組み合わせ、組んで組まれて
私の出した答え、それは......、
「先に言わせてもらうけど、私はあなたが好きじゃない」
我ながら何を言っているのだろうと思ってしまうような前振りだったけど、正直な気持ちは伝えるべきよね。
「だけど......」
決心はしている、あとはそれを言葉にすればいいだけ......!
「あなたとなら、もう一度組んでも悪くはないって......、思うわよ......」
恥ずかしながらに本音を伝える。嘘なんてついていないのだから、これでいいのよね......? さっきから動揺が凄いのだけど......。
「鳴香......」
大きく目を見開いた琴実と、ソファに座りながら無言で頷く聖奈先輩。
琴実は期待していたんじゃいの? それなのにどうしてこんなにも不思議そうに......。
「鳴香、あんた......、本当に、私のベース、認めてくれたってこと?」
「な、何回も言わせないでよ......」
「私とまた組んで、いいのよね!?」
「いいって、言ったばかりじゃない......」
「本当の本当に、いいのよね! 後からやっぱダメとか言っても聞いてあげないんだからね!」
「何回も言わせないでって言ってるでしょ!」
ギターを抱えたまま、強い口調で琴実に返事をする。恥ずかしいから、自分の素直な気持ちは1回だけにさせてよ......、どこまで理性が保つかもわからないのに。
「後戻り出来ないんだからね! 私のベースについてきなさい!」
本当に調子良いのだから、琴実は。
言っておくけど、あなたのベースの全てについていく気はないわよ、私のギターの支えにはなってもらうけどね。
「琴実、まだ私達にはやらなくてはいけないことがあるわよね。まずはそっちを優先しなさい」
「やること......?」
「私とあなただけでどうやってバンド組んでいくのよ、まあ私が弾き語りやるのなら話は別だけど。誰かにアコギ借りるか新しく買うかのどっちかになるけど、お金足りるかしらね」
「あ......! いや、鳴香はエレキだから」
「だとしたら、最低でもドラムは必要ね。最悪私がボーカルやってもいいけど、今回はギターが二つあるバンドが組みたいって思ってるのよ」
動揺する琴実はさておき、本当にこれからどうやって学祭までやっていけばいいのかしらね。ドラムならまだあてがあるにしても、ボーカル担当の部員はみんな他にバンド組んでいるわけだし、掛け持ちさせるのはどうも抵抗があるのだけど......。
「ボーカルなら、ここにいるじゃないのよ、鳴香」
「はっ......!」
ソファから立ち上がる聖奈先輩、自信に溢れた顔で私と琴実を見つめている。
「鳴香はリードギターがやりたいんだよね。だったら任せて、私が鳴香を支えてあげる」
「聖奈先輩......」
「因みに、ドラムはあいつを誘えば確実にOKしてくれるから心配しないで。鳴フェスの時に悩み聞いたんだから」
「あいつって......」
何となく誰のことを指しているのは想像つくけど、一応聞いてみることにする。
「最近PAを苦戦しながらも頑張っているあいつのことだよ」
「......!」
「酔った勢いでバンド組みたいバンド組みたいって話してんだよ、先輩として後輩の細やかなお願いくらい聞いてあげないとねっ!」
私のあてが聖奈先輩と一致していた。これであの時のバンドが新たなものとして復活する......、という事実が脳裏を掠め、嬉しそうな顔をする琴実は期待に胸を膨らませているようだった。
「あ、淳詩やるってさ。そしたら私達は学祭出演決定ね!」
「早っ!」
驚く琴実と無言で呆然とする私。やっぱりこの場所は変な人ばかりだ、だけどまだついていってやってもいいかな、とは思えた。
だって私だって、ギターを弾くのが好きなのだから。
好きなことへの視野が広がるのは必然なのかもしれないわね。




