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俺のドラムは少女のギターに救われた  作者: べるりーふ
第24章 お前の瞳に恋をする
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2ヶ月後、覚悟は決めてる

 面接という名の奇天烈なやり取りが終わり、もうすぐ開演の時間になる。洋美さんのことだから、今日付けで初出勤ってことにしていきなりPAだの照明だのやれ、みたいなこと言い出すかと思ったが、流石にそう言った常識は理解しているみたいだった。

 いやもう、この人には音楽以外の常識が通用しないのだろう、別に誰かに迷惑掛けているわけじゃ......、ないはず、ないはずだ。


「なあ音琶、お前の面接ってどうだったんだよ」


 気になって仕方が無かったから長いことここでバイトしている音琶に聞く。だけど......、


「別に、普通だったよ」

「いや、そんなはずないだろ。当時高校生だったんだろ? それでギター経験あったら洋美さんだって目を付けて即採用みたいなことになったんじゃないのか?」

「それは......」

「.........?」


 こいつなんでこんな追い詰められた様な顔してんだ......? これも話せない過去の一部だったりするってか、触れてはいけない部分だったのか?

 ......そうだよな、何があったか知らないけど、自分の昔話を一切しない音琶のことだ、高校生という年齢でバイトをしていたってことは、よっぽど生活に困ってたのかもしれないし、俺の知らない所で音琶も人に言いたくない出来事に巻き込まれていたって可能性も充分にある。


「な、何ジロジロみてるのかな? もうすぐ開演するから、一回入り口の方に戻ってもらうよ!」

「ちょっと......」


 ご機嫌斜めな音琶に無理矢理背中を押され、会場の外へと放り出されてしまった。何だったんだよ本当に。


 ***


 夏音と一緒にバイト出来るのは嬉しいことこの上無いんだけど、同時に私の過去を知る近道にもなるってことを夏音からの質問で感じ取ってしまった。

 即採用って言っても履歴書は絶対必要だし、16歳だった時のものが今もこのライブハウス内に眠っているのは確実だよね。もし夏音がそれを見つけてしまったら、和兄の存在がバレてしまう。

 だって動機の欄には『兄から紹介されました』って書いたんだから......。


 2ヶ月後には話すことになっているけど、それよりも前に知られてしまったらってことを考えたら怖くて仕方が無い。

 夏音、夜勤を辞めてから困っている感じだったから、思わず勢いで誘っちゃったけど、もっと後のこと考えておくべきだったかな......。

 過去に何度も同じような失敗を繰り返していたというのに、まるで成長してないな、私。


「そんなに夏音に昔のこと知られたくないの?」

「洋美さん......」

「別に、恥ずかしがるような話じゃないと思うけどね。学校にちゃんと行けるってことが偉いってわけでもないんだし」

「でも、碌に学校も行かなかった人が、こんな所に居ていいのかなって、たまに不安になることがあるんです。特に夏音の前だと......」

「そんな学校行かなかった人が、自分の力で頑張って、鳴成大学に合格した。何も恥ずかしがることないじゃない、むしろ誇りに思うべきだし、私も音琶が鳴成通ってるって話聞いたときは自分のことのように嬉しかったんだよ」

「そんな......、一人で居る方が好きだっただけですよ。誰かに助けられるよりも、自分の力に頼る方がやりやすかっただけで、勉強もギターも和兄が居なくなってからはずっと一人で頑張りましたし......」

「一人が好きだった音琶がいつの間にか外に出られるようになって、滝上夏音という名の大切な男の子に出会えた。こんなに幸せそうなんだから、もっと堂々としなって」

「......」


 夏音に嫌われるんじゃないかって不安になって、12月の和兄の命日に私の全てを話す。話して、夏音はこれから私のことを命賭けて守ってくれるかな? 覚悟を決めたとは言え、決心してからずっと落ち着けなかった。


 どうなるかもわからないことに、自信を持ってもいいのだろうか。

 洋美さんは、私の全てを知っている。和兄が全部話したから。


 これからどんな結末が待っているかってことも、全部知っている。

 だけど、何も気にしていないのが大人の性って言うのなら、私も見習わないといけないのかもしれないね。


「ほら、もう開けるからね。そんな悄げた顔してたらお客さんにまで心配掛けちゃうよ?」

「あ......、はい! 精一杯今日も頑張ります!」

「うん、音琶はこうでないとね!」


 カウンターの奥の方で結羽歌がドリンクの準備をしていたけど、今の話聞いてたかな? 聞かれたら、何て答えよう......。

 ううん、今はそんなこと気にしちゃダメ! 目の前のお客さんとこれから盛り上がるライブのこと考えていかないと!


「いらっしゃいませ!」


 次々と入ってくるお客さんからチケットを受け取りながら、私は『いらっしゃいませ』という感謝の気持ちを言葉にしていた。

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