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俺のドラムは少女のギターに救われた  作者: べるりーふ
第20章 RAINY NOTES
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PA、思いがけないヘルプ

 部員が昼食を食べに外に出て行く。そんな中俺や音琶は......、


「夏音と音琶、こいつのPA手伝ってやれ」

「はい?」


 浩矢先輩に呼ばれ、これから音琶と共にどこか昼飯を食べに行くか、それとも適当に軽食を食いながら鳴成市の街を歩き回ろうと思っていたという計画は無惨にも破れる。


「お前らしか居ないんだよ、他の1年はまだ経験浅いからな」

「だったら武流や光に任せればいいじゃないですか」

「いや、あいつらは楽器専門でこういった作業はあまり任せれないんだよ」

「だったらあの2人にそれを教えてあげるいい機会なのではないですか?」

「今は経験者に任せるのが一番手っ取り早いんだよ」

「......」


 先輩なんだからあんたらが後輩支えろよって言いたかったが、そうだよなこいつらPAを人に教える技術もやる気も無いんだったよな。そんな奴らに任せたらよっぽど駄目なライブになるよな。


「仕方ないですね」

「夏音!」


 俺がそう言うと音琶が小声で俺に叱責し、左足を踏んできた。痛いだろ。


「あー、はいはいわかったよ」

「もう......」


 別に無礼だとは思ってないが、俺の現状を心配している音琶のことだ。俺が先輩と話しているだけでソワソワしているんだろう。


「分かったなら良い。早く取りかかれ」


 敢えて返事をせずに卓に向かい、大量のツマミや端子、そしてチャンネルを見つめる。種類は違えどこの構造も嫌と言うほど見てきた。自然と手も動く、何をどうすればいいかは音を聴いてみないとわからないが、身体が全てを覚えてしまったのだ。


「あ、あの、夏音君、音琶ちゃん......」


 音琶と並び、淳詩がドラムの音作りのためにセットに向かう最中、さっきまでのやり取りを見ていた結羽歌が話しかけてきた。

 どうした?お前も混ざりたいのか?


「お昼ご飯、2人の分、もし良かったら......」


 少し恥ずかしそうに尋ねてくる。そう言えばPAや照明関連の奴は飯をどこかに食いに行く時間が設けられてないから最初から簡単な軽食用意しているんだったよな。

 まさかこんな雑用することになるとは思ってなかったから結羽歌には後で礼を言わないといけないな。


「あ、そしたら私ハンバーガー食べたい!ここから歩いてすぐのとこの!」


 こんな状況だというのに飯の話になった途端元気になる音琶。さっきまで俺に説教臭いことしてたってのに。


「うん、わかったよ。夏音君は、何がいいとかある?」

「音琶と同じので」

「そっか、ありがと」


 確認が取れたら急ぎ気味でライブハウスを出る結羽歌。何でお前が礼を言う必要があるのだか。


 ・・・・・・・・・


 当たり前だが電源は付いている。この段階でまだ素子はゼロだし、全てのケーブルも繋がっている。後は淳詩がドラム叩くタイミングを見計らってドラムのチャンネルの素子を徐々に上げていく。

 イコライザーに関しては中音でいいと思うから今は淳詩の方に集中して音量を調整することにする。

 右手を上げて合図を出した淳詩はそれぞれのシンバルやタムの音を一つずつ出していく。それに合わせてこっちもマイクの音量を上げたり下げたり、サステインがなるべく聞こえなくなるように動かしていく。


「ここもうちょっと音大きくした方がいいと思う?」

「そうだな、これだとバランスが悪い」


 デジタルミキサーのツマミを色々調整しながら試行錯誤を繰り返す。本来なら淳詩がやらなければいけないことなのだから、今の俺と音琶がやっていることを少しでも参考にしてもらえたら幸いだ。

 まあ淳詩がこうなることは想定出来たし、部室にある小型のパワードミキサーで練習したところで上手くはいかないだろう。せめてならライブハウスで使うのと似たものを取り入ればいいものを......。

 それだと部費が足りなくなるのか?あんなに払わせておいてそれはないよな。


「うん、そしたら......。よし、これでもう一回お願いします!」


 ドラムセット前に立っていた淳詩が音琶の合図でスローンに座り、再びドラムを叩き出した。


「あ!上手く行ったね!」

「そうだな」


 割と早く済ませられたのは俺と音琶のおかげだってことくらい先輩達は感じてもらいたい。他の奴に任せてたら倍以上の時間が掛かっただろうな。


「そしたら次はベースの方頼む」


 早く終われたから結羽歌の帰りを待ちながら他愛ない話くらい音琶としたかったのに、どうやらそう事は上手く行かないようだった。

 正直、ここまでさせるのなら部費から給料を出して欲しいくらいなのだが。


「え、えっと......。私もっと夏音のことサポートするから、よろしくね!」


 苦笑いをしながら音琶は俺に告げる。まあ、音琶が支えてくれるなら、こっちも何とかしなくてはいけないな。どうせボーカルは音琶が声出すんだろうし。

 音琶の為なら、と考えればこの鬱陶しい作業も少しは楽しいものになるのかもしれないな。

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