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俺のドラムは少女のギターに救われた  作者: べるりーふ
第19章 115万Mbに届かなくても
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女子会、頑張る理由


「にしても、これから直接話し合うならここくらいしかないわよね」

「うん......」


 グラスを拭きながら琴実が呟く。確かに監視されている以上先輩達の目に付かない場所でどうにかするしかない。だとしたらここに辿り着くまでに見つからないようにしないといけないし......、


「私がシフトの日がいつなのかはあんたらと、夏音にも伝えておこうって思ってるんだけど、もし先輩達がこの店に来たらどうしようもないし、どうしたものかしらね」

「うーん......。でもまだチャンスはあるから、先輩達に見つからないためのルールとか決めておかない?」

「ルール......、ね......」


 サークルの掟はどうでもいいけど、夏音と住む間は簡単なルールがあるわけだし、これからどう行動していくかについての決まりくらいはあってもいいと思う。

 自分を守るためにも、仲間を守る為にもね。


「鈴乃先輩と一緒に居る所を見られたってことだし、私達が繁華街に行くとこ見られたらあの時の二の舞になりかねないかな?」

「ってことは、私がシフトの日に基本集まると仮定して、音琶と結羽歌は時間をずらして来てもらえばいいのかしら?」

「えっと......、そうなるかな。私と結羽歌が仲良いことはサークルのみんな知ってることだし、夏音ともここは要相談で......」

「えっと......、うん。その方が、いいかな」


 結羽歌も賛成してくれたみたいで、あとはどのルート通って行けば良いかって話だけど、毎回同じルートだったら見つかったときに怪しまれ兼ねないし、最悪追いかけられて店の中で鉢合わせする可能性だってある。

 うーん......、どうしたらいいんだろう。こういうときに夏音が居てくれたらすぐに解決出来るんだけどな。


「例えば、Twitterの呟きをこの時間はしないとか、それか全く関係無いことツイートして惑わすとか!」

「ってか音琶、あんた先輩達フォローしてるの?」

「え?うん、一応」


 私の言葉に琴実が怪訝な表情を浮かべる。まるで正気?とばかりの表情で......。


「私、あいつらのことフォローしようとも思ってないわよ。音琶がどういう算段でフォローしたのか知らないけど、これって結構デメリットだと思う」

「えっ!?でも、もしかしたら弱みとか握れるかもって思ってさ」

「全く、Twitterでユーザーが自分の悪いとこつぶやくわけないじゃない。基本みんな自分のいいとこばっかつぶやくわよ、私だってそうなんだし」


 確かに、琴実のツイートってポジティブな内容ばっかりだし、まるでネガティブ要素がどこにもないように感じてしまう。

 私も一応そんな感じにツイートしてはいるけど、フォローしてくれるみんなはどういう風に感じているのかな?


「今更フォロー解除なんかしたら余計に怪しまれるからどうにもならないわね。ってかさ、こんなこと言うのも何だけど、音琶ってさ......」


 ごくり。琴実から込み入った話されることはなかったから思わず身構えてしまう。何を言い出すんだろう......。



「結構世間知らずなとこない?」



 世間知らず。琴実がそう言って私は昔のことを思い出しそうになってしまう。


「えっと、音琶ちゃん......」


 琴実がそう言った直後、結羽歌が私をフォローしようと必死になっていた。でも、そのフォローもあまり意味が無くて、私の過去を掘り下げるきっかけに成りつつあった。


「えっと......」


 私が世間知らずなのは、外に出ない時間がほとんどだったからで、まともに買い物も出来て無くて、音楽と勉強以外での知識があまりないということ。

 流行を追うためにみんなしていることを真似してはみたものの、SNSの使い方も未だによくわからないし、料理がほとんど出来なかったのも全部和兄に頼ってたからで、和兄が居なくなった後は適当に出前取ったりお父さんからもらった生活費や叔母さんが週一で来てくれたからどうにかなってただけ。


 結局私は自分で何かしようともせず、誰かに頼って何とかしてもらったからここまでやってこれていたんだ。


「ご、ごめん!なんかちょっと考え事してた!」


 思わず和兄のことまで思い出されて我に返るまで時間が掛かってしまった。気を紛らわすためにお酒を一気に飲み干して、琴実に新しいのを注文する。


「琴実!新しいの!」

「はいはい、青りんごね」

「うん!」


 氷だけになったグラスを受け取った琴実は、明らかに私に心配そうな顔を向けていた。


「音琶ちゃん、琴実ちゃんがさっき言ってたこと、気にしなくていいからね」

「えっ?別に気にしてないよ?」

「ううん、音琶ちゃん無理してる。でもあんまり、深く考えなくて大丈夫だからね」

「......」


 新しいグラスを取る琴実の背中は、まるで私と結羽歌の会話を聞いてないかのように堂々としていて、仕事に集中するのに夢中になっているみたいだった。


「ほら、あんたの大好きな青りんごサワーよ。あと、悪かったわよ」

「あ......」

「世間知らずなんて言って悪かったわよ。でも、もう少し良い方法探せるとは思うから、次私がシフトの時に夏音も居てくれたら心強いかしらね」

「うん......」


 琴実との食い違いが生じてしまった、のかな?

 でも、全ての人間が同じ感性を持っているなんてこと有り得ないから、私が気にしすぎなのかな?


「ほら、そんな暗い顔しない!この店は元気ない人が来るとこじゃないんだからね!」


 腰に両手を当て、琴実は私にそう言い放つ。

 そうだよね、折角飲むんだから、楽しまないとね!


「音琶ちゃん、私も少しは潰れないように努力したんだから、また音琶ちゃんと一緒に飲める日が来て嬉しいんだよ」

「結羽歌......」

「私達はあんたの味方だってずっと前から言ってるんだから、いちいち気にするんじゃないわよ。気にされたらこっちだって辛いんだからさ!」


 結羽歌も琴実も笑顔だった。みんな誰もが失敗を繰り返して大人になっていく。

 私だってそうなのかもしれない。なら、この二人とも、そして夏音とも、一緒に大人になっていきたいかな。


「二人とも、ありがとね。そしたら、気を取り直してもう一回乾杯してもいい?」


 青りんごサワーの入ったグラスを少し高めに持って、私は二人に言い掛ける。


「うん!しよう!」

「あんたと結羽歌となら、いくらでもしたいわよ」


 私達3人はそれぞれのグラスを高く持って、お互いの想いをぶつけるかのように、乾いた音を出し合った。


 部内でのライブはもう明後日。それまでの準備は着々と進んでいるから、あとは部に少しでも居やすくなるために頑張らないと!


 あれ......、私って、本当はギターを頑張るために入ったんじゃなかったっけ......?

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