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俺のドラムは少女のギターに救われた  作者: べるりーふ
第3章 臆病者に助言はいらない
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通知、結局それが大事なのかよ

 一旦部屋に戻って昼食を摂ったあと、午後の授業があるので再び教室に向かう。

 部長の妙な表情からして立川は諦めた方がいいのかもしれない。

 それとバンドの話、構成やメンバーのことを考えると湯川を入れるのが一番手っ取り早いのは承知だけど、それで満足できるのかと聞かれたら即答できるとは思えない。


 無言で日高の隣に座り、教科書と筆記用具を取り出す。

 これから俺は何をすべきなのかが分からなくなりつつあるんだが、取りあえず今は切り替えて授業に集中しよう。


「ねえねえ、軽音部の先輩達に聞いた?」


 午前の授業同様、日高の右隣に座っている立川に聞かれた。

 さっきと教室違うのに座ってる面子が全く同じなのは何か笑える。


「すぐには決められないとか言ってたけど」


 嘘はついてない、実際に部長に言われたことだ。それでまた何か言われたらどうにか出来るような問題じゃない。


「本当に聞いたの?」


 疑い深い奴だな、1週間以上も待たせたんだから仕方ないというのもあるけど、本当のことなんだからそこは受け入れて欲しい。


「本当だ、部長が何考えてるのかはわからないけど、これ以上俺は何もできないからな」

「ふーん、まあいいけど」


 こいつ根っから信用してないな、何か俺が悪いみたいに思われてそうだけど、正直言うとこれ鈴乃先輩にも責任あると思うぞ。

 あの人立川のことLINEしてから全く連絡帰ってこないし、既読ついてるのに。


「あはは......」


 立川の隣で結羽歌が苦笑している。

 お前も何か言ってくれよ、あの場に居ただろ、男の俺が言うよりは女のお前が説明した方が立川も信じやすいと思うし。


「滝上......、お前本当に大変そうだな。疲れてんなら無理しないで授業休んでもいいんだぞ」


 日高......、お前は何を言ってるんだ。

 確かに疲れてるけど、授業は病気とか大きな用事以外では休むもんじゃないだろ。


「いやこの授業必修だし。休むとか馬鹿のすることだろ」

「どうせこの後は五限まで何も無いんだし、少しでも身体休めた方がいいんじゃないかな。この授業小テストとか無いだろ? それに出席表にはお前の名前も書くし、あとでノートも見せるからさ」


 日高の気遣いには何度助けられたことだろうか。

 ここまでしてくれる人が今まで居なかったからか、そんな発想ができるということに戸惑いを隠せない。


 鳴成大学の出欠確認は、基本教授が授業開始のタイミングで前の席から出席表を配布し、学生番号の書かれた表に自分の所をマークするというものである。

 場所によってはICカードを配られて機械にタッチすることで出欠を決める所や、点呼する所もあるらしい。

 欠席は全体の3分の1まで認められてるが、それ以上欠席しても単位を貰うことは決して不可能ではない、友人が居ればの話だけどな。


 汚い手だとは思うけど、疲れて授業のモチベが上がらない時くらい俺にだってあるし、実際に物凄く疲れてるからたまには休んでもいいのかもしれない。

 たまに、という言葉を何度も使うのはNGなのは流石に理解できてる、前期の間は今回だけにしたい。


「そうだな、そうしてくれるなら休むかな」

「おう、もう少し俺のこと頼ってもいいんだからな」


 日高と結羽歌に手を振られ、俺は教室を後にした。

 良い友を持ったものだ、日高は俺のことを裏切るような奴ではない、なんて思ってもいいんじゃないかな。


 部屋に戻ってすぐにベッドに寝転がる。

 疲れのせいか一瞬で眠気に襲われたが、完全に眠ってしまう前にアラームかけとかないと五限まで休むことになってしまうから何とか我慢する。

 欠席扱いにはなってないけどさ。


 何とか力を振り絞ってアラームを設定したら今度こそ睡眠に入る。

 意識がどんどん遠のいていき、深い眠りについていった。


 ・・・・・・・・・


 アラームが鳴る前にLINEの通知音がやかましくて目が覚めた。

 時間を確認すると14時26分、眠りについてから1時間と数分経っていた。

 五限は16時半からだからまだまだ余裕がある、通知くらい見ておくか。


 部長:新入生ライブのバンドに関しての連絡です。まだ正式にメンバーが決まってないバンドは今週の部会までに全て決めておいて下さい。それまでに決められなかったら自分がランダムでメンバー決めてしまいます。それと新たに新入生を勧誘するのは原則禁止となっているので気をつけて下さい。


 部長:申し訳ないけど、もう入部期間終わってるから諦めてほしい

 

 グループLINEと個人で部長からの連絡がきていた。

 部長には勿論本名はあるけどみんな部長って呼んでるし、本名だと違和感があるからユーザー名を部長に登録しておいた。

 下の名前で呼び合うはずなのに部長だけは例外なんだな。


 それはさておき、問題はそのLINEの内容だ。

 新入生バンドの締め切りが今週の部会までとするとあと2日で決めなくてはならない。

 このままだと本当に湯川がメンバーになってしまいそうだけど、どうしたらいいか。

 確か新入生でドラムの奴はかなり少なかった印象がある。それも兼ねて色々行き詰まってるところもあるのかもしれないし、今週の部会は結構面倒な内容になりそうなのだが。


 立川の件に関しては諦めるしかないのかよ。

 他のサークルだったらこの時期で入部しても問題無さそうなのに、これも全て掟と採点のためか。

 五限で立川に何て言えばいいのか、これで今まで以上に機嫌を損ねたら面倒だよな、これから長い間同じ教室で授業受けるというのに。

 とは言っても、黙ってるよりは本当のことを言うのが筋だし、立川は返事をずっと待っている。

 気分は乗らないけど五限が始まる前か終わった後にでも伝えるとしよう。


 現実を受け入れ、再び俺は目を閉じてアラームが鳴るのを待ち続けた。

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