、トリックオア,,,,,,トリート......!」


 ダメだ......、恥ずかしくて声が出ない......。親しい人にならちゃんと配れるはずなのに、名前も知らない人にお菓子を配るなんて、私にはハードルが高かったのかな......?

 そんな時......、



「お菓子くれないと、いたずらしちゃうわよ~!」



 聞き慣れた声が私の目と鼻の先から聞こえてきた。


「ち、千弦ちゃん......!?」


 頭に大きなリボンをつけた千弦ちゃんが私にお菓子を催促していた。唐突すぎてびっくりしたけど、日高君と一緒に居たのかな......?


「あはは、なんか結羽歌がお菓子配ってるとこたまたま見えたから、思わず来ちゃったー。いっぱい持ってるんだね~」

「う、うん......。千弦ちゃんは、その......、誰かといるの......?」

「あ、えっと、まあ居る感じだね。でも結羽歌の姿見えたから1人で来ちゃった。待たせてるからあんま長く話せないけど、折角だからチョコ2つ貰ってくね~」

「あ、ありがと......」


 今の感じ、千弦ちゃんは私が日高君に想いを寄せていたこと、気づいていたのかな......? なんか気を遣っている感じだったし、学祭の時からなんか様子がおかしかったような......。

 ううん......! 今は手元にあるお菓子を全部空っぽにすることに集中しないと......! 友達のことを考えるのも大事だけど、まずは琴実ちゃんに負けないように......。


「結羽歌、大丈夫?」


 不意に琴実ちゃんが声を掛けてくれる。用意していたお菓子は半分くらい減っていて、順調に作業が進んでいることが垣間見えていた。

 そんな琴実ちゃんに私が放った言葉は......、


「大丈夫だよ! 丁度今、お菓子2つ配れた所だから、感覚掴めてきたし、琴実ちゃんにも追いつきそうかな」


 自信なんて無くしてない。だって、琴実ちゃんと一緒だと、どんなことをしても楽しく思えちゃうんだから......。


「まだまだ沢山あるじゃない。でも結羽歌ならそのルックスで子供達を一瞬で虜にしてしまいそうね! 私も負けられないわ!」


 特に勝負するつもりはなかったけど、私と琴実ちゃんで子供達を喜ばせるイベントが、幕を開けたのだった。

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