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俺のドラムは少女のギターに救われた  作者: べるりーふ
第24章 お前の瞳に恋をする
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歓迎、初出勤の記念

 一通り一日の作業が終わり、スタッフと演者、そして彼らの関係者だけが残った。特に異様な騒ぎ方をする奴は居なくて、基本観客の動向を見守るだけになってから俺は立っている以外何もしていない。

 ライブハウスのバイトともなればプロ並みに上手い人達だけでなく、実際のプロの人のPAや照明が出来るモノだと思っていたけど、これは俺の思い過ごしだったようだ。

 ライブ関係のバイトの知識はあまり無かったから少し舞い上がっていたのかもしれない。現実なんて所詮この程度、俺の求めていた高すぎる理想とはかけ離れたものだったのだ。


「お疲れ様、夏音」

「あぁ......」

「何か元気ないね、初出勤疲れちゃった?」

「まあな」

「これからどんどん慣れていこうね!」


 まあ、たかが理想と現実が離れていたからといって手放すことにはならないよな。

 たった一回の出勤で全てを把握したわけではないし、思い通りにならなくても即座に判断する必要もない。

 今までの俺は、物事を独断と偏見で判断していたのかもしれない。考えられる可能性の一つでしかないことだが、音琶との日々を過ごしていく内に自分の中に秘めていた''何か''が変わっていった、ということは確かだった。

 だから、不満はあってもいつかは自分の理想に近づいていくことを信じてこのバイトを続けていきたいと感じていた。


「そうだな、音琶のこともっと頼ってもいいか?」

「えっ? 突然どうしたの?」

「質問に答えろよ」

「勿論頼って欲しいし、夏音のこと四六時中サポートしたいけど、なんか素直過ぎないかな......?」

「うるせえ、いつも通りだろ」

「そんなことないって」


 これから打ち上げらしいが、洋美さんは控え室から出てこない。一体何をしているのだろうか。


「なあ音琶、打ち上げってここでするときとどっかの居酒屋でやるときがあるんだよな? 俺が参加したことあるのは......、って言ってもせいぜい2、3回もあったかって話だけどさ、何か決まりがあるとかか?」

「オーナーの気まぐれだよ」

「......」


 洋美さんらしいな。今日は居酒屋行くとか何とかって言ってたけど、何か隠しているような表情を隠せてなかったよな。

 と、その瞬間......、


「打ち上げ行くよ~! 今日は夏音の初出勤祝いするんだからね~!」


 突然会場内にクラッカーの大きな音が響き、紙吹雪が頭上で舞った。一瞬の静寂の後、大きな歓声と拍手が次々と俺を襲ってくる。

 えっと......、歓迎されてるってことでいいんだよな? てかこれ、打ち上げ前にやるんだな。別にいいけど。


「これからよろしく! XYLO BOXの一員としてライブ盛り上げていこう!」

「は......、はい。頑張ります......」


 まあいいか、祝われて悪い気はしなかったし、ここまで色々な人に求められた経験も無かったから新鮮だったしな。


 ......これ、音琶も結羽歌もやられたんだよな、初出勤の日に。


 ・・・・・・・・・


 打ち上げに行く前に忘れていたことがあったから、音琶と共に洋美さんを引き留めた。


「すいません。実はこれ、会場の掲示板に貼って貰ってもいいですか? 一応スタッフが出るライブってことにもなりますし......」

「んー? 別にいいけど何これ......」


 丸められたポスターを広げ、表面をまじまじと見つめる洋美さん。そして......、



「......あんた達、早く結婚しちゃったら?」



 第一声がこれかよ。

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