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俺のドラムは少女のギターに救われた  作者: べるりーふ
第26章
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学祭、何が起こるかわからない

 騒がしい1日だな......。このライブが終わった後でも打ち上げがあって、何かよく分からない飲み会に巻き込まれていくんだろうな......。

 だけど、今日あったことは決して無駄なことじゃなかったって、胸を張って誇ることができる。仮に飲み過ぎて羽目外したとしても、今日の私は頑張れたって言い切れる。


 琴実と組んだバンドの出番が終わってからも私は気持ちの高まりを抑えられなかった。夏音と淳詩のPAを手伝いつつも他校の演奏を参考にしたり、自分の出番になればさっきよりも気合いを入れて演奏に向き合う。

 先輩達と組むバンド......もとい鈴乃先輩の代わりとして入ったバンドだったけど、今はそんなこと気にしないって心に決めた。


「音琶が何を考えているか知らないけど、気合い入ってるみたいだね~」


 もうすぐ出番という時に、茶化すように声を掛けてくる茉弓先輩。あんまり変なこと言わないで下さいよ、私だって一生懸命なんだから!


「なんかいつもと違う感じ、熱が籠もってて格好いい。足りなかったリードギターに音琶を選んで本当に良かったと思ってるよ」

「そう......、ですか」

「だから、さっき以上に頑張ってよね。私達のバンドを知らしめるためにも」

「できる限り、やってみせます」


 今は気にしない。茉弓先輩にどんな想いがあってこんな言葉を私に投げかけているのか、気にしたら負けだ。

 きっと琴実のMCについても色々探ってくるに違いない。だけど、琴実は周りの目なんて気にせずに自分の想いを真っ直ぐに伝えていた。何も恥じる必要なんてないし、誰かが余計な一言を投げる必要もない。



「''先輩''と組むバンドなんだから、やって貰わないと困るよ」



 いつもの口調だった。冷ややかで、この世のものとは思えないくらいの......。だけど、そんなことで動じるほど私は弱くない。

 私は私の満足する、そして夏音が思わず身体を乗り上げてしまうようなギターを掻き鳴らして、役目を果たすだけ。


「何か言われたの?」


 茉弓先輩が私の元を去ってから、琴実が心配そうに尋ねてきた。


「何でも無いよ、私は大丈夫」


 そうだよ、大丈夫だよ。だって、あんなことがあった琴実だって最後までやり切ったんだから!


「そう......。そうよね、あんたが先輩に何か言われた所で折れる様な人じゃないってことくらい、みんな知ってるんだから!」


 軽く背中を叩かれて、立つべき場所へと向かった。


「私だってもう一つ出番あるんだから、その前にあんたが私のメンバーの手本となるリードを掻き鳴らすのよ!」


 琴実の励ましは、きっと鳴香に向けて言ったことでもあるのかもしれないね。当の鳴香は照明の調整を頑張っているけど、今の琴実の言葉を聞き取ったのかこっちをチラッと見て、すぐにステージの方へと視線を移してしまった。

 今回琴実が新しく組んだバンドは、何が何でも鳴香をメンバーに迎え入れたかったんだもんね。つまり私は鳴香のお手本となる演奏を求められてるんだ......。


 音楽は誰かの為にするものだったり、自分の為にするものだったり様々だ。どの問いにも正解が無くて、表現なんてその人の自由だ。勿論メンバー同士で話し合わないといけない所もあるけど......。


「行ってくるね」

「好き放題やらかしてきなさい!」


 自分の精一杯を出し切ったら、ここに居る人達はどう思うのかな? 喜んでくれたら何よりだけど、もしこの場に私のことを知っている人が居たら、その人は私のことをどんな人として認めるんだろう?


 1つだけわかることは、人生何が起こるかわからないってこと。だって、今の私が昔の私に『あなたは大勢の人の前でギターを弾いてるんだよ』なんて言っても、きっと信じてくれないと思うから......。

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