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俺のドラムは少女のギターに救われた  作者: べるりーふ
第20章 RAINY NOTES
297/572

気づけない、居なくなった理由

 ***


 9月22日


 俺が求めていたライブって何だったっけ。


 ずっと考えていた。やりたかったことも、目指していたことも叶わないまま夏休みは終わった。今日からまた授業が始まる。

 普通の人なら授業は憂鬱に感じることだろう。だが、俺はサークル活動より授業の方がずっと楽に感じてしまっていた。俺だって限界に近いのかもしれない、どうしてこんな想いしなくてはいけないのか、という気持ちが強くなっていって、目指していたことを一気に壊されてしまった感覚は心の奥に大きく刻まれる形となっていた。


 一昨日の出来事、俺が音琶から説教を受け、本気でライブに臨もうと思っていた矢先の出来事だ。

 ライブハウス内に戻った俺と音琶だったが、結羽歌がトイレから出てこようとしなかった。体調が悪いだとか何だとかでとてもライブできる状態じゃないだとか言っていたが、本当にそうだったのだろうか。

 俺がいない間に何かあったのは明確だったのだが、琴実もまるではぐらかしたかのような返事しかせず、そのままライブは結羽歌が居ない状態で続くことになったのだった。

 当然Wirlpoolは欠場になったし、トリのバンドの時間まで結羽歌は出てくることはなかった。片付けには参加していたが、明らかに何かがあったとしか思えない表情をしていたし、琴実と一切会話をする場面が確認出来なかった。





 昨日の話


 9月21日


「結羽歌だが、サークルを辞めることになった。突然の話だが、明日から学校始まるし、気を抜かずに活動することを心がけろよ」


 部長の言葉で初めて知った。あいつは、鈴乃先輩のように、俺らに何も言うことなくサークルから姿を消してしまった。


 音琶も琴実も、信じられないとばかりに呆然としていて、演奏に集中すら出来ていなかった。

 俺は20日の本番前に何があったのかを知らない。出るはずだったバンドも出番はなく、俺はただ鳴香と茉弓先輩と組んだバンドでしかステージに立つことはなかった。


 音琶と奏でられない音楽は、こんなにもつまらないものだったんだな。


 ・・・・・・・・・


 そして現在......、


 後期の最初の授業は2限目から始まる。いつものように後ろの席を狙っては授業開始の時間までスマホを触っていた。そんなとき......、


「久しぶりだな、滝上」

「......」


 祭りのライブ以来だろうか、となると大体1ヶ月くらいこいつとは会ってなかったってことになるよな。昨日の部室でのライブで音琶から聞いた話だが、結羽歌がああなってしまった原因の一つがこいつだってことを知った。

 当の本人は全くそのことに気づいてないみたいで、立川と付き合ってからは周りが見えてないようだ。頭の中が花畑になっていて周りが見えてないんだな。今だって立川と一緒に通学していたみたいだし、全く何も知らないということが窺えた。

 全く、人間という生き物はどこまで愚かなのだろうか。


「おいおい、どうしたんだよ。素っ気ねえぞ。あ、いつものことだったか」

「うるせえ......」


 俺らの間で何があったかも知らないで、気楽に平気に話しかけられるのは仕方ないにしても、結羽歌が教室に全然現れようとしないことに違和感はないのだろうか。あいついつもお前より早く教室来ているだろ。

 立川も日高の隣に座っているが、全く結羽歌のことは気に掛けてない様子だった。大学生になって出来たとっても素敵な彼氏様に夢中で大事なお友達に気づけてないのだろう。なんて残酷な話なのだか。


 結局、授業開始の時間になっても結羽歌の姿はどこにもなかった。必修だってのに、あいつは何やってんだよ本当に。留年したいのかよ、本当に......。


 お前の意思は、その程度のものだったのかよ、ふざけんなよ。

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