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俺のドラムは少女のギターに救われた  作者: べるりーふ
第17章 或る街の日常
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教習所、不意に呼ばれた名前

 9月6日


「あぅっ!」


 頭に衝撃が走って目が覚める。痛む場所を手で抑えて辺りを見渡すと私は自分の部屋の床の上に転げ落ちていたみたいだった。


「んぅ...」


 昨日バイトから帰ってきて、シャワー浴びてアイス食べて、ちょっとだけテレビ見たら寝たんだっけ...。夢の中でも運転してた気がするけど...。

 ベッドから落ちた衝撃で捲れた寝間着の裾を元に戻す。最近少しずつだけど涼しくなってるから、寝るときは腹巻き付けようかな...。特に音琶ちゃんの前でさっきみたいなことあったらまたおへそ触られるかもしれないし...。

 ...そうだ、今何時だろう、今日もまた教習入ってるんだけどな...。


「え.........」


 教習が始まるまであと10分もなかった。全力で走れば間に合わないこともないけど、どうしよう...。いや、どうするも何も、私がとった行動は急いで着替えて教習所に向かうことだった。これがまだ5分前とかだったらキャンセルしてたかもしれないけど、間に合う可能性があるなら行くしかなかった。だって、早く終わらせたいんだもん...。


「はぁ...、はぁ...」


 走り続けて何とか開始2分前には着くことが出来た。あとは、受付に行って...、


「池田結羽歌です...、はぁ...、はぁ...」

「池田さんですか?」


 息を切らしながら受付のお姉さんに名前を告げる。お姉さんは予約票を確認して...、


「あの...、池田さんの予約、1時間後の時間割になっておりまして...」

「............」


 私の苦労って、一体何だったんだろう...。


 ・・・・・・・・・


 教習所のトイレに行って髪を整える。ってか私、こんな髪でここまで走ってきてたんだ...、恥ずかしいな...。考えるだけで穴があったら入りたくなっちゃうよ...。あと、そろそろブリーチかけたほうがいいかな...。

 1時間待たなきゃいけないから、コンビニに行って簡単なご飯を買う。朝ご飯と昼ご飯の兼用として菓子パンを買って教習所の休憩室で食べることにした。それでも時間は余っちゃうんだけど、確認不足だった私が悪いんだから、私以外誰も責めることは出来ない。


 教習の時間になるまで予定帳を眺めていた。あと2週間でライブ、か...。ここ最近良いことがあまりなくて、練習に影響しなきゃいいんだけど...、バンド練習だってそろそろやんなきゃだし...。

 ってことは、遅くても19日までは免許取らないとなんだよね。最終試験はちょっと遠めの会場だけど、送迎のバスがあるからそれで行ける。あとは、私の技術次第...。


「はぁ...」


 思わず溜息が出てしまう。部室は普段あまり人居ないからいいんだけど、いつどこで茉弓先輩に遭遇したらってこと考えると怖いし、琴実ちゃんはまだ戻ってきてないし...。音琶ちゃんだって夏休みの間はシフト多めにするみたいだから、私の話を聞いてくれる人なんて...、


「あれ?結羽歌?」


 今後のことを考えて先が思いやられていた時、誰かに呼ばれていた。思わず声の方向を見ると...、


「ひ、日高君!?」

「やっぱり結羽歌か、久しぶりだな。髪の色少し黒っぽくなってたから人違いじゃなくて良かった」

「えと、その...、日高君は、どうしてここに...?」


 どうしよう...、不意打ち過ぎて言葉が出てこないよう...!緊張して、上手く話せない...。隣の席に座ってきてるし...!


「1週間前くらいからここ受けてるんだよ、まだ効果測定も行けてないけどな。結羽歌はどこまで行った?」

「わ、私は...、仮免まで...」

「まじか~、夏休み中までには終わるんじゃねえの?」

「えっと...、うん、多分...」


 何強がってるんだろう私...、本当はまだまだでろくに運転も出来てないのに...。これだとまるで自分を良く見せようとする悪い人みたいで、嫌だな...。でも、日高君の前で情けない姿は見せたくないし...。


「俺ももう少し早く入りたかったんだけどな、予約いっぱいだったみたいでなかなか入れなかったんだよな」

「そう、だったんだ...」

「結羽歌は早めに取ったんだな」

「うん、定員ギリギリだったみたいだけど...」


 私、上手く話せてるかな...?まだ全然目見れないけど...、変に思われてないかな...?


「ね、ねえ...!」

「お、どうした」


 唐突に大きな出てしまった。そして私は...、


「免許取れたら私...、日高君と一緒にドライブしたい、かな...」

「......」

「......」


 あ、あれ...。私今、何言ったんだろう...。何かとんでもないことを言ったような...。日高君黙っちゃったし、どうしようどうしよう!


「実は...」


 実は...、何だろう。でも絶対に変なこだって思われた!さっきの言葉取り消したいよう...。


「免許取れたら親の車引き取ることになってるから、その時になったら行こうか」

「え......」

「こうなったら早いとこ取るしかないか。結羽歌はもうすぐ終わるだろうから、俺も急がないと」

「日高君...」


 それってつまり...。私の話、受け入れてくれたってことでいいんだよね?なんか実感湧かなくて頭の中で何回も確認しているけど、間違いじゃないよね?


「良かった...」

「4人乗りのやつだから、滝上と千弦も誘ってだな。にしてもドライブなんていいこと思いついたな」

「う、うん...」


 そ、そうだよね...。私と二人きりなんて、気が引けちゃうよね...。そんなに上手くいかないよね...。


「楽しみにしてるからな」


 頑張ったけど、ちょっとだけ後味が悪くて、それでもやり切ったという気持ちになっていた。私が運転して、日高君が助手席で...。ううん、逆でもいいよね、とにかく、一緒に居れる時間を増やしたいな。

 間もなくして教習の時間になったから、私と日高君は受付に行って、技能と学科の教室でそれぞれ分かれた。

 なんか今日の教習は、頑張れそうな気がするよ...!

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