ハロウィン、まずは夕食
急いで部屋に戻り、切らした息を整えたら扉を開けた。すると......、
「ひゃっ......!」
「......は?」
リビングの真ん中で着替え中の音琶と目が合った。丁度普段着を脱いだタイミングだったから良いモノを見れたが、当の音琶はあっという間に全身が赤く染まり......、
「な、夏音!? こういう時は、1回外に出るのが規則なんじゃないのぉ!?」
焦りで目が回り、混乱する音琶。別にお前の裸なんて何回も見てんだから何を今更恥ずかしがる必要あるのかって思うのだが。
「いいだろ別に、寒いんだし外には出たくない」
「ちょっと......! そんなに見つめないでよ......」
「はいはい」
この前は泣きそうになりながら受け入れてくれたってのに、女ってよくわかんねえな。
その後落ち着きを取り戻した音琶は、気を取り直してこの前買った仮装の服に着替え直し、今一度俺に自分の姿を自慢してきた。
「夏音も早く着替えて行くよ! あと5時間ちょっとで今日が終わっちゃうんだから!」
5時間って俺からしたら相当長い時間なのだが。もう少し休んでから外に出るよう言おうとしたが、間違いなく怒られるだろうからやめた。
・・・・・・・・・
2人して普段と違う格好に身を包み、外に出る。既に暗くなった外は、これから始まる......いやもう既に始まっているイベントに足を運ぶ沢山の人で溢れそうになっていた。
その中に紛れ込むことに抵抗は感じない。こんなことが出来るのは1年の内の1回だけだろうけど、それでも俺は満たされていた。
「ねえ、まずは何か食べにいこうよ! お腹空いたんだ」
「夕飯、まだだからな。俺も今日は作る気はなかったし」
「わかってるね~! 久しぶりの外食楽しみだな!」
「そうかい」
水色の魔女服を身に纏い、右手には短めの箒。音琶の普段と違う姿に胸の高まりが抑えられないが、もしかしたら音琶も俺の姿に胸を高まらせてるのかもしれないと思うと、居ても立ってもいられなかった。
自分の感情を最低限抑えながら街を廻るのは、俺にとって少しばかり難しいことなのかもしれないな。
「でさ! 何食べる?」
「そうだな......」
こういうイベントがある場合、ハロウィン限定商品みたいなものが売られていることがほとんどだ。ならば店頭で売られているようなものを買って食えばいいかもしれない。勿論何軒か廻ろうと思うけども。
丁度夕飯時ということもあって、人通りが多い。どこ行くか早めに決めておかないと行列に巻き込まれることになるかもしれないな。
そんな時......、
「ねえ夏音! 通りすがりのお姉さんからこんなの貰ったんだけど!」
「ん、何だこれ」
音琶が1枚の紙切れを手にしていたが、一体何の宣伝なのだろうか。大都市でならよく見る、得体の知れないビラを配っている厚化粧のお姉さんから貰ったんだろうけど、一応内容は確認しておくか。
「イベント期間限定、仮装&コスプレで施設内のレストラン10%割、来場されたお客様には屋上の観覧車無料券配布します、それから......」
結構色々書かれていたが、もしかしたらこれは逃すことが出来ないものなのでは......。そもそも音琶と2人で観覧車に乗ったことないし、そもそも俺は生まれてから一度も観覧車というものに乗ったことがない。
それに、飯が安く食えるのなら今すぐにも行くべきだ。貧乏人は割引とか無料という言葉に弱いのだからな。
「ね! 行こうよ! 私、夏音と一緒に観覧車乗りたい!」
「......俺も丁度、音琶と乗りたいと思ってた所だ」
「やったー!」
その前に夕飯食わないとな、確かビラの建物はもう少し歩いた所にあるはずだから、まずはそこに向かって体力付けておかないといけない。
どうせ今日は遅くなるんだろうから、間違ってでも眠くならないように頑張らないとな。




