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俺のドラムは少女のギターに救われた  作者: べるりーふ
第17章 或る街の日常
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看病、風邪に効く食べ物

「夏音、お粥できたよ」

「あぁ、すまんな」


 目をトロンとして私が運んだお粥を眺める夏音。弱った姿も可愛いな...。いや今はそんなこと考えてる場合じゃないけど。

 料理なんて全然したことなかった私だから、お粥を作るだけでも結構な時間が掛かってしまった。こういうときのためにも普段から簡単なご飯くらい作っておけば良かったかな。


「ごめんね、待たせちゃって」

「いや、無理させて悪かったな」

「もう、これくらいさせてほしいよ」


 こんな時でも優しい夏音だけど、私の事より自分の身体を心配してね。


「あ、起き上がらなくていいから!」


 ミニテーブルにお粥を置いてスプーンを用意しようとした瞬間、夏音は徐に起き上がり自分で食べようとしていた。そんな無理しないでよ、夏音の辛そうな姿は見たくないんだよ、可愛いけどね。


「......」


 焦点の合わない目で私を見つめ、お粥の中に手を突っ込みそうになっている夏音を止めるべく、何とかして夏音をベッドに戻す。


「ちゃんと食べさせてあげるからね、今日くらいは私に甘えてよ」


 本当は毎日甘えて欲しいけど、素直になれない夏音はこういう時くらいでしか私を頼ろうとしないだろう。風邪引いた時でも夏音はどこまでも不器用で、何でも自分で解決しようとしている。

 今回だって、私が夏音にあんなこと言わなければこんな高熱出さなかったかもしれないのに、無理して練習しちゃったからもっと優しくするべきだったって思ってる。そんなこと夏音に直接言ったらまた責任の押し付け合いになっちゃうから、言わないけどね。


「ほら、あーん」


 お粥を一匙掬って夏音に食べさせる。ベッドに戻った夏音は無言で口を開き、お粥を租借しながら満足そうな表情を浮かべた。大丈夫かな、美味しいって言ってくれるかな?


「ど、どう?」

「......」


 あつあつだし、柔らかさはレシピ通りに出来たはず...!


「美味いよ」


 辛そうだけど、ちゃんと作った料理を食べてくれて、夏音はそう答えてくれた。


「ほんと?」

「ああ...」


 良かった...。普段やらないことをして、良い結果になるなんて思ってもなかったから...。


「そしたら、残さず全部食べてね!食べさせてあげるから!」

「そうか、頼むよ」


 私が夏音に初めて作ってあげた料理...。美味しかっただなんて...。

 あつあつだけど、これでもかというくらいに夏音に食べさせる私。いつも夏音に美味しいご飯を作ってもらってるんだから、恩返し出来たのかな。いつもありがとうね、大好きだよ。


 ・・・・・・・・・


「はい、そういうわけなので...」

『もう、仕方ないな~。お大事にね』


 バイト先...、洋美さんに要件を話して今日は休みにしてもらった。風邪を引いた男の子を部屋の中で一人にさせるわけにもいかないしね。でも何だろう、洋美さんって私にもそうだけど、夏音にも結構優しいような気がしなくもない。やっぱり、気になっちゃうのかな...。


「夏音~、今日バイト休みにしてもらったからね。私がちゃんと付きっきりで居てあげるから」

「そこまでしてくれんのかよ」

「うん、心配なんだもん」

「ありがとな」


 未だに意識が朦朧としているであろう夏音は、何とかして私に視線を合わせようとしてくれた。だから夏音の想いに答えるべく、私は額をくっつけて夏音に言う。


「早く良くなってね」

「......」


 仰向けになった夏音に覆い被さるように私はそう告げる。夏音の額は熱くて、まだゆっくりしてないと治りそうにもないかな。


「移っても知らねえぞ」

「大丈夫だもん」

「そういうこと言ってる奴が一番危ねえんだよ」

「だから、大丈夫だって。私の心配より自分の心配しなよ」


 そう言って私は冷蔵庫からネギを取り出して首に巻き、夏音に見せた。


「こうすれば移らないでしょ?」

「そういうのは、風邪引いてからすることだろ」

「そうなの?」

「そうだろ、相変わらずバカだな」

「むう~~、こっちは真剣なんだよ!?」

「そんなことくらいわかってる」


 分かってても、私を馬鹿にするのは相変わらずなんだね。そしたらネット使って風邪に効く食べ物調べるんだから!

 『風邪 食べ物 効果』で検索していくと色々出てきたけど、その中でもお粥より簡単に作れそうなもので、そこまで甘くないものが見つかったから、夏音に伝える。


「ねえ、レモンティーに生姜入れると効くみたいだよ!作っても大丈夫だよね?」

「生姜もレモンティーも持ってねえよ」

「それだったら、私が買いに行くよ!一人で寂しいかもしれないけど、すぐに帰ってくるからね!」

「別に寂しくねえよ」

「強がらなくていいの!」


 首に巻いたネギを元の場所に戻し、荷物を用意して私は外に出た。

 夏音もこんな時くらいは、強がらなくていいんだよ、本当にバカなんだから...。

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