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俺のドラムは少女のギターに救われた  作者: べるりーふ
第23章 掟を変えるその日まで
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敵味方、誰を信じればいい?


「なるほどね、それでお前は鳴香達と......」

「うん、そうなんだ」


 部会が終わり、今回はパート毎の飲み会ということで兼斗先輩の部屋に入っていた。

 いつだったか先輩の名前を忘れていたという理由でアホみたいに飲まされた場ではあるが、今回もまた何か仕込んでいるのだろうか。

 そうでないことを願うばかりなのだが。


「これでようやく全員が演者として揃ったってことだな」

「は、はい......」


 乾杯の用意が出来たらしく、ストゼロ片手に兼斗先輩が尋ねる。その隣に座っている榴次先輩が持っているのはチューハイ、俺と淳詩はソフトドリンク。

 先輩と後輩で飲み物が違うと、まるで地位や権力の違いを示しているみたいで腹立だしい。と思っても俺は絶対にこいつらと酒なんて飲みたくないけどな。


「そしたらさ、折角バンド組めたんだから、意気込み一つ言うごとに焼酎一杯ずつ飲むんだな」

「えっと......」

「昔から祝い事は酒から始まるって言うだろ?」

「......」


 思わず兼斗先輩から目を背け、淳詩を守るために何をしたらいいか考えることにしたが、この化け物の機嫌を損ねずに解決なんて出来るのだろうかと毎回思う。


「別にジュースでも充分祝えますよ」

「お前は少し黙ってろ」

「無理です、嫌がってる人に無理矢理させる先輩がまずは静かにするべきです」

「ああ、そうか。お前もまだまだ教育が必要のようだな」

「......!」


 ゆっくりと立ち上がり、焼酎の瓶を俺の手元にあったグラスの中に注ぎ込んだ。


「ほら飲めよ、いつまでたっても乾杯が出来ないだろ」

「別に俺には祝われる出来事がないんですけど」

「うるさい、口答えするな。先輩の酒も飲めない奴が」


 イライラが止まらない、流される淳詩に見てるだけの榴次先輩ときたからにはこの場に俺の味方をしてくれる人が居ない。

 誰も俺を見てくれないこの場所こそが、本物の地獄というものなのだろうな。


 ***


 ボーカル同士の飲み会ってことになって、聖奈先輩の部屋に行くことになったけど、やっぱりお酒買わないとダメっぽいね......。

 私と光と杏兵先輩、そして聖奈先輩で買い出しをして、軽食や飲み物を買ったんだけど、私以外誰一人ジュースやお茶、水すら買ってなくて、特に何か言われたわけじゃないけど私もチューハイを買う羽目になってしまった。


「音琶も、飲むんだ」

「う、うん。一応......、ね」

「そっか、楽しい飲み会になりそう」

「えっと......」


 日本酒の瓶をカゴに入れながら話しかける光。弾き語りの腕前がすごくて、ボーカルの練習にも付き合ってもらった縁があるけど、光の飲み方も先輩の飲み方を彷彿とさせるもので、決して強要してくることはないんだけど、飲む量が多いせいで先輩から気に入られてしまっている。

 光、大丈夫かな......? お酒にも先輩にも飲まれたりしないよね?


 ・・・・・・・・・


「えー!? 音琶、夏音とバンド組まないの!?」

「いや、近いうちにまた組みたいとは思ってますけど......」

「そっかー、学祭なんて1年に一度の一大イベントだっていうのに勿体ないな~」

「色々あったんですから、仕方ないんじゃないですか?」

「ひ、光!?」


 飲み会が始まって間もなく、聖奈先輩が私と夏音の関係について探ろうとしてきたけど光が入ってきて止めてくれた。


「音琶だって二つのバンドを掛け持ちしていて、夏音は一つだけとはいってもポスター係、それに加えて夜勤だってしている。サークル以外でも予定に囚われて余裕が無いんだと思う」

「そ、そうそう! 夏音のやつ、毎日大変そうにしているもん! だから私が何とかして支えてあげないといけないんだ!」


 思わず慌て気味に答える私だったけど、聖奈先輩と光は目を丸くしてこっちを見つめていた。何か私変な事......、言ったかもね。


「毎日......? 何とかして支える......?」

「あっ......! えっと......!」


 平静を保とうとしてテーブルに置いてあるチューハイを一気に飲み干す。ってこれ、前飲んだ時よりも苦く感じるんだけど?

 ってこれ......、


「ストゼロ......?」


 私が買ったのは4%のチューハイだったはずなんだけど、こんなの買った覚えないんだけど。


「音琶引っかかったー!」

「えっ?」


 聖奈先輩が私を指さしながら嬉しそうに言った。まさか......、


「たまたま音琶のと私のが同じ味だったからこっそりすり替えてたんだよ、いつ気づくのかなって思ったけどまさか飲んでからやっとだなんて! やっぱり音琶は面白いよ!」

「......」


 やられた......、という感情よりも嫌気が差す方が早かった。どうしてこの人達はお酒を玩具としてしか扱えないの?

 和兄だって、そんなことしたくてここに入ったんじゃないんだよ?


「これは私からのプレゼントだから、有難く飲んでね! 先輩からのお酒なんだからさ!」

「は、はい......」


 頷かなかったらどうなっていたんだろう......。それに、いつまでこんなのが続くんだろう......。


 助けてよ、夏音、結羽歌、琴実......。

 分かり合える人達がここに居ないだけでここまで不安にさせられるのは、まるで去年までの私に戻っちゃったみたいだな......。


「音琶ももう少し、先輩達との距離を縮めようと努力した方がいい。ボーカルだってあそこまで出来るようになったんだから、音琶なら大丈夫」

「光......」


 光も、私より先輩の思ってることの方が正しいって判断してるんだね。


 味方だって、思ってたのに......。

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