夜会、女子同士で
10月6日
今日の夜は結羽歌の部屋に行って秘密のガールズトークが繰り広げられることになっていた。別に秘密ってわけでもないかもだけど、ちょっと見栄張ってみたかったんだよ。
授業が終わった後のお楽しみってのもあるし。
「それで、今日は俺一人で寂しく暖かい夜ご飯を嗜め、ってか」
「うん、そうだよ。私は私で結羽歌のとこで楽しくしてるから、夏音も日高君とかでも誘って一緒に食べれば良いじゃん!」
「そういうのは、いい。野郎二人で飯とか、あり得ねえし。外食ならまだしも」
「何その偏見、女の子同士なら良くて男の子同士だと嫌なんて、おかしいね」
「うるさい、お前よりはまともな思考回路してるし」
「へえ~」
夏音なりに口撃してくるけど私にはノーダメだからね、むしろ昨日までの悩みが晴れるんじゃないかって錯覚に陥りそうになるくらいだからね。
意識してなくても、何気ない夏音の一言が私を救ってくれるんだよ。
「まあ好きにしろ、ただ飲み過ぎるなよ。明日だって授業あるんだし」
「わかってるよ、今回は先輩居ないんだし心配要らないって!」
「はいはい」
黒いブーツを履きながら玄関の扉を開け、夏音に軽く手を振りながら.....、
「行ってきます」
「行ってこい」
夏音も私に向かって、軽く手を振っていた。
・・・・・・・・・
久しぶりに入る結羽歌の部屋、玄関前に辿り着きインターホンを押す。
「音琶ちゃん! いらっしゃい」
「お邪魔するよー!」
ご飯とか飲み物は結羽歌が事前に買い出ししてくれてたから、特に寄り道することもなかった。
「寒くなってきたから、暖かいお鍋しようと思ってるんだけど、音琶ちゃん嫌いな食べ物とか、ない、よね......?」
「え!? これ全部結羽歌が用意してくれたの? なんか申し訳ないな......」
「もう、遠慮しなくていいんだよ。一応、お酒だってあるんだし......」
「あっ......、私なんかが結羽歌と飲んで大丈夫かな?」
どうしてあんなこと言ったのかってのには理由はあるけど、それでも私の事情を知らない結羽歌に都合を押しつけるのはダメなことだってわかってた。
和兄は和兄で、結羽歌は結羽歌。全てを同じ目で見ちゃダメなんだよ。勿論飲み過ぎないのが一番良いんだけどね。
「何言ってるの音琶ちゃん? 私は音琶ちゃんと飲みたくて仕方が無かったんだよ」
「そ、そうだよね。何言ってるんだろ私」
「もう、音琶ちゃんらしくないよ」
優しく微笑む結羽歌と、恥ずかしさで顔が赤くなる私。
なんか二人の立場が逆転したみたいになっていたけど、たまにはこういうのも、悪くないのかな。




