ハロウィン、琴実からの......
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街を歩いて行くと、ハロウィン限定のファッショングッズが売られているお店まで辿り着いた。琴実ちゃんがマップ機能を使って良いお店を探してくれたんだから、ちゃんとお礼言わないと......。
「ここね、シュシュもそうだけど、短パンじゃ寒いわよね? スカートくらいは買っときなさいよ」
「す、スカート......かぁ......。なんか、私じゃないみたい......」
「着る前から何言ってるのよ......」
私服でスカートは持っているけど、あんまり短いのは持ってないし、普段着として履いたとしても足全体が隠れるくらいの長いものしか使っていない。
今日これから履くのなんて、膝よりも短いスカートに決まってるよね......。
「ううん、短いヒラヒラのやつ、履くことになるのかなって、思ってて......」
「何言ってるのよ、履くのかなじゃなくて、履くのよ。上が真っ白なんだから、下も白いのにしないとお化け感でないわよね」
「うぅ......」
よく漫画やアニメとかで、目が大きくて可愛いお化けの女の子を見たことがある。世のイラストレーターさんって、お化けの女の子を描く時も、可愛さを意識して描いているんだと思う。
もしその人達が、私をモデルとした女の子を描いたら、どんなイラストが出来上がるんだろう......。可愛く描いてもらえるかな......? もし今後組むことになるかもしれないバンドがCDを出したら、ジャケットは......、
「何にやけてるのよ、そんなにスカートが楽しみなの?」
「はっ......!」
「それともシュシュの方だった? どっちも可愛いに超したことないけどね」
「えっと......、どっちでも、ないです」
再び琴実ちゃんから可愛いって言われたから、動揺して思わず敬語になっちゃった......。
・・・・・・・・・
「やっぱり似合ってるわよ、仮装には上下同じ色が合うのよね」
「そう、だけど......、これ、ちょっと短すぎるような......」
「私のと大体同じくらいだと思うけど?」
両腕に真っ白なシュシュを着けるのは、別に恥ずかしいとは思わなかった。だけど、琴実ちゃんが薦めてきたスカートはどれも想像以上に短かった。確かに『怖いお化け』より『可愛いお化け』になれてるとは思うけど、こんな姿で外を歩いても、変に思われないかな......?
ううん、きっとさっきまでの姿の方が変に思われてたかもしれない。琴実ちゃんが特に意味も無くあんなこと言ってくるわけないし、もっと自分に自信持たないと......!
「た、確かに、琴実ちゃんのスカートと大体、同じくらいかな」
「そうよ、それにあんたは細いんだから、ちょっとくらい大胆に足出したって何の問題もないわよ」
「それは......。ううん、そうだね、私、もうちょっと自分に自信持ってみるよ」
自分の容姿が優れているかどうかなんて、誰かが決めることじゃない。自分が着たいと思える服を着て、自分がしたいと思うことをしたらいいんだ......。
勝手に決めつけて、やりたいことを諦めるなんて、そんなの勿体なすぎるもん......。
「私、これ着るよ!」
そして、何の迷いもなく、私は私のしたかった仮装を選んだ。
「このスカートとシュシュ......、私からのプレゼントよ」
「えっ......?」
レジに向かって財布を取り出そうとしたら、琴実ちゃんが私を呼び止めて言った。
「プレゼントって......、そんなの悪いよ、折角選んでくれたのに......。それに高いし......」
「あんた、誕生日もう少しじゃない。ちょっと早いけど、これくらいしか思いつかなかったのよ。お金のことだって気に掛けることないわよ。バイトだって頑張ってるんだし」
「......」
私の誕生日はあと11日後、つまり11月11日、1が4つ並ぶ日だった。サークル関連とかで、当日会えるかどうかもわからないから、今日みたいに絶対に会える内に渡しておこうって思ったのかな......?
高校時代からずっと、琴実ちゃんからは誕生日にプレゼントを貰っていた。だけど、今回のプレゼントは、今まで貰ったものの中で一番嬉しい。
それにシュシュもスカートも、普段着として使えるし、今度からは思い切って短めのスカート、履いていこうかな......?
「琴実ちゃん、ありがと......。一生、大事にするから!」
「言ったわね、そしたら約束通り一生大事にしなさい!」
約束もしちゃったし、これから私は背伸びをし続けていくことになりそうかな。
でも、色んな人が私のこと、可愛いって思ってくれるんだったら、堂々と胸を張って生きていこうって思えるよ。




