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俺のドラムは少女のギターに救われた  作者: べるりーふ
第19章 115万Mbに届かなくても
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店先、魅せるべき姿

 9月18日


 私達大学生はまだ夏休み中だけど、高校生以下はもうとっくに授業が始まっているからライブハウスのバイトは土日以外はスタジオの予約やレコ等といった作業が続くばかりで、これといって大きなライブがあるわけではない。

 また今日も早めの退勤が許されて、洋美さんに駅前まで送られることになった。その後すぐに例の場所に向かうんだけどね。


 駅前から歩いて数十分。深夜に大人の人が集まるであろう繁華街に賑わうカジュアルバー、Casual Bar Gothic。

 赤と黒の看板が目印で、大人の夜のお店だってことは分かっている。でも、今日そこには私の大切な友達がいる。

 バイトで疲れ気味の身体を癒やすべく、お店の扉を開けて辺りを見渡す。

 綺麗に整えられた内装に木々の匂い。繁華街のお店であるにも関わらず、上品な雰囲気を醸し出していて私のような一線を越えたことすらない人にとっても行きやすい場所だった。

 そんな場所には、琴実と結羽歌が居て......。


「あ!音琶来たわね!これからガールズトークの幕開けよ!」


 ゴスロリ姿にツインテールという、誰が見ても可愛らしい姿に身を包んだ琴実は、私が店内に入ると同時にそう言い出した。ツインテは私も同じだけどね。


「全く、2人とも準備早すぎだよ」

「楽しいことに焦るのは当たり前のことじゃないのよ。私だって音琶が来ること心待ちにしてたんだから」

「音琶ちゃん、これは私達だけの宴なんだよ」

「う......」


 そっか、これだけのことしておいて、私にとっての居場所って決まってたんだよね。


「音琶のバイトが終わること、ずっと待ってたんだから!」

「音琶ちゃん、忙しそうだから、私もちょっと心配だったんだよ。同じバイト先で思うとこは色々あるけどね」


 結羽歌も琴実も、私のバイトの事情は分かっているみたいだった。


「し、仕方ないね。私だって二人と一緒に酔いたかったから、今日くらいは記憶無くしたっていいかな?」


 相変わらずなのかもしれない。二人にとっても記憶がどうとかいう話なのかもしれないし、私にとっても大変なことで、どうしようもないくらいのことなのかもしれないって.....。


「音琶も、別に無理しなくたっていいわよ」

「うん、音琶ちゃん、無理してる感じあるから......」


 そう、私は無理しているのかもしれない。辛いし、それを否定することすらも否めないくらいの......。

 でも、私は夏音も結羽歌も琴実も大切だし、誰かと反対の意見を持つことはできない。

 だったら.....。


「せめて今日は楽しむべき楽しむわよ」


 琴実の言ったことを筆頭に、私も結羽歌も、歌いたい曲を歌いまくっていた。

 こんな日常なんて、二度と続かないよね。でも、今が大事だって誰かが教えてくれた。なら、その今を大切にすべく琴実との関係も続けないといけない。


「ほら、音琶もギタボなんだから歌いたい曲歌わないと」

「う、うん!」


 琴実に言われた通りデンモクを受け取って私も選曲する。結羽歌は早いとこ決めちゃったみたいだけど、私も歌いたい曲を選ぶべくして少し迷って、何とか決める。


「お、音琶も結羽歌もいいの選ぶね~」


 メイド服姿の少女はそう言いながらその場を盛り上げようとしていた。気を遣われても、私は遠慮なんか求めて無くて......、


「音琶と結羽歌って、最高のセッションが出来ると思うのよ!」


 メイド服姿の琴実がそう言ってから私達もバンドを通しての想いが通じるきっかけになっていた。

 これが全てだとは思わないけど、私にとっての転機になるなら嬉しいかな。夏音にも伝えておかないと.....!

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