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俺のドラムは少女のギターに救われた  作者: べるりーふ
第26章
388/572

学祭後、音琶が心配

 ***


 今まで経験してきた学祭が酷い有様だったから、この2日間は決して無駄ではなかったと思いたい。楽しくないわけがなかった。大切な人と過ごせる学祭だったのだから、悔いなんて残ってないはずだった。はずだったのに......。


「結局音琶は本当に体調不良だったの?」

「......さあな」

「さあなって......、あんたあの時ずっと一緒に居たのよね?」

「ああ、居たよ」

「だったなら......、それに話せたら話すって言ったのはどこの誰だったかしら?」


 打ち上げは他校のサークルも参加していたから、今までのような変な飲み方をするなんてことないと思っていたのだが......、


 始まって2時間ほど、既に顔を真っ赤にしてテーブルに突っ伏す酔っ払いが数人、何故か酒瓶を大事そうに持ちながら何かを叫んでいる先輩、何故かパンツ1枚しか身につけてない浩矢先輩と兼斗先輩、等々など......。


 バンドやってる奴ってどこもこんな感じなのか? 今まで酔っ払いうぜえみたいなことを繰り返し口にしていたが、もしかして俺の感性がおかしいみたいなことだったりするのだろうか。

 バンドに酒は付きものとかいう常識がいつの間にか当たり前になってしまっていて、その常識に付いていけない奴が除け者にされるのだろうか。


「話せたら話すって言っただけで、絶対話すとは言ってない」

「あらそう、本当に夏音は頑固よね」

「何がだよ......」

「別に、やっぱまだ信頼されてないみたいなのね」

「いや、お前のこと信用してないとかそんなんじゃねえって」

「へえ......」


 数少ない生き残りである俺に対して、琴実がライブ中に起こった出来事について探ってきた。信用していないわけではないけど、音琶のあんな過去を知り、絶望に満ちた姿が頭から離れなくて動揺が隠せてないのだ。

 音琶と一緒に花火が見れるはずだったのに、あいつらのせいで何もかも全てが壊れてしまったな。


「まずは音琶が他の誰かに話してもいいって言ってからだ」


 僅かに酔っているのだろうかこの女は。数少ない友人のことが心配なのはわかるが、詮索しすぎたら負担になるだけだからな。


「ま、そうよね。深入りしたら音琶までサークル居なくなるかもしれないし。バンドメンバーが辞められるのって、結構くるのよね」


 どうやらわかってくれたみたいだな。確かに琴実も最初に組んだバンドのメンバーがサークルを辞めているのだから、その辛さが奴には理解出来るのだろう。


「その分あんたが音琶のこと、ちゃんと支えてあげるのよ」


 何だかんだ良い奴だよなこの女、初めて会ったときはただの自己中野郎だと思っていたというのに、人間なんてどこで認識が変わるかなんてわからないものなのだな。


 ・・・・・・・・・


 すっかり遅くなった。途中で帰ることも許されないなんてどうかしているよな本当に。

 体調不良ってことにしておいて音琶は打ち上げ不参加となり、部屋で一人にさせるのも抵抗があった。だから結羽歌に無理言って簡単な事情を話したが、瞬時に理解してくれたことに感謝すべきだな。

 きっと今も音琶は結羽歌の部屋に居るだろう。てかこの時間だと二人とも寝てるだろうから寄り道するわけにもいかないか。


「......俺も寝るか」


 あれだけ飲んでおいて二次会に参加する連中もいくらかいるみたいだった。結局最初の飲み屋で帰ったのは俺と琴実と鳴香の3人だけだってことを後から聞いた。


 肌寒い空気を浴びながら帰るべき場所に辿り着き、鍵を開けて中に入る。電気をつけて辺りを見渡したが、音琶の姿はそこにはなかった。念のため風呂とかクローゼットの中とか探してみたが、音琶が居るはずもなく......、


「はぁ......」


 明日になれば音琶はきっと戻ってくるはずだ。溜息一つ零しながら冷たい布団に包まり、朝が来るのを待つことにした。

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