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俺のドラムは少女のギターに救われた  作者: べるりーふ
第21章 心の穴を埋めたい
317/572

微変、普段と違うところ

 ***


 授業が終わったら一度ギターを取りに行って、すぐに部室に向かう。ちょっとでも遅れたら茉弓先輩が何を言い出すかも知れないし、ギターを抱えながら走るのは大変だけどこれも自分のため。

 夏音と組んでいるバンドが無くなってしまったけど、いつか必ず組めると信じているバンドの為にも本気の気持ちを忘れないように掻き鳴らさないといけないんだ。


 きっとまだ、時間は与えられているはずだよね?



 リードギターの役割と言えば、イントロとサビと2サビ終わりの後のソロと、そしてアウトロ。

 AメロやBメロではそこまでフレーズがあるわけではないけど、いざ弾くとなれば難しい部分が多くて大変かな。

 簡単に言えば、体力のバックギター、技術のリードギターって言った方がいいよね、バックギターは歌いながら弾く場面が多いんだし、全身の力を振り絞らないと上手く演奏出来ないんだもん。

 私自身が夏音とのバンドでそうしていたんだから、歌いながらギターを弾く人の気持ちはよく分かる。


 この際ピンボーカルでバンド組んでみても、楽しかったり......、ううんダメダメ! ギターで組まないと夏音と最高のバンドが出来ないよ! 楽器なら何でもいいから組む、なんて間違ってるし、私はギターで夏音はドラム、それが成立しないとやり切れないよ!


「音琶、本気が限界突破しそうだよ、本番は曲の終わりにみんなで飛び跳ねようかななんて考えてるんだけど、ちゃんとやってくれるよね?」

「え......? 飛び跳ねるってどういう......」


 小一時間経過して、持参していた天然水を飲む私に茉弓先輩が提案を促してきた。


「言葉の通り、榴次のドラムロールが終わったタイミングで4人顔を合わせて飛び跳ねる演出をしようってことだよ。あ、勿論ドラムである榴次は飛び跳ねないよ、その代わりに両手でシンバルぶっ叩くけどね~」

「......」


 最後の不穏な一言はともかく、確かに鳴フェス行った時最後に飛び跳ねているバンドが多い印象があったな。

 私達もそれをやろうってことか......。うん、やってみたい。なんか凄い楽しそうだし、やり切った後にメンバーと一体化出来る感じが......?

 うーん、この人達とは別に一体化出来なくてもいいんだけどな、なんか練習も別段楽しいわけじゃないし......。

 やっぱり、夏音と結羽歌が居ないと私の中の満足度が全然上限に達してなくて、早くこの練習終わんないかな、なんて思ったりしている。


 音楽という言葉に不釣り合いな感情にさせられていたけど、結局私は......、


「そ、そうですね。やった方がライブ盛り上がりそうですし、楽しそう......」


 思っていることと真逆のことを言ってしまった。

 茉弓先輩の意見なら、些細なことでも肯定しないと後々痛い目に遭うんじゃないかと思うと怖かった。


「流石音琶、音楽の重要性が分かってる~!」

「そんなこと......、あるかもしれないですね」


 言ってることと思っていることが一致しないことの苦しみをきっとこの人は理解していない、だからこうも勝手に人を良くない方向に巻き込んでしまうんだ。

 学祭、あんまり楽しみじゃなくなってきたな......。夏音と一緒に屋台廻るのはこの上ない望みだけど、サークルにとっての本番は何のためにあるんだろうって思ってしまった。


 ・・・・・・・・・


 何でだろう、部室に居る時はあんなにも気分が重かったのに、夏音の部屋の前だと入る前から胸が高鳴っていた。

 私はこれからもずっと夏音と居たいって思っているし、一生離れたくないと心に誓っている。そんな人と毎日同じ屋根の下で暮らしているなんて、まるで結婚しているみたいなものだったり......、


 ......浮かれてちゃダメだよね、もっと現実を受け入れないと......。


 一応ポストの中を確認したけど鍵が入っていたから夏音は外出中かな? さっきからお腹が鳴っているからそろそろ戻ってくるとは思うけど、ポスターのこともあるし余裕が無いとかだったりして。


 分かってはいたけど夏音は居なかった。書き置きとかはないし、買い物でもしてるのかな、冷蔵庫の中も少なめだし。


 上川音琶:戻ったよ~! 夏音は今どこにいるのかな??


 帰りの連絡を入れておいて、リビングを見渡す。

 私の部屋と似た間取りで、家具は少ない。だけど、いかにも男の子って感じの雰囲気が出ていて、ふわふわした感じは全くない。

 私も一人っ子じゃないから和兄と過ごした部屋と少し既視感があって、あっちはもっと色んな物が置いてあった。年頃の男の子の匂いが流れていたからちょっとくすぐったい。


 滝上夏音:すまんな、図書館で課題やってた。すぐ帰るから待ってろ


 スマホが振動して夏音から返信が来る。

 夏音、図書館行ってたんだ、講義の課題とかは基本ここでやってたから珍しいな......。普段サークルの課題とか簡単な会議とかだったら図書館の小部屋使ってたのに。

 でも、私から連絡が来たらすぐに掛けつけてくれるなんて、やっぱり夏音は優しいよ、世界で一番優しいよ。


「ふふっ、ありがと」


 思わず声に出して笑っちゃったけど、本当に感謝しているんだからね。


 いつもありがとうね、夏音。

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