表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺のドラムは少女のギターに救われた  作者: べるりーふ
第23章 掟を変えるその日まで
333/572

弱気、帰りが遅いあいつ

 ***


 音琶の帰りを待っている間、ずっとポスターの作成に勤しんでいた。

 多少のダメ出しは食らったものの、修正箇所は少なかったからどうにかして下書きは完成し、今はパソコンで色や形を作っている。


「......」


 俺の中で10月のイメージカラーはオレンジだから背景はオレンジを使っているものの、音琶の色とは違うきがする。

 何だろうか、あいつは水色を好んでいるように見えるし、身につけているものだったり持ち物はほとんど水色である。

 だけどな、水色が背景のポスターなんて夏に使うものだろうし、ただでさえ寒くなってきている季節に涼しげな色を使うのも割に合わない。

 さっきからマウスを適当に動かしては思考を巡らせていた。あいつのことを意識しながら作成しているとどうも落ち着かないし、思わずトイレに駆け込んでしまいそうになる。

 いや何考えてんだか、いくら部屋に一人だからといって最後のはねえだろ。


 時計を見れば23時半過ぎ、流石にまだ帰っては来ねえか。休憩がてらシャワーでも浴びて残りの作業に取りかかるとするか。


「はぁ......」


 音琶は結羽歌と何を話しているのだろう、気になりながらも浴室に向かった。


 ・・・・・・・・・


 10月7日


 シャワー浴びてる間に日付が変わっていた。未だに音琶は帰ってきてなくて、LINEも入ってなかった。

 これは相当飲んでるな、早くから授業あるんだし適当に軽く作業したら先に寝るとするか?


「.........」


 LINEで音琶との過去のトークを眺めながら奴から連絡が来るのを待つ。この際俺から何か言ってやろうか? いつもの下らない会話でも、少し茶化す程度に送ってやるのもいいかもしれない。

 どうせ酒入ってるんだし、多少の煽りくらいは許してくれるよな?


 滝上夏音:楽しんでるか? お前のことだから偏差値低そうな飲み会してるんだろうけど


 そう送ろうとして手が止まる。いくら何でもこれは言い過ぎだ、そもそも偏差値なんて言葉使うことが間違っている。

 音琶はサークルの飲み会を本気で嫌がっているんだし、俺だってそうだ。互いの苦しみを分かち合えているはずなのに、俺からこんなこと送るのはダメだ。


 もういい、楽しんでいる奴の邪魔をすることになるだろうから何もしないであいつの帰りを待ってやる。玄関が開く音がしたら即座に起きてやるからな。




 大体1時間が経過しただろうか、時計を見ていないし見る体力も残ってないけど、まだ帰ってこねえな。

 音琶がバイトある日以外で、一人で夕食を摂ったことがそんなに応えたのだろうか、孤独を好んでいた俺が何今更弱気になってんだか、あいつが俺の前から居なくなるなんてことないはずだろ? ない、よな?

 どうも最近、あいつと話していると僅かながら胸騒ぎがするのだ。昔から身につけていた人間観察のスキルが発動しているのかは知らないが、未だに謎の多い音琶の曖昧な過去が気になっているのは事実だ。

 音琶が俺と初めて出会ったときの経緯や父親の話までは聞いたが、まだ話さなければいけないことがあると言っていた。それは2ヶ月後にわかるみたいだけど、どうして今すぐに言わないのだろうか。


 2ヶ月後に何か思い入れがあって、どうしてもその日に言わないと気が済まないとか、そんなところか?

 だが核心には至れない。スキルを発動したとしても未だに読めない音琶の心境が俺の心を悩ませていた。


 早く帰ってきてくれよ、音琶。

 なんかよくわかんねえけど、安心できねえんだよ。



 12月になったら音琶が話してくれることは俺にとってメリットなのかデメリットなのか、知りたくないけど知らなくてはいけないことを知る、ということにもなるかもしれないし、単なるサプライズって可能性も僅かながらある。


 だけどな、こういうときに限って、絶望を知る形になったりするんだよ。

 俺の勘は良く当たるんだからな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ