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俺のドラムは少女のギターに救われた  作者: べるりーふ
第20章 RAINY NOTES
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PA、声の特徴

 ベース、ギターともドラムほど時間がかかることはなかった。だが、問題はボーカルだ。

 ボーカルのマイクを持って声を出すのは音琶がすることになっているから、実質俺が一人でミキサーを操作する。淳詩も勿論音琶が元居た場所に座っているが、手先が震えていて見ていられない。

 後でこいつにはもっと自信持ってもらうように言っておかないとそろそろ先輩がうるさくなる。そうならないためにも何か対策を考えておかないといけないな。


 音琶がステージに立って真ん中のスタンドに掛けられているマイクを手に取る。ただコーラスも入るからリードギター、ベース、ドラムにも置かれているマイクの調整だってしなくてはいけない。そこは上手くリバーブ掛けていけばいいだろう。

 あとは上手側と下手側での聴こえかたの問題だが......。


「あ......、あー......」


 マイクがONになっていることが確認できたら音琶が適当に声を出し始める。それを聞いてツマミを上げたり下げたりする。結線の時既に音が出ることは確認済みだからあとは声の調整さえ出来ればリハーサルに突入できる。今のところ時間通りに事は進んでいるから上手くは行っている。ほとんど俺と音琶のおかげなんだけどな。

 この時重要なのが、PA側からOKのサインが出るまで声を出し続けないといけないということだ。途中で声出しを止めてしまっては調整のしようが無くなってしまう。最悪の場合一からやり直しだ。

 当然ながらこの世界に全く同じ声の持ち主は居ない。高い声や低い声、大きな声や小さな声。掠れた声やボリュームのある声等々、十人十色である。

 音が出るかどうかの確認なんて誰だって出来る。だが、同じような声でしか確認を取らずに本番を迎えると思わぬトラブルに繋がり兼ねないし、音割れの原因にもなることがある。

 音琶はそれを理解しているから、出せる限り様々な声を出していき、それに合わせて俺も音を調整する。それを見ていた淳詩は興味津々に俺の手先や音琶に集中している。この集中が行動に表れればもっといいのだがな、初心者には難しい話だからな。


 ・・・・・・・・・


「夏音、ありがとね」

「ああ」


 全てのパートの音響の調整が終わり、あとはリハと本番も迎えるだけになった。リハの準備のために戻ってきた結羽歌から昼食のハンバーガーを受け取り、音琶と丸椅子に隣同士座りながら束の間の食事を楽しむ。


「でも、まだまだこれからだよ!」

「そんなことわかってる」

「いっぱい練習したもんね」

「そうだな」

「風邪引くくらい、私がどうにかしないといけないくらい、だもんね」

「そうだよ」

「さっきから似たような返事ばっかり......」


 あんまり練習の話されてるものだから、こう見えても俺が緊張していることに何も気づいてないんだなこの女。いや、気づいてたとしてもこいつは俺の期待に反する行動をするから、今のは音琶の中の常識の範囲なのかもしれない。


「だったら、俺が今どういう感情なのか当ててみろ」


 片手でハンバーガーを持ち、そのまま音琶に問いかける。疑うということを知らない様な無垢な瞳で音琶は俺を見て、栗鼠のように膨らんでいた頬を元に戻すと、こう言う。


「失敗したらどうしよう、大事な人の理想の音を出せるかな、でしょ」


 そして微笑み、再び半分になったハンバーガーを頬張る。

 全く、本当に油断の出来ない奴だ。全く同じことを思っていたから、少し鼓動が早まる。だが、嬉しさのほうが勝っていて......、


「は、早く食べろよ。リハそろそろ始まるぞ」


 無理矢理全て食べきり、俺は立ち上がる。さっきから茉弓先輩が俺と音琶の方をずっと見ていて、何を話しているのか聞き耳立てているように感じたし、少しでも怪しまれないように今は目の前のことに集中しなくてはならない。

 どうせライブ中も幾度かPAのヘルプに入ることになるだろうし、俺に与えられた時間がどのタイミングにあるのかも把握しておかないといけないが、Wirlpoolの時間は淳詩がPAやらないと人員が不足してしまう。俺のバンドでのPAが上手く行かなかったら流石に淳詩に一言言おうとは思っているが、果たしてどうなるものだか。どうせ先輩は禄にサポートしないだろうし。

 何はともあれ、先が思いやられるというか、色んな意味で不安だ。

 よくよく考えてみれば、新入生ライブのPAは先輩達がほとんどの割合でPAや照明をしていたから上手く行っていたのだろう。でもまあ、大して良く出来ているとは思わなかったけどな。

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