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俺のドラムは少女のギターに救われた  作者: べるりーふ
第3章 臆病者に助言はいらない
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少女、どんどん増えてく

 4月28日


 世間ではゴールデンウィーク期間であるというのに、月曜日だからという理由で授業があるというのはどうも納得がいかない。

 明日は祝日だから休み、それからまた3日間は学校、その後は6日まで休み。

 この日程は調子が狂うからいっそのこと全部休みにしてしまえばいいのにな。


 午後からの授業、もし昨日夜勤があったら起きれてただろうか。

 ここ最近の生活リズムは以前より遥かに狂っている、だからこそ授業に影響するようなことがあったら非常に困る。


「何難しい顔してんだよ」


 横から日高が俺の表情を伺いながら問いかけてきた。


「別に、最近の行いを振り返ってただけだ」

「なんだそれ」

「色々あって疲れてんだよ」

「まあそうだよな、お疲れさん」


 適当に返しただけなのにそれなりの反応をしてくれるなんて、俺は良い友人をもったものだな。

 それにしても......。


「この二人は一体何なんだ、まあ結羽歌はいいとして」


 日高の右隣には結羽歌が座っていて、さらにその右隣には名前の知らない、黒髪を肩まで下ろした少女が座っていた。

 いつも授業の時、前の方で結羽歌の隣にいる奴だってことは知ってるけど、今日はなぜか俺と日高がいつも座ってる列にいる。


「私のこと? 私は立川(たちかわ)千弦(ちづる)。同じクラスだから仲良くしてね」

「滝上夏音、結羽歌とは同じサークル」

「結羽歌から話は聞いてるよ~。なんかドラムすごい上手いみたいじゃん」

「そうでもないけど」


 まさかサークル外からでもここまで口数が多い奴に巻き込まれるなんてな、しかも若干音琶とキャラ被ってんぞ。

 もう少し物静かで、尚且つ常識的な女はこの大学には居ないのかもしれないな、結羽歌以外は。


「私も軽音部入っちゃおうかな~」

「やめとけ」


 思わず即答。

 ていうか今から入っても大丈夫なのか? 他のサークルならまだしもあそこは途中入部とか認めてなさそうだし、もう部費も払ったし、掟に書いてた記憶はないけどどうなのだろうか。


「おいおい、別に俺に気使わなくてもいいんだぞ」


 別に日高のために言った訳じゃないけどな。

 辞めたやつの目の前でサークルの話するのもそれはそれで抵抗あるけど。


「私やるとしたらボーカルやりたいんだ、今からでも大丈夫だよね? 楽器もいらないからお金もかかんないし、一石二鳥だよ!」


 ボーカルね、生憎俺のバンドにはボーカルが既にいるんだな。何が一石二鳥なのかは知らんが。


 他の奴らがどれくらいバンドの話進んでるのかわかんないけど、ライブは6月の予定らしいから今からでも決めとかないときついよな。


「俺に聞いてもな、直接部室行きな」

「えー、結羽歌の話だと見学期間以外だと部外者は行けないみたいだよ? だから君にも聞いてるのに〜」


 掟に書いてたかそんなこと。

 まあいい、あとでまた読み返すとしよう。


「わかったよ、先輩に聞くけど駄目だったら諦めろよ」

「はーい」


 やたらと元気の良いこの少女はどんな歌声なのか、少し気になった。


「あ、そうそう」


 次はなんだ。


「私もこれからここの席座っていいよね?」


 ......マジですか。

 俺は静かに授業聞きたいんだけどな、最初の方は真面目に授業聞いてた奴らもいつの間にかスマホ触り始めたり、居眠りしたり、堂々と雑談してるのが増えてきてはいるけど。


 そいつらは何のために高い学費抱えてるんだろうと疑問に思う。

 この立川千弦という女がどこまで授業に聞く耳を持ってるかはわからないけど、性格上面倒な奴なのは百も承知だ、ましてや軽音部に入りたいなんて言っている。

 そんなやつが俺と3つ隣の席に座りたいなんて言っている、日高はどう思っているのだろう。


「なあ滝上」

「あ?」


 隣で日高に呼ばれ、視線を移す。


「お前また色々考え込んでるだろ。あんま難しくならなくていいんだぞ」

「はあ」

「立川がサークル入りたいって言ってるんだからそこは喜ぶべきだよ、お前は良い奴なんだから勿体ないぞ」


 何が勿体ないのか理解できないけど、こいつに言われると謎の説得力があるからどうも否定できない。


「別に、俺はただ思ったこと言っただけだ」

「へえ、でもこのままだとお前は気づかないまま卒業しちゃうのかもな」

「は? 何のことだ?」

「いや別に、まあお前にはまだ早いかな」


 俺が何に気づいてなくて、何が早いのか全くわからなかった。

 今思えば、なんでこんな長い間気づけてなかったのか逆に疑問に思うくらいだけど。

 

 ・・・・・・・・・


「授業終わった~。このあとどうする?」


 帰り際、立川が身体を伸ばしながら一人呟いた。


「一応、部室覗いてみるか?」


 別に立川のことを思って言ったわけじゃない、あくまでサークルに入る覚悟があるのか試してみただけだ。


「うーん、結羽歌の言ってたことも気になるけど、見学なら大丈夫だよね」


 日高は自分が場違いだと悟ったのか先に帰ってしまった。

 今は結羽歌を含めて3人で居る。


「夏音君、一応連絡はしよう?」


 結羽歌はこの前の鈴乃先輩の話から掟を気にかけているんだろう。

 これからサークルを変えるのなら、減点食らわないためにも今は従うべきなのだろうか。


「そのほうがいい、かもな」


 とは言ったものの、やっぱりこの体の相談をできる相手はあの人しかいないわけで、とりあえず新しく入りたいって言ってる人がいるとだけ打ち込んで返信を待つ。


「流石に入れるとは思うけど、あの人達のことだからどうなんだろうな」


 正直信用ならない、部長に至っては入りたての部員に平気で怒鳴るような人だ。

 まあそれは俺らの責任でもあるけどな。


 数分もしないうちに返信が届いた。

 

 RINO:うーん、部長に聞いてみるね


 微妙な反応だなこれは。

 別に入った直後に部費払えばいいと思うし、そこまで悩むような問題とは思えないけどな。

 第一新入部員が入ってからまだ10日しか経ってねえだろ、だからこそあのサークルは異常なんだよ。


 RINO:まだ部室に入れないでね! てか入れてないよね?


 直後に追加で返信が来た。

 どうやら部室に行く前に連絡を入れたのは正解だったようだ。


「ねえ、まさか入れないとかじゃないよね?」


 やや不安そうに立川が聞いてきたが、ここは何て返せばいいんだか。

 

「わかんねえけど、まあ何とかなるだろ」


 適当に返した言葉、何のフォローにもなってなかった。

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