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俺のドラムは少女のギターに救われた  作者: べるりーふ
第27章
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グループ、4人の動向

 10月30日


 この日が来てしまった。完全にプライベートの範囲でしかないのに、何故か緊張が抑えられない。

 落ち着け俺、まだ授業中なのだから、まずは目の前のことに集中しなくては。


「何かさ~、滝上落ち着きないよ~」

「立川......」


 番号が近いからって理由で、この女とグループワークの班が同じになったのは不幸でしかないな。まだ日高の方がよかったと思える。

 いつもの集団とやらで同じグループになったのは立川だけだった。結羽歌と日高はそれぞれ別のグループになったし、俺もたまには違う面子で授業を受けてみたかったものだ。


「何々? そんなに学祭楽しかったの? それともお楽しみだったの?」

「お前あとで殺す」

「うわ、ちょっとからかっただけなのに殺害予告だなんて、私の班にはとっても怖い人材が備わっているのです」

「......わかった。殺さないから黙っててくれ。授業中だからな」

「へえ~。授業中じゃなかったら聞いていいみたいだから終わったら聞くね」

「......」


 日高には悪いが、この女のどこが良かったんだ......?

 まあ、お楽しみだったのは強ち間違ってはないけど、それは学祭が終わってからだからな、一応。


 こっちも注意力が散漫になってたからこんなこと聞かれたんだろうし、全て立川のせいにする権利はないかもな。


 ・・・・・・・・・


「それでさ~、滝上のやつ、授業中に何か妄想してたみたいだよ~」

「滝上、お前もやるときはやるんだな」

「いや何がだよ」


 今日分の授業が全て終わり、早く部屋に戻って準備しようと思ったのだが、生憎この状況である。グループワークが終わった直後、立川が待っていたとばかりに日高に報告というものを始め、日高もそれに乗ってしまったのだ。


「実際何をしていたかは知らないけど、察するのは簡単だよな」

「ねー」


 仲良いよなお前ら。喧嘩とかしたことあるのだろうか、付き合って1ヶ月以上は経ってるはずだけども。


「ってかさ、滝上は例のやつ、行くの?」

「例のやつとは」

「わざわざ聞き返さなくてもわかるでしょ? 私達は今日行くんだよ~」

「ああ......」


 俺もこれから行くんだよ、と言おうとしたが、果たしてこいつらはなんて返してくるだろう。さっきみたいなこと言ってきたりしないだろうか。


「今日これから、行く」


 たったそれだけの一言に、二人はハッとしたようになり、やがて口を開く。


「そっか、楽しんでこい」

「ヘタレに見えて意外とやるときはやる奴なのよね~」


 立川からは褒められた気がしないが、立川なりの応援ってことに片付けておくか。


「だから俺はもう帰るからな。お前らはお前らで楽しんできな」

「言われなくても楽しんでくるよ~」


 二人に簡単な挨拶を済ませ、急ぎ足で音琶が待っている所に向かおうとした時......、


「あ、あの......、夏音君......。急いでるとこ悪いんだけど......」

「あ?」


 教室を出て外に出ようとした時、後ろから結羽歌に呼び止められた。


「音琶ちゃん......、あれから、大丈夫......? 日高君と千弦ちゃんと、話していたみたいだから......」

「ああ......」


 音琶は一応いつも通りには戻った。だが、少しでも精神的に負担になることが起こったら、今度こそどうなってしまうか予想もできない。

 再来月までは......、いや、それ以降もずっと、元気な音琶を見ていきたいが、俺が守らない限り音琶は自分の殻に閉じこもったままになってしまうかもしれない。


「今日、ハロウィン行くんだね。私も行くんだけど......」

「琴実とか......?」

「うん、一緒に行こうって、ね」

「お前も、楽しんでこい」


 それだけ言って足を進めようとしたが、再び結羽歌に止められる。


「待って......!」


 まだ何かあんのかよ。申し訳ないけど早いとこ部屋に帰りたい。


「何だよ」

「もし、私に何か出来ること、あったら......。音琶ちゃんの......、あと、夏音君の力にもなりたい、かなって......」


 自信無さそうに語ってはいるが、それでも俺や音琶のことを支えてやりたいって想いが強く伝わる。


「迷惑とかだったら......、干渉しないように気をつけるけど......、音琶ちゃんのあんな姿見ちゃったから、放っとけないなって......」


 下を向きながらだったが、自分の意思は最大限に伝えたってところか。全く、こいつも見た目以上の根性とやらを持っているよな。


「結羽歌にまで負担掛けるのは抵抗あるけどな、どうしても力になりたくなったら、いつでも頼ってやる」

「夏音君......!」

「勘違いするなよ、俺一人でどうにか出来るような話だったら、結羽歌には何も頼まないからな」

「うん......! ちゃんと、分かってるよ」

「......もういいか」

「いいよ、音琶ちゃんと、楽しんできてね......!」


 今度こそ俺は、より一層肌寒くなった外に出て、音琶の元へと走っていった。

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